5月8日

それ、本当に「うつ病」ですか?

「うつ病」と診断され1年以上投薬治療を続けているのに、なかなか治らない・・・東京・三鷹の杏林大学付属病院では、そうした患者を対象に、国内では珍しい入院検査プログラムを行っています。作業療法士による検査や、臨床心理士による心理テスト、睡眠時の脳波測定などを1週間かけて実施。その結果、なんと患者の6割に、「双極性障害」や「甲状腺機能障害」、さらには「睡眠時無呼吸症候群」など「うつ病」以外の疾患が見つかるといいます。
番組では検査入院の様子を取材するとともに、本人や家族がほかの病気に気づくためのポイントを紹介。「うつ」から回復するヒントをお伝えしました。

うつ状態とうつ病の違い

ほぼ1日中「気分が落ち込む」「興味や喜びがなくなった」、「集中できない」「自分を責める」状態がほとんど毎日続いている、などの症状を【うつ状態】といいます。うつ状態は、うつ病が原因で起こることがよく知られていますが、それ以外にも、脳梗塞や認知症、双極性障害やパーソナリティ障害などさまざまな病気や障害が原因で起こりえる症状です。そのため、うつ状態を引き起こしている原因を見抜くことが、正しい治療方針を定めるポイントになります。

睡眠時無呼吸症候群から うつ状態に

ある会社員の男性は、うつ病と診断され治療を続けていましたが1年以上思うように症状が改善されませんでした。大学病院で、睡眠状態を調べる「終夜睡眠ポリソムノグラフィー検査」を受診したところ、睡眠時無呼吸症候群であることが判明。睡眠中に呼吸が止まり、血液中の酸素濃度が著しく低下していることがわかりました。眠りが浅くなったり、脳にストレスホルモンがたまったりすることで、うつ状態が悪化していたという診断でした。その後、寝ている間の呼吸を補助する器具を使い、睡眠の質を高める治療を始めるたことで、気分の落ち込みや、昼間に頭がぼーっとするなどの症状が軽くなったと言います。うつ病患者の約4割が睡眠時無呼吸症候群を併発しているという研究もあります。

うつ病かと思ったら「双極性障害」

「うつ病」と診断されたある20代の女性。抗うつ薬を飲み続けていましたが、症状は悪化していきました。1年後、知人に紹介された大学病院に行くと、3時間にわたる問診を受けました。うつの症状だけでなく、「気分が高揚した時期はないか」「積極的に人と会い続けた時期はなかったか」「お金の使い方が荒くなったことはないか」など多岐にわたる質問を聞かれました。その結果、うつ病ではなく「双極性障害」と診断されました。双極性障害はうつ状態と躁(そう)状態を繰り返す病気で、かつては躁うつ病とも呼ばれました。抗うつ薬ではなく、気分安定薬や抗精神病薬など気分を安定させる薬での治療が一般的です。杏林大学の渡邊教授によると、うつ病が長期間治らない人の2~3割が、双極性障害の可能性があると言います。

“うつ”がなかなか治らない・・・原因解明する5泊6日の入院検査

東京・三鷹の杏林大学附属病院では、うつ状態がなかなか治らないと感じている患者を対象に、5泊6日の入院検査プログラムを行っています。血液検査や頭部CT、心理検査や知能検査なども10項目以上の検査が行われます。精神科医だけでなく、臨床心理士や作業療法士も加わり、ひとりの患者をさまざまな角度から評価します。検査終了後は、約30人のスタッフによるカンファレンスが行われ、うつの原因や病名について議論し、より正確な診断に結びつけています。この入院検査は、1週間に1名の患者のみ受け入れています。

専門家ゲスト:渡邊衡一郎さん(杏林大学付属病院 教授 精神科医)、小林エリコさん(うつ病経験者、作家・まんが家)
ゲスト:三田寛子さん、的場浩司さん
リポーター:馬場典子アナウンサー