2月6日

知ってほしい・・・。“いじめ後遺症”

いじめの認知件数は、22万4,540件と過去最高(文科省調査・2015年度)。そんな中、子どもの頃にいじめを受けた人が大人になってもその後遺症に苦しむ“いじめ後遺症”の実態が、最近明らかになってきました。容姿のいじめをきっかけに何十年も「摂食障害」に苦しむ女性や、いじめから20年後に突然思い出して「対人恐怖症」に陥った女性もいて、多くの精神科医がその深刻さを訴えています。
いじめ被害者のその後を追ったイギリスの調査では、40年たってもうつ病のなりやすさや自殺傾向がいじめられていない人と比べてかなり高くなることが疫学的に明らかになっています。いじめはその人の健康リスクや人生までも脅かすのです。さらに、最新の研究では、いじめなどの幼い頃のストレスが、脳の形や機能に影響を及ぼす可能性も指摘されています。
番組では、知られざる“いじめ後遺症”の実態を明らかにするとともに、いじめの過去を精算する克服法もお伝えし、“いじめ後遺症”について考えました。

“いじめ後遺症”とは?

最近、当事者や精神科医の間で使われ始めた言葉です。

あさイチでアンケートをとったところ700以上の声が集まりました。すべて子どもの頃、イジメられた経験のある人たちです。そのうち「6割の人たちが大人になった今も日常生活に何らかの影響がある」と訴えていました。
“いじめ後遺症”の実態をお伝えするとともに、大人になってから急に症状が出た女性や、子どもの頃の周囲の人の対応がよくなかったと訴える女性をご紹介しました。

“いじめ後遺症”の特徴

多くの人は自分を責める「自責の念」を強く感じます。

自分にいじめられる原因があったのではないかと思いこんでしまうためです。
さらに「自責の念」があると「自尊感情」を低下させてしまいます。

自尊感情とは自分を大事に思う気持ち。それが傷つけられると生きているのがイヤになったり自傷行為や摂食障害に及ぶことがあります。

子どもがいじめられたらどうする?大切な周囲の人たちの対応

今いじめられている子どもたちに対して、“いじめ後遺症”を残さないため周囲ができる方法をお伝えしました。周囲の大人は、まずは事実を確かめるのではなく「子どもの感情を認める」ことがポイントです。

いじめの脳への影響

虐待が脳へ与える影響を研究する福井大学 子どものこころの発達研究センター教授 友田明美さんはいじめは脳の形を変えてしまう可能性があると指摘しています。
今までに暴言虐待を受けるとコミュニケーションにかかわる聴覚野の容積が14%増加し、厳しい体罰を受けると理性をつかさどる前頭前野の容積が19%減少することがわかっています。また、ハーバード大学の研究によると、いじめなどの強いストレスを幼い頃に受けると、恐怖や悲しみをつかさどる扁桃体がおよそ1割大きくなることがわかっています。

しかし、脳の形の変化は元にもどらないわけではありません。大人になってからも機能や形が回復する可能性があります。

“いじめ後遺症”から脱出できる

専門家の治療を受け、「自分は悪くない」と思え、また自尊感情を高められたことで“いじめ後遺症”から脱出できた女性をご紹介しました。
さらに、精神科医 長尾圭造さんが実際に治療として行っている「いじめ模擬裁判」をご紹介しました。

これは裁判の形をとってイジメのことを認識しなおすことで回復へと導く方法です。
自分をいじめた相手のことでイヤだと思っている点など、今、思っていることを書きます。
そうして相手の非をあらいざらい吐きだすことで、イジメに関する「主観的な思い」を「客観的な出来事」にすることができます。
また「いじめ模擬裁判」では相手に求刑するところまで行います。いじめた人を「罰する」ことで、「自分は悪くない」ということをより明確に意識できます。さらに、罰を与える判断をするということは、支配される側から、支配する側にまわれるということにつながるため、自尊感情も高めることもできます。
※自分だけで相手のイヤなところは書く分には構いませんが、裁判官の役を誰かに頼むのは危険です。専門家の指導のもとで行ってください。
裁判官役の人が“いじめ後遺症”の人の感情を認めず、事実確認を追求したりしたとき、よけい症状がひどくなる危険があるためです。

専門家ゲスト:長尾圭造さん(精神科医)
ゲスト:坂下千里子さん、青木さやかさん
VTRゲスト:友田明美さん(医学博士 福井大学子どものこころの発達研究センター 教授)
リポーター:古野晶子アナウンサー