2013年05月11日放送放送内容まるわかり!

世界に売り出せ! ニッポンの文学

作家・村上春樹の新作が100万部を超えたとニュースになりましたが、実はいま日本の文学が世界でも注目され始めています。村上を始め、アジアで人気の宮部みゆきや伊坂幸太郎、アメリカではミステリー界のアカデミー賞と言われるエドガー賞にノミネートされた東野圭吾。
外国の人たちにとってその魅力とはいったい何なのか? そもそもどれくらいの作品が世界に伝わっているのか? 海を越えるニッポン文学の可能性を深読みしました。

今週の出演者

専門家
沼野充義さん(東京大学文学部教授)
ロバート・キャンベルさん(東京大学大学院教授)
佐渡島庸平さん(作家エージェント)
菊地夏也(NHK解説委員)
ゲスト
増田英彦さん
山田まりやさん

〈小野アナウンサー〉今、ニッポン文学が世界でどんな状態になっているのか?
徳永アナウンサーのこんなプレゼンからお聞き下さい。

プレゼンテーション①

〈徳永アナウンサー〉 実際にニッポンの今の人気作家の皆さんの外国語に翻訳された実物を用意しました。この本、英語ですけど、表紙タイトルに『X』とあるので分かると思いますが、東野圭吾さんの『容疑者Xの献身』。これが初版でアメリカで75,000部出されたっていうんですって!1冊25ドル。もし全部75,000部が売れているとすれば...。
市場の規模が大きいってことが言いたいんですが、仮に世界に飛び出すとすごいことが待っています。

世界中一年間で売れる本、市場の規模ってこれぐらいの金額です。
10兆円に達すると言われていまして。ほら、新興国がどんどんどんどん増えてきているので、この金額っていうのが年を追うごとにどんどん上がっていくとも言われていて。

海を越えればものすごいビジネスチャンスがあるかもしれない。だって、ほらニッポンの作品て面白い物が多いですよ!だって、この30年で出た本の数、実は150万点に達するんですね。この中には直木賞、芥川賞、本屋大賞、みんなが熱狂した作品、たくさん入ってますから。

これが海を越えればニッポンの存在感だ!それから儲けもいっぱい出るんじゃないか?となるのでしょうが、実は高~い壁があって。
なかなか海を超えることができないってのが取材で見えてきました。

実はね、壁の前にこの壁のお陰でどれぐらい世界に行っているかを見ます。この30年で出版されたニッポンの本が150万点ならば、同じ30年間で外国語に翻訳された日本の本、何冊ぐらい何点ぐらいあるか??実はこれぐらいしか...
この30年同じ期間で翻訳された日本の作品って29,000点程で、単純比較をしてみれば、2%にも届いていないんですね。

ではこちらの壁ですが下から順番に紹介します。3つの事情が取材で見えてきました。まずは出版社の事情。翻訳家さんの事情。さらには、お国の事情も見えてきました。一つずつ見ていきます。

まず出版社です。出版社がどこを見ているかを注目して下さい。
見てる先は...1億2000万人、つまり日本人です。日本人ってよく本を読みます。市場の規模。一番多かったのが平成8年。一年間でこれだけ。2兆7000億円。これは一番多かった平成8年なんですがこれぐらい規模大きいんです。だから出版社っていうのは、元々海外をわざわざ相手にしなくても日本人に買ってもらえる本をいっぱい売れば、充分儲ける規模があった。今、世界に!って意識しているところもあるんですが、多くの出版社はやはりこう言われています。「やっぱり基本的には『内向き』なんだよね!」って。

それから、活字ですから漫画と違ってホラ、翻訳家さんが全部訳してくれないと始まりません。でも翻訳家さんの現状って取材でこういう風な事が見えてきました。あのう、大変なんだそうです。ご飯食べていくの大変!
まず、1冊どれくらい時間かかるか?いろいろあるんですけれども、かかるものだとやっぱりこれぐらい。1年から2年。これだけ時間かけてじゃあ、どれぐらいの収入なのか?っていうと、1冊100万円。特に日本語から外国語に翻訳する仕事というのは、大変厳しくて、印税も翻訳家にも入らないと言われています。だから、なり手も少なくと言われていて。
これ公式なデータって無いんですが、いろんなところに取材してみると日本語から英語にする作品を翻訳するのにコンスタントにご飯食べていけてる人ってどれくらいいるんですか?っていろいろ聞くと、一説にはこれぐらい20人程しかいないんじゃないか!?と言う人もいる。

それから国の事情。これまで国も支援してきたんです。
2002年からニッポンの文学作品を外国に翻訳して広める事業に助成金を出してきたんです。その額というのは年間これだけ。1億5000万円程出してきたんです。何してきたかというと翻訳して出版を外国でする。そして、出版しなくても外国の図書館に寄贈するといったことにお金を援助してきたんですが、実は去年になってこうなりました。

実は「行政事業レビュー」て言って、そのお役所ごとに自分たちの仕事を点検して仕分けしていくっていうのがあったんです、去年。で、実際この事業は去年廃止されることが決まったと。

このように、3つ事情が見えてきたんですが、やっぱりこの"宝の山"のはずの名作も海を越えたら10兆円が待っているんですけどね!っていうのが取材で見えてきたとこういうわけでございます。


〈キャンベルさん〉 国の翻訳支援事業っていうのは10年間続いたんですけれども、もっとやっぱり続けるべきだったと思うんですね。突破口ということを作るということは非常に重要なんですね。
ただ、私から見ると日本の今までの事業の仕方というのは、100冊を100人の作家の100冊ということ。薄く広く、まあ公平に。とにかく日本文学何があるか?っていうことを海外に紹介しようっていう。それでは実はインパクトがないんですね。
もっとアンフェア、もっときちんと選りすぐって。委員会で何を出版するか?ではなくて、若い翻訳家達やそれから編集者達、海外でそれを受け止める人達を入れて、そこで実際に市場の中で「何が面白いのか!?」というと、そこに実はすごくやはりお金が足りない。交流をする場というものが助成されていない。
まあ、日本の出版業のその問題もあるんですけれども。公金を使うというのは私は非常に重要だと思うんですね。ただ、これからそれをもう少し調整をしてと言いますか、もうちょっと考えてやっていくと重要だと思うんですね。

〈沼野さん〉 お金の使い方はね、確かに問題あったかもしれません。ベスト、100%理想的じゃないかもしれないけど。あのう、やっぱり本の出版ってビジネスとかお金儲けって面もあると思うんですけれども。私はそもそもあんまりそういう事を考えてない浮世離れした人間ですから、あのうやっぱりね、本っていうのは文化的な価値なんですよ。だからいい本でもビジネスにならない、お金は儲かんない、そういう本がいっぱいあるわけです。それは、どこかから助成しなきゃ出ないわけですよね。夏目漱石だって森鴎外だって放っといたら翻訳されないと思いますよ、今の状況では。

〈小野アナウンサー〉 支援をどういう形かっていうこともさることながら。あのう何て言うか、打って出る可能性についてもぜひお話伺いたいんですけれども。作家の人が儲かるだけじゃないのか?とか、その先に何が待っているのか?とか。

〈菊地解説委員〉 一度、日本の出版の状況をおさらいしておきたいと思うんですけれども。先程、2兆7000億円という金額が出ました。それは、日本の書籍と雑誌の合わせての販売の推定額です。2兆7000億円というのは1996年と。これがピークで雑誌の落ち込みが大きいんですけれども。去年は1兆8000億円と。1兆円も減りました。その金額が減ったっていうのは心配なんですが。
先程30年間で150万点という数が出ましたが。今ですね、日本の書籍というのは点数はたくさん出てるんですよ。でもなかなかこう、一冊あたり売れていないと。去年のミリオンセラー阿川佐和子さんの『聞く力』。100万部以上売れたのはその作品だけでした。
そういった中でですね、たくさんの本は出るんだけれども一冊一冊がなかなか売れていないと。そういう状況をどう打開していくかと。そのひとつとして海外に日本文学が打って出るというのも、道の一つかなと思います。

〈キャンベルさん〉 それもとても大事だと思うんですね。実際に文化的な面白さとか。海外に打って出て、日本人は何を今考えているか?とか、どういう風に心の中でどういう葛藤があるか?といったことで一番この訴求力があるのは私は文学だと思うんですね。
とはいえ、例えば映画がすごくヒットしますね。あのう、2002年に『GO』っていう映画が日本で封切りされて、それがアメリカでも物すごく、ヨーロッパでもそうですけれども。大変成績はとても良かったんですね。ただ、金城一紀さんのその小説はまだ英訳されてないんですね。だからそれを考えると相乗効果、もう少し戦略的にいろんなメディアを超える形で、文学と映画を送り出すことを考えてもいい。アニメだけだとそれはどこの国だか分からない。無国籍なんですね。

〈山田さん〉 なんか日本が誇れる文化がアニメかな?なんて思っていたんですけどね。

〈菊地解説委員〉 と思うんですけれどもね。アニメもなかなか今苦しい状況っていうか、伸び悩んでまして。
これが日本のアニメ制作会社の海外での販売額なんですが。えー、2005年ピークで170億円と。その後、為替相場の変動もありまして、下がってきたっていうのもありますが。一昨年、2011年。86億円と。まあ、大きく伸びてないんですよ。なぜかと言うと、やはりアニメだけでは限界があるかなと。広く海外の一般の人達が見るためには、なかなか人気を獲得できてないところもあるんじゃないかな?と思うんです。日本のアニメ、質は高いんですけれども。なかなか受け入れにくいところもある。

〈佐渡島さん〉 先程、キャンベルさんがおっしゃったように、僕は突破口として国が税金を使ってやるっていうのはすごく重要で。今、やっと実は突破口が開いた頃なんですね。それでその後、民間が本気になってそこの突破口のところに突っ込んで行ってより広げる必要があるのかなと。
僕らは伊坂幸太郎さんは村上春樹さんのように世界に出ていけるんじゃないか!?そういう風に思って。僕らは伊坂さんと密に連携を取りながら、それぞれの国だったらこういう長さで、こういう順番で出版を出していった方が有名になれるんじゃないかと。

〈小野アナウンサー〉 その話の前にご紹介した方がいいですね。佐渡島さんは"作家エージェント"というご職業なんですよ。

〈佐渡島さん〉 そうですね。今までは途中にいっぱい挟まっていたのを全部、僕らエージェントの所で一括してしまって、海外の出版社とも話す、翻訳家とも話す。また、このフリップのように、エージェントとメディアがくっ付いていて、映像化の話とかが全部僕らの元に集約するので、それに合わせて出版をしようだとかっていう宣伝のキャンペーンてのが組めるんですね。

〈キャンベルさん〉 日本の出版企業って不思議ですよ。例えば、伊坂幸太郎さんは実際に12社、13社ぐらいから本を出しているわけですね。それで、それぞれの出版元を訪ね歩いて聞かないといけないんですね。
一か所で、どの作家の権利であるとか、作品はどういう風に変わっているか、ということを全体として把握できるところがないんですね。これはまあ、欧米の出版社だとそれはほとんどあり得ない事なんですね。それを一元化しようとしているのが"作家エージェント"の仕事ですね。

〈山田さん〉 でも、なんか単純な疑問なんですけど。東野圭吾さんみたいに本が単純にすごい面白ければ、勝手にアッという間に売れちゃって、あとからなんかそういう話がやっぱりついてくるみたいなのがあるんじゃないですか?

〈小野アナウンサー〉 いいものは待ってれば売れるんじゃないないのか、向こうが翻訳したいって言って来てくれるんじゃないのか?

〈佐渡島さん〉 日本語で出してて、あっちが気づいたら良ければ気づいて来てくれるだろう、と思うんだけれどもそういう風にならない。さらに窓口がどこかも分からない。海外の人から分からないっていう状況で。
僕は伊坂幸太郎さん、阿部和重さん、山崎ナオコーラさん、この3人に関しては僕らのところに問い合わせをしたら全て対応します。どんな細かい質問でもいいですよ!と。さらに今まではオファーがあってから「じゃあどうぞ翻訳して下さい」って形だったんですけれども。もう僕らの方で海外の有名な翻訳者に声をかけて。
例えば村上春樹さんを訳してるフィリップ・ガブリエルさんに声をかけて、もう先にお金を支払ってしまいますので。「英訳して下さい」と。伊坂さんはもう英訳してもらってるんです。英訳を持っていろんな所に「読んで下さい」って持ってって。「こんな素晴らしい作品があるんですけど出版しませんか?」っていうのをやっている。僕らとしては先にお金を払ってるので「絶対回収するぞ!」「何が何でもこれを売ってみせる!」と。

〈沼野さん〉 いい本が勝手に海外に出るんじゃないかっていうお話があったけど、まあなかなかそうはいかない。私はいつも言っているのは、いい本が外国で評価される最低3つの一番基本的な事が必要。
それはまず、訳されるべきいい本がある。当たり前ですよね。それから、それを訳したいと思う。しかも能力があってそれに情熱を注げるね、いい翻訳者がいなきゃダメ。それでさらにそれを出版したいと思うね、外国の出版社がないとダメですね。
それで、特に翻訳者のことを言いたいんですけども。あのう、今みたいな話だとどうしても、作家が訳されて有名になって作家が儲かる、とかそういう話ばっかりになるんですね。それで出版助成に関してもね、まあだから、そういう方向に行っちゃうんだけど。
実は出版助成に関する一番大きなところっていうのは、私は個人的にはむしろ翻訳者支援だと思っているんですね。で、どういうことから言うと、翻訳者って「収入もないし、権力もないし、感謝もされない」そういう存在なんですね。

それでまさに外国では翻訳者を支援するために国を挙げてプロジェクトを組んでます。ポーランドでは世界50か国から翻訳者を集めて会議やったり、韓国では「韓国文学翻訳院」てのを作って翻訳支援をしてる。それから、まあトルコでも多くの助成を出している。
まあ、そういう風な国を挙げての体制で、これどちらかというと翻訳者支援なんですね。そういう事をやっている。ただ、ちょっと日本ではそういう面についての考えが弱いんじゃないかなと思いますね。

   

〈菊地解説委員〉 どうしてそういうことをやるか!?と言うと、やはり文学作品、小説の翻訳っていうのは、いわゆる日本語を各国の言葉に逐語訳すればいいってもんじゃないと。ちゃんとその小説の内容をキッチリ把握した上でですね、その国の文化でも分かるように、その国にも伝わるように翻訳しないとダメだと。そういう難しさはあると思うんですよね。

〈キャンベルさん〉 若い翻訳者達を育成していくっていう"場"っていうのが、いくつかあると思うんですけれども。「国際文芸フェスティバル」っていうものが各国にあります。沼野さんがおっしゃったようにそれぞれの国で翻訳支援を行っていますね。
例えばフィンランドですと、フィンランドの文学学会という所がありまして。リテラリィ・エクスチェンジ、つまり「文学を交換する・交易する」ていう非常に思いきった事をやってまして。文学者とそれから翻訳者、それから編集者達を呼んでフェスティバルを開くんですね。これは本当に全世界で皆が集まって、これからどういう話がどういう面白い本が出たかということを情報交換、それから条件交換。いろんなことをそこで実際にやるわけですね。
で、今年3月にようやく日本で東京で初めて開催され、沼野さんも非常にそこで活躍しておられたと思うんですけれども。作家と編集者、それから翻訳者、それから読者、それからメディアがそこに参加をするっていう、そういう"場"を作る。そういう場を支援するって事もこれもやっぱり国の大きな課題だと思いますね。

〈増田さん〉 日本の若者にどんどん翻訳家になりたいっていう人を増やそうと思ったら、それなりの収入が良くないとそんな優秀な人やったら、普通の企業に入った方がもっと収入ね!もらえそうになるから。あの収入自体もうちょっと上げないと。

〈山田さん〉 そう、全然夢がないもんね!話聞いててもねえ。

〈佐渡島さん〉 それが最も重要で。翻訳して出版することよりも、翻訳家を育成していくのを政府が支援すべき。翻訳家の人たちって翻訳をしてくれるだけじゃなくて、日本文化がこういう風に魅力ですよ、っていう風に。こういう風にキャンベルさん自分の国に戻ったら、日本のことをすごく上手く伝えることができる。その、日本文化の広める人の役割を一番果たしてくれるので。しかも小説の翻訳というのは、通訳の人とかと違ってもっと難しかったりするので、そういう人たちをどうやって育てるかが重要。

プレゼンテーション②

〈徳永アナウンサー〉実はですね、課題を探るべくいろいろ調べていくとですね。むしろ見えてきたのはニッポンの作品はこんな壁があると言う中で、とても愛され始めてるなあーっていうのが見えて参りました。いきます。
文学がクールジャパンの切り札になってくるかもしれない!?という3つの話、いきます。

 

まずこちらです。ミステリーの分野です。
『容疑者Xの献身』がとても大きな賞を最終候補に残ったことで、新聞各紙で絶賛されます。イギリスのタイムズは「東野圭吾さんの小説は世界的現象になる」とまで書きました。これどれだけすごい事かと言うと、よく聞くんですが欧米というのは、アジアのミステリーっていうのはあんまり今まで関心が無かったと言われていて。この東野さんの面白さに気付いたんじゃないの!?て、今とても期待されている。ニッポンのミステリーが世界を席巻するのは近いかもしれません、というお話。

まだあります。2つもあります。これ、知ってます?「ライトノベル」という分野。「ノベル」ていうのは小説。

でも表紙見て下さい。例えばこういう見た目は漫画に思えるような表紙なんですね。つまりですね、中高生とか若い人向けのまあ、活字の本です。
でも、手に取って読み易くするためにイラストを凝ったりですね。それから、内容もSFとかファンタジーとか恋愛ってのを入れていて。まあ、いわゆる漫画のコーナーの横に置いてある分野。ニッポン独自のこれ、ジャンルなんです。
これがですね、映画化される。で、どれかっていうと今ちょうど見てもらった桜坂洋さんの『All You Need Is Kill』という作品なんですが。実際、撮影されてます。写真を入手しました。この方が主演です。

トム・クルーズさんが今、撮影してます。で、来年3月に全米で公開されることがもう決まっているって知ってました?こんなこと進んでいるんですよ!
撮影、主人公の恰好をして。こう、もう実際に撮影してるんです。

皆さん「ライトノベル」て何とか言ってる場合じゃなくて。この作品に、良さに気付き始めているかもしれません。実はハリウッドって今世界中からいい作品はないかって探してるところだと言われています。日本の「ライトノベル」の独自の文化がお眼鏡に適ってきたのかもしれません。

そして3つ目。「歴史小説」が今ある国で脚光を浴びているんです。しかもこの作品。図書館でよく見てますけれども。山岡荘八の『徳川家康』って長~いのが文庫本である。よく先生とかが読んでたんですが。これが意外な国で数年前大ヒットした。

ここです。中国。累計ですけど200万部超えた。書評で「『三国志』に匹敵する面白さ」とも書かれたんです。じゃあ、どんな人が買っているだろう?と調べたら見えてきました。こういう人たちです。ビジネスマンとか会社経営者。こういった人たちが好んで読んでいるってことが見えてきました。


〈キャンベルさん〉 70年代に吉川英治さんの『宮本武蔵』あるいは『五輪書』が英訳されてすごくヒットしたんですね。80年代にそれがポルトガル語でブラジルで翻訳されて。やっぱり新興国、これから頑張っていこうっていう社会の中で、リーダーシップはどうか?とか計算戦略の指南書として読まれるってことですね。

〈小野アナウンサー〉 「鳴かぬなら鳴くまで待とう時鳥(ほととぎす)」

〈キャンベルさん〉 そうですね。それがね、まあ今例えば中国であったりね、他の新興国の中で読まれるってことは当然だと思うんですね。でも、こういうまあ、ちょっと少し懐かしい物ばかりじゃなくて、例えば冲方丁さんですとかね、和田竜さんですとか、若手の葉室麟さんのような優れた歴史小説・時代小説を新興国だけではなくて成熟した先進国の中でも売れば翻訳すれば、充分私は人の心に刺さるものがあると思うんですね。

〈菊地解説委員〉 日本の情緒を描いているとか日本の歴史を描いているというよりは、歴史に生きる"人"を描いている物語ですから。それは世界各国の人たちが読んでもですね、感動出来たり共感持てる、てところはありますよね。

〈沼野さん〉 今、何と言っても村上春樹の人気が圧倒的ですけど。ただ、英語圏ではさっきミステリーの話がありましたけど、やっぱり英語で書かれたものが一番高い質のものであって。
外国語からの翻訳ていうのは、なんかちょっと二流のものだみたいな感覚って、やっぱりあの英語圏の市場にはすごくあるんですね。だから東野さんもそうですけど、その前にスティーグ・ラーソンっていうスウェーデンの作家の『ミレニアム』シリーズてのが大ベストセラーズになりましたね。

で、欧米でも「ラーソンに次ぐ東野圭吾」みたいなそういう風に取り沙汰されたわけですけども。これはやっぱり、果たして日本のミステリーがじゃんじゃんこれから出て行くかどうか?私はやや懐疑的ですけども。やっぱり推理小説の質の問題がありますから。
ただ、あのう英語圏の英語で書かれた物だけがいいもんだ!ていうようなところに少し突破口になっているんじゃないですか?外国で書かれた物で翻訳されていても素晴らしい物があるということをもっと認識してもらうべきだと。

〈キャンベルさん〉 英語でばっかり翻訳してて、その全世界を英語で日本文学を読ませようということは無理だと思うし、正しくないと思うんですね。ただ、外国のいろんな国にいる編集者達やこれから何かいい本を探そうという人は、まず何を見るかというと英語なんですね。だから、英語を通して今"重訳"をする。英語から翻訳するっていうことではなくて、まずチョイスする。日本にこれだけ素晴らしい本がある。桐野夏生さん、東野圭吾さん、阿部和重さん、素晴らしい本があることを解って他の作品を含めて、そこから探すというプロセスがこう起爆剤になるんですね。それは今面白い見解だと思うんですね。

〈佐渡島さん〉そうですね。日本の30年間で150万点全てが海外に出られるってわけじゃないんですけれども。日本のトップの力ってのは世界のトップと実はほとんど一緒なので、しっかり英語にして出していくと。爆発する可能性があるだろうなと。
それで、例えば今日だとずっと"本"ていう形での紹介になっているんですけれども。その、先程の例えば中国のものが『三国志』と同じような面白さだと『徳川家康』が言われて広がったていうように、今後"電子書籍で英語化された本"みたいなものが、あちらの有名人が「とてつもなく面白いぞ!」と、みたいな事を言った瞬間にバーッとすごい勢いで広まる可能性があるんです。それで、今まではやっぱり流通をさせていった時に世界中で本を流通させるのって非常に難しかったので、話題になっても手に入らないていう状況だったんです。でも、質が高い物が電子書籍で海外に出て行ったら、何か一つ火が点いた瞬間にとてつもない部数が売れていって、とてつもない部数が売れたら、そのまま映像化であったりとかって形でどんどん大きく広がっていく可能性はあるんじゃないか!?

〈キャンベルさん〉 日本の出版社からだととても見え難いと思うんですけど、例えばアメリカやイギリスだと「ブッククラブ」というのが非常に重要なんですね。皆集まって同じ本を一緒に読んで語り合うっていう場が無数にあるんですね。要するに、実際に人が集まって本を読む事もあれば、インターネット上のブッククラブというものが今流行っていますし。
オプラ・ウィンフリーていう女性の司会の方もいらっしゃるんですけれども。もう、ウィンフリーさんが「この本面白いぞ!」ということを自分の番組のブッククラブで言っただけで何十万部が立ち所に売れるっていうことですね。それをそういう突破口といいますか、継続的に日本のプレゼンス存在ていうものをそこに効かすということが大事なことだと思います。

〈菊地解説委員〉 先程、村上春樹さん、阿部和重さんの話もありましたけれども。そういう形で世界の人にね、読んでもらいたいって本はたくさんあると思うんですよ。村上春樹さんこの間、京都で公開インタビューして私も取材に行って来たんですけれども。その時、「小説の力、物語の力っていうのは魂のネットワーク」と。「人と人の心をつなぐ事だ」と。
そういう力を持っている小説というのは、村上春樹さん、阿部和重さんにもあると思うんですけれども。その他にもたくさん日本文学あると思います。そういう物がたくさん翻訳されて、いろんな所にいろんな国に行って目に届くようになると。そうなることっていうのは、非常に大切なことだと思いますよね。

〈キャンベルさん〉小説を読みながら「これはやっぱり英語で読んでみたいな!」と思う事が結構あるんですね。スイッチが入るんですよ。最近やっぱり「すごく英語にしてみたいな!」とか「誰かに訳してもらいたいな!」と思うのは例えば、朝吹真理子さんの一昨年芥川賞を取った『きことわ』という作品が。これが要するに時間の流れ、日本独特の季節や風景というものを特に人間の主体性というものがほとんど合体していて、英語ではこれは表現できるのか!?どうなのか!?というギリギリのところでやっぱり英語で。これが成功すれば、日本ならではの作品だと思うんですね。

〈沼野さん〉一言だけ付け加えさせて。やっぱり「魂のネットワーク」とありましたけど、翻訳てのはだから最高度に精密な"文化交流"なんですね。その面も忘れないで。

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