2013年05月25日放送放送内容まるわかり!

6人に1人! どうする"子どもの貧困"

子どもの貧困が深刻化しています。貧困状態にある子どもの割合は6人に1人。

「食事が学校給食のみ」「経済的な理由で進学を断念」といった深刻なケースも少なくありません。
この状況を改善しようと、貧困対策に取り組むための法案も提出されました。
日本の将来を支える子どもたちが、貧困によってどんな状況に追い込まれているのか?今後どんな対策が必要なのか?
徹底的に深読みしました。

今週の出演者

専門家
宮本みち子さん(放送大学教授)
湯澤直美さん(立教大学教授)
後藤千恵(NHK解説委員)
ゲスト
細川茂樹さん(俳優)
鈴木紗理奈さん(タレント)

小野 アナウンサー
実は子どもの貧困、厚生労働省の調べによると年々増加、深刻化しているそうです。1985年から2009年の間に貧困状態にある子どもの割合はこんなに増えています。

15.7%、6人に1人。
そこでまず実態を徳永アナウンサーがご説明しますので、これを聞いてから議論スタートしましょう。


プレゼンテーション①

徳永 アナウンサー
「なんとなく実感わかない」ていう本音の人もいるのは事実だと思うんですね。
なぜって日本人の貧困のイメージってこういう写真じゃないですか?
戦後の焼け野原の子どもたちだし。これを見れば海外でゴミの山を漁らなきゃいけない追いつめられている子たちとかっていうイメージをどうしても持ちますよね。

でも、他の先進国ってこの貧困だけじゃなくって、所謂別の貧困の考え方もちゃんと考えて対策を打っているんです。それをね、こう言うんです、『相対的貧困』。
あの"相対的"って人と比べてっていう意味合いなので。この意味で貧困という考え方もあります。

で、どういう事なのか、実際の計算の仕方で見た方が分かり易いのでちょっと見てみます。
世界各国、大体同じような計算をしています。
計算で使うのはですね、1年間の収入。年収から税金や保険料等を除いた額。つまり身に入ってくる中で自由に使う事のできるお金。それをそれぞれ出して、国民の高い方から低い方へザーッと並べます、順番に。
で、あの家族の人数とかそれから何人の人が働いているかによって、ばらつきますから。もちろん一人当たりでちょっとならして計算をします。で、このグラフになります。
ですから、1000万超えるような人っていうのは、ごく僅かですがいらっしゃる。で、だんだんだんだん人数が増えていく。縦軸が人数です。
上がっていって、やっぱり一番多いのは200万ちょっと超えるぐらいの人が一番多い。これが大体、日本人の"ど真ん中"です。

この考え方って、ど真ん中の人の金額のジャスト半額。半分のところに線を引きます。
これ言ってみれば、これが『貧困線』。で、どれぐらいか?
ちょっと想像してもらうために国の調査を元に計算したところ、こうです。
この『貧困線』ていうのは、最新の調査では2人世帯シングルマザーの家とかそうですよね!2人暮らしの家だと大体1年間に入るお金で自由に使えるが177万円ぐらい。3人の家だと217万円ぐらい。
これを下回るところに並んでいる人達のことを、人と比べて貧困ゾーンに入るので『相対的貧困』と呼びましょうという考え方なんですね。
これが『相対的貧困』

これはもちろんなんですが、ヨーロッパ等の先進国はこれはもちろんのこと、人と比べて貧困に入る人の事も対策していきましょうねって。もう対策動いているぐらいなんですよ。
じゃあ、この『相対的貧困』と呼ばれるゾーンに入っちゃう人達の特徴ってこういうのがあるんですね。
お金節約したくなりますから、人とのつながりがなかなか無くて。
で、働く場所とか社会活動にあまり出て来られなくなりがち。
人間としての可能性を奪われて。
まあ、親になったとしても子どもを安心して育てることが出来ない等とよく言われるんです。
あくまで「今日食べる物に困る」と言うかどうかは分かりませんが、人と比べて社会的や文化的なところで条件が厳しくなってしまう人の事を呼ぶということです。
とはいえ、食べ物に困っているのか?みたいに言う人もいるかもしれません。
そこでちょっと考えてみましょう。

今日は"子ども"ですよね。これ子どもに限って貧困線より下、どれぐらいいるか?を調べてみました。
17歳以下に限定するとこれぐらいになるんですね。
15.7%、さっきの小野アナウンサーから出したのはこれです。

で、これが割合で言うと6人に1人でだんだんと増えていっていると。
実は今日お越しの湯澤さんですが、活動の中でそういった子どもたちの声を沢山聴いていらっしゃいます。番組で取材させていただきまして再構成しました。

では、まず真ん中にいる小学校の女の子の声から聴いて下さい。

小学生の女の子
お母さんが離婚。朝は早くから清掃の仕事に。夜も働いています。
遅く帰って来て「辛いから仕事変えたい」って言っています。
早く私が働かないと。そればかりを考えています。

徳永 アナウンサー
男の子の声を聴いて下さい。

小学生の男の子
お父さんが突然リストラ。お母さんと一緒に必死に仕事探し。
だから、弟や妹の世話は僕が。大好きなサッカーも辞めました。
給食の残りのパンをみんなに見られないように持ち帰っています。

徳永 アナウンサー
続いて中学生の子の声を聴いて下さい。

中学生男子
友達は高校に行く。僕はあきらめた。
「授業料タダ」と言われても、お金は掛かる。入学金、制服代、定期代...。
先生達にも気づいて欲しい。誰か助けて。

徳永 アナウンサー
今の日本です。
たぶん皆さん思うのは、今の日本でなんでこんなことになっちゃったの、だと思います。
で、番組でやはり調べると社会の事情がどんどん厳しくなっている事が背景で見えてきます。

まず、企業の事情です。親が働いて企業から給料を貰えればこんな事にならないじゃないかと思うかもしれませんが、ご存じの通りこうです。
ある日突然リストラされるお父さんもいますね。再就職しようとしてもさっきの子のケースでもそうですが、なかなか正規の社員でまた返り咲くことは難しい時代と言われています。
つまりこの状況が見えてきます。ある日突然、収入が劇的に減ってしまうことが、今の日本で珍しくなくなりました。
他の国っていうのは、両親が失業しているから子どもが貧困になるというケースはよくありますが、親が働いているのに働いているのに貧困から抜け出せないというのは日本が突出して高いんだそうです。

もう一つ。家庭を見てみましょうか。内情です。まあよく昔から言う核家族化とか、両親の離婚などもよく言いますよね!?
さっきの話じゃないですが、1人親だと子育てしながら働くので、正社員が難しくて非正規の仕事がどうしても多くなりがちです。すると給料が低いので2つ3つの掛け持ちが当たり前。
親が働きづめ。朝も夜も親がいない。結果、子どもは孤独に苦しめられて内向きになってしまう。

更に学校です。ドラマだと金八先生みたいな先生が学校で助けてくれるイメージがありませんか?学校では今、こんな事が起きています。
先生の事務作業はどんどん増える一方で、子どもと向き合い時間がなかなか取れません。加えて個人情報保護の時代です。生徒一人一人の事情をつぶさに掴むことがとても難しくなっているんです。
だから、向き合いたくても向き合いきれない。更に"統廃合"ってありますでしょう?
よく「学校を統廃合する」なんていうのがニュースで聞きますが、そうすると近所の学校が無くなって、遠くに通わざるを得ない。つまり通学にバスや鉄道が必要。お金がもっと掛かってしまう。
こういった理由で「不登校・中退」を選ばざるを得ない。そういう子も決して少なくありません。

調べていて見えてきたのはこれです。
頑張っても"抜け出せない"時代になっているという事です。
「自己責任」と言う人が街頭インタビューでもいました。これで、そう本当に言えますでしょうか?


湯澤 さん
あの『相対的貧困』ていうのが日本では深刻なんですけれども『絶対的貧困』も日本の中にある。
でも、そのことが余りにも知られていないですし。で、その『相対的貧困』ていうことも今たぶん「貧困」ていう言葉にすごくあのう余り聞かないっていうか、言葉で違和感覚える方もおられるかと思いますが。

1985年の時に10.9%ていうのは、10人に1人!もうこの時代から貧困線に満たない暮らしだったんですよね。そう考えるとこの間これだけ貧困率が上がってきたっていうのは、それに対して政策をきちんとしていれば、もしかしてもうちょっとこの上昇率は抑えられたかもしれない。
だから経済が悪化していることはもちろん理由の一つではあるんだけど、それだけではない。

宮本 さん
1985年て日本が「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた時代ですよね。
だから本当に豊かだったけど、でもこれだけの数字はいたと。
でも、誰も貧困なんていうことに関心持ってなかった。だから誰も見ない、隠れていて。そのまま対策もせず、そのうち時代が変わったということです。

後藤 解説委員
貧困率ていう数字が出てきたのが、初めて出てきたのが2009年なんですね。それまではそういう数字も明らかにされていなかった。

小野 アナウンサー
どうしてそんな事が今まで?

鈴木 さん
もっと何かこういう困っている子たちがいるっていう情報がどうして流れなかったんですかね?

湯澤 さん
はい。で、この15.7%で1985年に遡ってていうのを公表されたのも2009年なんです日本の中では。なんですね。
だから、もっと早くからこういう数字を皆さんに公表していたら、もっとみんなで「変えていこうよ!」っていう日本の社会の機運ていうんでしょうか。

小野 アナウンサー
ホント。どうしてその知られてこなかったんですか? 原因は何ですか?

宮本 さん
日本の高度経済成長時代があって、だんだん豊かになっていくと。全体的に見ればね。それで町を見てもそんなに汚い洋服を着ている方はもうほとんど見られないっていうような状況の中で。もう全体として社会が「貧しさ」っていうものを忘れたという。
子どもがやはり自分の窮状を誰か第三者に訴えられる力があればですね、もっと問題は早く解決するんだけれども。子どもってそんなに強い者ではないですよね。だから、訴えるってことを誰かが教えて力つけない限りは自分の窮状はむしろ「恥ずかしい、隠したい」と思うし。
で、あのう大体苛められたり、仲間外れにされることが多いので。まあ隠すのが当然になりますよね。

細川 さん
けど、その「訴えた」からって何か解決できるんですか?

後藤 解説委員
思っている人ほどSOSを出しにくいっていう事もあって。こちらから手を差し伸べないとやっぱり分かってこないんだけれども、それをしてこなかった。

湯澤 さん
子どもの貧困ていうものが、子どもがどういう貧困状況に置かれているか、子どもの側に立ってみた時にそれがどういうものなのかということをとらえなきゃいけない。

例えば家に勉強机が置けないような住宅環境だったら学力もつきにくいとか、いろんなことあると思うんですね。で、学力の問題とかもありますし。
また例えば、ともすると学力は自分が頑張ればつけられるものじゃないかという物の見方があるんですよ。だけど、頑張るにはやっぱり頑張れる基盤が無ければ、大人だって頑張れないと思うんですね!なかなかこういう状況は。
あと例えば、虐待。そういう状況が起きていても、それはやはり経済的にかなり厳しい家庭環境の中でどうしても食事を与えられなくて、ネグレクトになってしまうとかそういう事もあると。あのいろんな状況があります。
それからあと、子どもの内面なんですね。子どもの心にもいろんな影響を与えます。孤立しちゃうとか、あるいは「自分はダメな人間なんだ」とか「自分はいけないんだ」って自分を責めちゃうんですね。で、「自分がいるから親に迷惑掛けちゃっているんじゃないか。だから自分が我慢しなきゃいけない」とか...。

小野 アナウンサー
その発想はでも、もしかして子どもからSOSが出にくい理由にもなりませんか?親に迷惑掛けてるとか、掛けたらダメだと思っているんですか?

湯澤 さん
本当に私が聞いた声の中には、もう高校生・大学生ですけれども
「自分が生きているだけでお金が掛かる」と。で、「そんな自分が生きていていいんですか?」
でも、本当にそういう思いを子どもたちにさせているのがこの国ですよね。

宮本 さん
そういうことは親から直接言われ続けている例も結構多いですよね。
「お前がいてお金が掛かる」
高校生に入る頃になると、とにかく高校に行くんだったら自分でお金は稼ぐように。それから家にも入れるようにと言われ続けているとかね。

後藤 解説委員
特に深刻なのが一人親世帯なんですよね。先程子どもの貧困率で15.7%てありましたけれども。1人親世帯に限って言えばですね、この数字が50.8%。ですから、一人親家庭の子どもさんの2人に1人は貧困状態にあると。
お母さん頑張ってないわけじゃないんですね。例えば一人親世帯の母親の81%は働いているんです。でも働いているけれども、貧困から抜け出せないという現状があるんです。

それって他の国と比べてみますと、実は日本に特徴的な現象なんです。
先程説明ありましたけれども、例えば一人親世帯で働いている一人親世帯の貧困率です。ご覧のようにですね、日本だけが55%、半分を超えていまして。OECD平均の3倍近いぐらい高いんですよね。
他の国っていうのは働くことは貧困から抜け出す手段となるわけですけれども。

湯澤 さん
この背景の一つとして、またこちらの図もあるんですけれども。

日本の中で男性の賃金を100とした場合に女性の賃金はどれぐらいの割合かで、他の国と比べても、やはり女性の賃金の割合低いですよね。これもっと7割以下っていう様な数字もいろんな計算式では出ることがあるんですけれども。
女性はそういう意味で戦後ずーっとある意味じゃ「ワーキングプア」働いてもやっぱり貧しいというか。男性並みの給料は得られなかったって事ずっとあると思うんですよね。

宮本 さん
やはりその日本の女性の労働っていうのは、ちゃんと夫がいて。夫が大黒柱で稼いで、それをあの補填するっていうパートタイマーですよね。これがもう、ずーっと現在まできていて。
実はその夫がいない家庭もあれば、結婚してない方もいるし。だけれども、労働市場の構造ていうのはもうあの既婚女性の家庭補助の賃金が変わらないですよね。
でもそういうことは法律的には「差別してはいけませんよ」という風にはなってはいるんです。
でも日本の中ではそういうのを『間接差別』と言うんですけれども、例えば、他の給与の体系を計る職務表とかそういう物があって、でもその中で、それは性には中立に出来ているはずなんだけれども、結果として女性の方が不利益を被って、ちょっと低賃金の人が多いとかそういう事があったりするんですね。

小野 アナウンサー
あとここでちょっと一つ議論したい事があるんですけれども。視聴者の方からの声で、実はですね、こういう声がかなり見られたんです。

視聴者の声


「私は貧しく育ったことを一番誇りに思っているし、それは人間を鍛える基本になると考えている」


「戦後のより厳しい貧しさを体験している世代からみれば、働く意欲があれば生活できる」

宮本 さん
これは60代とかの方たちの子ども時代の貧困経験と今の子どもの貧困って全然違うんですよ。
どう違うかというと60代の人にとってクラスの友だちといるとね、貧しい家庭いっぱいなんですよ。だから、ある種の連帯意識があった。町の中歩いても貧しい家、ボロボロの家っていうのはね、普通にあった時代ですから。しかも時代は経済的には成長が展望できる時代だったですよね。だから、今貧しくても頑張ればやれるんだって。それで、現にそうやって日本って豊かになってきた訳です。
だけど今はその貧しいってことが本当に誰にも気付かない様な現象ですからね。だから、クラスに行けば本当に孤立した状態。で、誰もそういう貧しいって事を知らないから察してくれない。
先生もそうですよね。貧しいって事を知らない先生は目の前の生徒がいても「この子は家の問題、家庭のね、問題抱えてるんじゃないか」って察しができない。

湯澤 さん
あと、やっぱり比べられないのは、今度負担する物の額の高さですよね!?
例えば授業料。で、例えば国立大学の授業料って昔、例えば1万幾らとか、年間でもすごく安い時代があったわけですよね。
今、初年度で標準的なもので55万ぐらいとか。50から60万ぐらい。それ国立大学の授業料なんですね。

後藤 解説委員
大学についていえば奨学金があります。
これも一応今あの、一応申請すれば借りられるんですけれども、これは給付型じゃなくて貸与。言ってみれば、貸すものですから。まあ"ローン"借金なんです。
月に10万円借りたら4年間で500万円近くのローンを抱えて社会に出て行く。

宮本 さん
それと関わってこれもあるんです。これ、親の年収。

それで4年制大学進学と就職とにどう別れていくかという事なんですけど。このあたりのところから、完全に上と下に別れていく。

小野 アナウンサー
4年制大学に進める子どもの親御さんは収入が高い。高い人ほど大学に進めている。

宮本 さん
それで先程ね、投書の60代の方がご自分の子どもの頃は貧しかったけど、それをバネにしてっておっしゃるんですけれどもね。今の違いはやっぱり当時は中卒でも社会に出られた時代。結構多かったですね。
だけど、今の日本というのは50%以上が4年制大学行く時代なんですよ。つまり、教育を受けるってことが前提になって社会出て行かれるわけですね。
ところがその教育費が非常に掛かるってことになると、とにかく家が貧しいとね、あの昔と違ってもう絶対に社会にちゃんと出て行って自活できないっていうようなね。
そういう、ここは本質的に違うと思います。

鈴木 さん
それって平等じゃないですね。
じゃあ、そういう貧しい家庭に生まれたらどう頑張っても。勉強やって、じゃあ高いお給料貰える職に就いてとか思っても、こんな制度だったら結局どうすればいいんですか?そういう抜け出す道はないんですか?

小野 アナウンサー
そこなんです。どうすればいいのか?
どうやったら解決できるのかをちょっと議論したいんですけれども。その前にこのプレゼンをお聞き下さい。


プレゼンテーション②

それを考えるきっかけにしていただきたいと。
一昨年から対策をすごく力を更に入れている自治体をちょっと見て下さい。これが上手くいくかどうか、とても注目をされています。
このタイトルからもお分かりの通り、東京・下町の荒川区です。

荒川区はまず何をしたか、これです。
徹底的に困っている皆さんがどういう理由で困っているのか?抜け出すにはどうすればいいのか?を調べたんです。
実際に相談に来ている42のケースを追跡調査して丹念に調べた結果、行き着いた答えがあります。お金を与えるのはもちろんですけれども、それだけじゃあ根本的に解決しないんじゃないかっていう考え方にたどり着きました。
なぜならば、調べていくとこんな事情が見えてきたからです。

困っている家は親や家の人が心や体の病気だったり、離婚をしていたり、そしてその離婚の理由等も家庭で暴力がある等の極めて複雑な事情が多いことが比較的多いことが見えてきました。
そうすると子どもは全てではありませんが、さっきから言っている通り、家で孤立しがち。
で、どうしても学力が低下しがち。全員が全員これでまた給料の悪い仕事になってしまうという訳ではありませんが、どうしても悪循環になり易い状態になっている。
これを何とかしようと始めたんです。

まず、何から手を付けたか?これです。実は区の役所の中の垣根をちょっといじろうと考えたんです。なぜかと言うと、これ例えば4つ示しました。
「子育て支援部」に行くと児童手当の申請が出来ますね。
で、教育の就学援助が欲しければ「教育委員会」に行かなきゃいけません。
えー、家庭の相談は「区民生活部」で応じてくれます。
生活保護の申請は「福祉部」に行きます。
それぞれがそれぞれ頑張っています。でも、連携がしづらい事情があります。
見て下さい。壁がある。実は今『個人情報保護』ってさっき言いましたでしょ?
子育て支援部に行った情報をこっち、教育委員会の人が見ることは今、なかなか出来ないんです。そのためだけの情報を聞いているので、隣の垣根の向こうの人達が「その情報をちょっと見せて!」ていうのは出来ないんです、普通。

今、荒川区はそれを何とかしようと取り払おうと努力しています。
で、先にやったのがまずね、人だして貧困を何とかするための組織を先に作ったんです。
これだけでも実は自治体としての取り組みとしては珍しいんですって。
危機感が取分け高いエリアなんですよね。意識が高いのかもしれません。
そうした時に教えてもらったんですが、じゃあ何したか?なんかしなきゃいけませんよね。もちろんしてまいす。

例えば2つ紹介します。
早く見つけることがとにかく大事です。そのためにこういった人達に応援に入ってもらいます。
例えば、保育士の長年やってきた人が区内の保育園を実際に回って、表情とか言葉使いが荒れている子などを見て「この子の家、もしかしたら荒れているかもしれない」と、早く見つける。まあ、目が利きますよね、経験者だから。というので入ってもらう。
あと、区役所の窓口に家庭裁判所で調停委員をやっていた人。つまり離婚の裁判だとか、調停がありますよね? そういった事で法律の知識もあるし、傷ついた人に寄り添える言葉をちゃんと掛けてあげられるスキルの高い人に入ってもらう。
つまり、こういう人達に応援に入ってもらう。区役所の職員さんてどうしても組織ちっちゃいですから、4年単位で大体人事異動で違う畑に行かざるを得ないんです。
こういう「スペシャリスト」は頑張ってもなかなか育たないんですって。だから入ってもらおうと。こういうのを始めました。

もう一つ。「地域の力」をもっと使おうとこれ、学習塾。
学力低下を何とか防ぎたくて学習塾をするんですが、ただやっている訳じゃありません。これを目指している。
ほら、孤独って孤立ってさっきから言ってますでしょう。この子たち、家でも一人ぼっちのことが多いんだそうです。
ここに来れば大人と喋れる。なるべくマンツーマンになるように目指して、寄り添うように勉強教える。
そうすると、中には心を開いて前向きになって夢を再び持つ子が出てくるんじゃないかとお金以外の取り組みも始めてみました。
これがどう結び付くかというのはこれから注目ということです。


湯澤 さん
本当に取り組んでいる地域では、例えば小学校の学区ってあるじゃないですか。あるいは中学校の学区、それってすごく地域が狭いですよね。そういう所にいろんな専門家が集まって。実際に「じゃあ、こういう子どもたちやご家族がおられるので自分達で何をしていけるんだろう?」ていう話し合いをするような協議会を作ると、そういうような。
まあ、国の方では保護を要する子どもで『要保護児童対策』というのがあるんですけれども。そういう様な形のものと似ているんですけれども。そういうものを地域でとにかく発見した事を地域の専門家が集まって解決していこう!という取り組みがありますね。

宮本 さん
それで、ああいう縦割りの組織を個人でいってもね、あの壁を越えられないんですね。
ですから誰かがキチンと寄り添いながらあの縦割りの行政、組織を横に「横串を刺す」って言いますけどね。だから「この子は、今困っている」と。で、何が困っているのかを誰かがきちんと見極める必要あります。
誰かまた複数の人が。何と、何と、何を解決すれば前に進めるか?
ですからさっきの「貧困ていうのは複合的だ」っていう事です。複合的な様子をキチンと把握する。で、行政組織が縦割りであればそれを横にまたいで行く。そういうサポートをするっていう事が必要です。

鈴木 さん
あと、その子どもに今向けてる視線なんですけど。
お母さん、苦しんでいるお母さんがいっぱいいると思うんですよね。
働いたって安くて。で、子どもの面倒をじゃあ、誰が見るの、帰ったらご飯作らなあかんていう...。

小野 アナウンサー
生活保護でそこを助けてあげるっていうことはないんですか?

湯澤 さん
もちろんあります。
で、例えば"虐待"っていうような行為がね。でも、生活保護を受けているご家庭の方がむしろ虐待という行為は少ないっていう様なデータもあるんです。
それはなぜかと言えば、やはり生活の基盤が一定程度きちんとやっぱり安定しているという事が大事だということを示しているんですけれども。

細川 さん
「連携強化」の部分のところに申請しに行くって、これは大人がやる訳ですよね。これキチンとできる人というのは多分DVしないと思うんです。
じゃあ、例えば病気で寝たきりで行けないっていう方もいらっしゃると思いますし。
あとはきちんと子どものことを考えてあげてるっていう事でもう仕方なしにっていう方は行けると思うんですけれども。
皆が皆、そこにきちんとね、本部会に行ける人たちじゃないと思うんですよね。

後藤 解説委員
だからこそ、やっぱり早期発見でこちらの方からSOSを出していないところの方に働きかけていくていうのが大事なってくる。行き易い場とそれからそこで受けた人がアンテナがちゃんとあって。ピンとくるってことが必要です。そうでない限り全然訴えても分かんないし。
子どもは言葉できちんと表現出来るかどうか、分かりませんからね。だから、みんなこういう関わっている関与している人たちが子どもの貧困という問題を良く分かっていて、アンテナを張って、ある現象を見たらピンとくるっていうこの力がないと、これ機能しない。
やっぱり、こういう居場所づくりですか。今、各地で学習、生活困っている子どもたちの学習支援の場が広がりつつありますけれども。やっぱりそこをいくつか取材しますと、単に勉強を教える場ではなくて本当にそこでこういろんな相談をしたり、冗談を言い合ったり。
やっぱり「ここでだったら自分は甘えられるんだ、頼りにしていいんだ、ここなら自分を受け入れてもらえるんだ」という場所になっている訳ですね。やっぱり、お父さんお母さん、忙しいからどうしてもこう手を掛けられない中で孤立しがちな子どもたちが、自分が受け入れてもらえる場所を見つけられる。
そうすると、やっぱりそれが意欲とか希望とか「よし、頑張るぞ」という気持ちにつながっていくていうことなんですね。だから、ああいう場をどんどん広げていくっていうのは大事だと思いますね。

湯澤 さん
だからこういう荒川のようなシステムをいろんな地域に増やして欲しいんです。
これを政府の中の例えば厚生労働省、文部科学省、そういう壁もある訳ですよね。そこをつないで、子どもたちを支えていくようなシステムが必要だっていう事。
国の方でもそういう組織が必要ですし。そしてまた、法律でも今『子どもの貧困対策法』というものを制定しようていう動きは出ているんです。
そういう法律が出来れば、その中に地方公共団体は「こういうシステムを作って下さい」という事をうったえるので。そしていろんな自治体に広がっていくことっていうのがすごく重要だなって思っています。

小野 アナウンサー
それにしても、子どもの成長は待てない。待っていられないということで、本当に一日も早い対策を願います。


 
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