2013年09月28日放送放送内容まるわかり!

人類は"適応"できるのか?進む地球温暖化

今夏の猛暑に豪雨。日本列島に異変ありと感じている方も多いのでは。 今月27日、世界の「気候変動」に関する最新報告書が発表され、 "温暖化が深刻化""異常気象も増加する"と警告される見通しです。 専門家は近い将来、災害だけでなく農業や新たな伝染病など、暮らしや経済、 都市機能にまで大きな影響が出ると危機感を強めています。 温暖化という地球の病はどうなるのか?どう対処するのか?深読みしました。

今週の出演者

 

専門家

木本昌秀さん(東京大学大気海洋研究所 教授)
白井信雄さん(法政大学温暖化適応プロジェクト特任教授)
室山哲也(NHK解説委員)

 

ゲスト

桂文珍さん(落語家)
松本明子さん(タレント)


小野 アナウンサー
異常気象というと、30年に一度あるかないかという極端なことを言うそうなんですけど。

実はきのう国連機関が出したこれが地球温暖化に関する最新報告書のまとめなんですが。そうとう厳しいことが書いてあるらしいんですよ。
地球の今、いったいどうなっているのか?
地球の今という大きな話を当番組の手作り感あふれる小さな模型で、これから中山アナウンサーがプレゼンします。


プレゼンテーション①

中山 アナウンサー
おはようございます。よろしくお願いいたします。
今、あったその報告書、これって実は単なる温暖化についての報告というだけではないんです。これを参考に各国の政府がいろんな温暖化防止の対策を取るという参考にしているものなんです。
これ非常に権威あるといわれるものになっているんです。

これを作った方々というのがこちら。VTRにもありました『IPCC』
これ、気候変動に関する政府間パネルと呼ばれる組織。国連の機関です。
ちょっと難しい名前ですので、簡単にいうと"気候変動"というのは要はこれ『地球温暖化』のこと。これを長年調べている方々と思ってください。

この地球温暖化というと皆さんどうでしょう。ちょっとおさらいしますよ。
こういったことですね。地球の周りに大気がおおわれてあるんですね。
で、この太陽からの熱を外に逃がさないように閉じ込めて、まるで温室のような働きをこの大気がしていると。
この大気の中にこれが、いわゆる『温室効果ガス』と呼ばれるものがあるんです。
これ二酸化炭素やメタンなどがあって。これがどんどん人間が生活する中で増えていった。
すると、よりここに熱がたまって気温が上がっていくというのが地球温暖化です。

そこでこの報告書に何が書いてあるか、調べました。

ザクッと簡単に言いますと、要は「地球の平均気温が高くなります」

そして「地球の温暖化がどんどん進むと異常気象が増えます」 

さらに「この地球温暖化の原因も人間です」ということです。

小野 アナウンサー
それ今までもずっと言われてきたことじゃないんですか?
さらに言えば、今まで言われてきて、でも本当に人間のせい?って言われたり。
何万年規模で地球が暖かくなったり、寒くなったりしていることの、ほんの一部なんじゃないかとか。

中山 アナウンサー
そう。 まさにその疑問に答えるために、未来の本当のところを知りたいということで、世界中の科学者の方々が調べている。それをこのIPCCがまとめているんです。
この世界中の科学者、どんなことを調べているのか?
いろんな論文を皆さん作っていらっしゃる。科学者の方々、世界中にいる方々。

例えばこちらの方。
温暖化で空気の流れがどう変わるのかな?ですとか。
海水温の変化がどう温暖化で変わっていくのか?さらには北極、南極、その氷がどれぐらい溶けちゃうのかな?というようなことを調べている。

それから、気候。
百年後の気候どうなっているのか?というのを。百年間をスーパーコンピューターでシミュレーション。人生かけて皆さんいろんなことを調べていらっしゃいます。
他にもこういったこと、ちりや微生物。
微生物。微生物って暖かくなると、地中の中にいる微生物は元気になるんですね。
すると土を分解してメタンガスや二酸化炭素などをどんどん増やすというふうなそんなことを調べて、地球温暖化にどう影響するのか?というようなことを探っている方もいらっしゃる。

こうした皆さんのいろいろな研究や成果。
この論文をまとめて、いろんなことをやったのが、先ほどきのう発表された報告書。

これに関わった方、科学者1000人以上。
この皆さんが9200以上ものいろんな論文をこれ本当に正しいのかな?これって本当かな?というようなことを皆で見合って調べて調べて、ようやく出したのがこちらの報告書。
これまでもずっとこのような形でいろんな発表をしてきた。
今回すごかったのは、5回目にして非常に精度が高まっているというんですね。
そのどういった具体的な内容か?いきましょう。

ここに書かれていること、読み解きました。
すると地球の平均気温、2100年までにどれぐらい上がっちゃうのか?
分かっちゃった。最大4.8℃
いや、これがですね。実はいま各国で取り決めがあって、それでいうと目標値、世界の平均気温はここまでじゃないか、ここまでにしましょうよという取り決めさえあって、2℃以内にしないといけない。4.8℃は倍以上です。

この4.8℃というすごさを。2℃を仮に世界の目標の例でみてみると、この2℃という世界がこうなっちゃうというのをご紹介しますね。
異常気象が今よりもどんどん増えちゃう。
そしてこの大雨ってありますけれど、これがものすごい威力、勢力になって回数も増える。
一方で、干ばつが出てしまうような地域も増えてしまう。
台風などの勢力が強くなるので、高潮、洪水。洪水の被害なんて、年間数百万人規模で出ちゃうんじゃないかっていう予測すらあるんです。
こうなっちゃうと土地もだいぶん弱って、食料不足。日本って食料自給率低いですよね、海外から輸入しています。もちろん影響を受けるでしょうね。
他にも病気、熱中症も増えるし。また、これまでなかったところで伝染病が流行ってしまうかもしれない。
そういった世界になるかもしれないというのがこの2℃です。

それから、最後にこれです。
どれくらい人間のせいか、確率というのも発表されました。
原因が人間にあるというその確定、言える割合としてはこうです。95~100%人間のせい、であるということなんです。


松本 さん
やっぱりなんか大量消費とか大量生産とか開発して便利になればなるほど地球が悲鳴を上げているんじゃないか?っていうふうなことなんでしょうか?

小野 アナウンサー
きょうは専門家の方々にいろいろお聞きしようと思うんですが。
95~100%という数字は、相当突きつけられた感じは素人の私たちでも分かります。

室山 解説委員
まあいろいろ科学者の取材をしていますけど、科学者の方がここまで言うというのはやっぱり相当ですよね。科学者の人たちって大体すごく慎重なんですよ。
「これこれはこうかも、こうかも」って言うんだけど。
この数字を見るとやっぱり相当なもんだ。

小野 アナウンサー
他にどんなことが書かれているんですか?衝撃的な内容としては。

室山 解説委員
中身ですね?はい。
大ざっぱに言うと、だから今までの温暖化がますますいろいろと複雑に問題化してきているということが分かってきているんですね。
それで、IPCC、今回のものが第一弾なんですけど。
来年の3月、4月と出て、来年の10月に全部まとめられる。

一発目のものの特徴は、ひとつは温暖化が起きているために海面が上昇。最悪でね。これは温度が上がるので膨張しますよね、水がね。
それと今回新しく言われたのが南極とかグリーンランドの陸上の氷が海になだれ落ちる。その影響も出て前よりもこの数字が大きくなってきているというようなこととか。
それから、すでにいわゆる異常気象ですね。暑い日だとかそういったものが現れ始めていて、これからさらにそれが大きくなるんじゃないかとか。
それから、海そのものが海面からどんどん3000mぐらいの深いところから、水温が上がっているというような報告もあったりして。こういう中で北極の氷がどんどん夏なくなっていったり、いろんな現象が起きていると。
大切なことは、地球温暖化というんだけれども、地球全体の気温が上がるんだけど、それによる気候変動。だから寒くなったり暑くなったりしたり、揺れ動きながら全体が底上げしていくと。
水の蒸発が増えますから、台風だとか暴雨だとか、そういうかたちの変動が起きると。
均一に暑くなるだけの話じゃなくて、全体がじょう乱されることなんだということを理解しておかないといけないと思いますね。

木本 さん
あの、例えば今年日本も猛暑だったですよね。
ですから一回一回、竜巻も起こりましたけど。ひとつひとつ全部温暖化のせいにするわけにいきませんけど。皆さんが感じておられるように、あれ?何なんだかな、これはな?温暖化のせいもあるのかな?と。
そう思っていたら、やっぱりそういうせいもあるんですよと。身近に感じておられることは間違いじゃございませんよと。そのために何かしなければいけませんよと。

小野 アナウンサー
ただ、突きつけられたことに対して驚きはするんですけど。それがものすごい驚きかというと、そんなこともないっていう。
今までこういうことって言われてきたような気もするんですよ。
具体的な数字は入っていなかったですけれども。警鐘は鳴らされてきた。

室山 解説委員
結局ね、想像力が試されているんです。
目の前で温暖化で人がバタバタ倒れたらまずいと思う。それから津波が来たらまずいと思うんだけれども。
このロングスパンで、ある種あいまいなリスクですね。これがだんだん増えていく。あまり巨大すぎて僕らにはピンとこないんですよ。
だけど、こういうようなデータをもとに想像力を働かせて、なにが起きているかっていうことを理解しないと、今に本当に気がついたらということになる。
それが今、問われているんだと思うんですね。

小野 アナウンサー
でも何十年も前からそのことを言ってきたのに、なぜこんなに進んでしまっているんだろうということは、科学者の方々はどう思っていらっしゃるんですか?

白井 さん
不確実性というのがあったからですね。
将来の影響とか気温はどうなるのかとかですね、どういう影響があるかとかですね。そういうのが不確実なので、今やらなくてもいいでしょうというのが先送りをしてきたといのがやっぱりあると思いますね。
その不確実性が不確実じゃないんだよ、より確かなんだよというのが今回の報告書で言ったのかなと思いますね。

室山 解説委員
なんで対応が遅れているのか?というとね。
ま、ひと言でいうと分かっちゃいるけど止められないんですよ。
例えば先進国と途上国の関係もそうで、今みんなで力を合わせないとこの問題は解決しないんだけれども。途上国から見ると、今まで先進国はいい目をした結果こうなったんじゃないかと、お前らがやれよと言うわけですよ。
だけど今、中国なんかすごくアメリカなんかよりも二酸化炭素排出しているので、そういうふうに言ってられない、みんなでやろうよと。それで僕ら先進国側はそう言うと。そういう利害の対立みたいなものがあって。
非常にドロドロしたものがあるので、分かっちゃいるけど、なかなかそっちに進んで行かないという実態があるんですよね。
こういうふうになったのを科学者の方にぜひ言ってほしいんですけど。
これだけの影響力を科学者の結論が持ったのは、僕の記憶では本当にないというか、どうですか?

木本 さん
ですから慣れていないのもありますんでね。
われわれは95%、99%以上確かでないと言っちゃいけないという教育を受けてきていますので。
どうしても言い方があいまいになるんですけれども。だけども、もし95%でなくても60%、40%で危険があってそれで損をするんだったら、皆さんは決断を下して対策を取らなきゃいけないですね。
例えば簡単な話が、傘を持たないで文珍さんの洋服がぬれるとね、クリーニング代が掛かるんだったら、タダで傘を持っていけるんだから持って行った方がいいということ。
対策を取らないと、もし起こったら損するんであれば、それに見合った対策をする。対策にどれぐらいコストが掛かる。
それの多い少ないを見比べて、なるべく損しないように対策を取るということが必要になってきます。

室山 解説委員
対策は二つあるんだけど。
一番大切なことは二酸化炭素とか温暖化の原因の排出を減らすことですね。

木本 さん
温暖化をなるべく、ましなレベルで止めましょう。今の地球の温度、こんな具合に上がってきているんですね。

このグラフは横が19世紀の中頃からそれから現在までを示したもの(1961年から1990年頃の気温を基準値0℃として)で、地球全体で平均した温度です。
ギザギザ上下していますのは、ときどき暑かったり涼しかったり、それが珍しいほど大きいと異常気象と言われていますね。
そういうゆらぎをしながら、徐々に右肩上がりに上がってきていますね。こうした長期傾向の大部分は人間のせいでそうなっちゃっているということです。
こういうことをハッキリと報告書で言っているんですけれども。
この先、これがあまりちゃんと対策を取らないと、4.8℃ぐらいまで上がっちゃいますよということも書いてある。それから先はどうなるんですか?どっかで止めたいよね?4.8じゃ、ちょっと具合悪いですよね。
できれば2℃で止めたい。それにはどうしたらいいか?二酸化炭素を出すのを減らす、できるだけ少なくする。

小野 アナウンサー
それがその対策ですか?2つ書いてある。

木本 さん
この緩和策といいますか、どこかで止める。
だけどそれは温暖化を0にしちゃうということじゃありません。もうこれだけ起こっていますので。
どこかあまり害のひどくないところで止めましょうというのが緩和策です。

室山 解説委員
緩和策って要するに二酸化炭素なんかを出さない方向に持って行くっていうことですね。
だから、化石燃料ですね。石油や石炭や天然ガスとか、ああいうのを燃やすと二酸化炭素が出るので、できるだけ出さないようなものを使う。
天然ガスのほうが石炭なんかよりも少ないんですけれども。そういうものを使ってできるだけ出さないものを使ったり。
あと省エネをすすめて、あまり燃料を使わないようにしたり。
それから、再生化のエネルギーのものをすすめるようにしたりとか。
いろんな方法をとって。とにかく二酸化炭素そのものが大気中に出ないようにしましょうと。

小野 アナウンサー
これから減る可能性、減らせる策ってあるんですか?

白井 さん
すでに対策は取っていますよね。
今おっしゃった省エネとか再生可能エネルギーの普及とか。その点大規模にやらないといけないことになっていますよね。

室山 解説委員
社会全体を大きく変えないといけないので、やっぱり簡単にはいかないですね。
それからなかなかいかないので、こういう案まで出てきているんですよ。

火力発電所とかで二酸化炭素が出たら、それを閉じ込めて、地中に埋めてしまえと。外に出ないように。
これ『CCS』と言うんですけど。
今、開発中なのでまだこれからなんですが。ここまでやらないとまずいぞというくらいの話が出ている。
だけど本当にこんなことをやっていいのか?という考えもあって。
このくらい問題が大きくなっているよということですね。

小野 アナウンサー
原発再稼働以外に道はないというような空気もなんとなくある気がするんですけど。
それについては科学者の方たちはどういうふうに考えていらっしゃいますか?

白井 さん
気をつけなければいけないのは、CO2さえ減らせば良いというのはやっぱり良くないと思うんですね。
こういう地中に入れるというのも。地中への影響というのも分かっていないんですよ。いろんな影響があり得るので。
CO2を減らせばいいという考え方だと原発も推進しましょうというみたいな話になりがちですけれども。それでもいろんな議論をしなきゃいけないですよね。
CO2だけ減らそうというすると、どこかで間違えてしまうというのは気をつけなきゃいけないです。

室山 解説委員
原発再稼働については、この問題が出たときに、日本のエネルギー政策は原発を半分以上にもっていかないとダメだという計算が最初あった。だけど事故が起きた。
もはや今の原発が、稼働0にするのかどうかは別として原発に依存する率はもう触らざるをえないです。そうするとその足りない分を他のことで補わなきゃいけない。
じゃあ、化石燃料を燃やしましょうかという話になるけれども。今度は値がすごく高いので、経済的な圧迫になったり、二酸化炭素の問題があるので。
さっきの再生可能エネルギーとか、あの手この手で乗り切っていかなきゃいけないと。こういう状況になっているわけです。

小野 アナウンサー
そしてその地球温暖化対策のもう1つ。適応というのがありますけど。
なんとかして減らすに対して、適応だと「あきらめる」と読むような気がするじゃありませんか。
果たしてこの「あきらめる」ことに策なんてあるのか?

文珍 さん
いやいや、そうは思えなくて。なんか持病みたいな感じがしましてね。
それを上手に付き合わないと仕方がないというのが適応かな?と私は思います。

小野 アナウンサー
じゃあ、ちょっとこの適応策とは一体どういう策のことなのか?
この話を聞いてから議論を続けましょう。中山アナウンサーです。


プレゼンテーション②

中山 アナウンサー
はい。その適応というのは、いろんな今後起きるかもしれない異常気象に備えて適応しようという考え方で。
見つけました、適応策の先進国といえるのがオーストラリアです。

このオーストラリアって、これまでも、ここ10年ぐらいサイクロン、時によって大雨、高潮に洪水、大きな被害が出ております。
干ばつも、もう数年続いたりしているんです。山火事も起きたりしている。
ここをなんとかしたいということで、適応策をし始めているんです。

国が1億7000万豪ドル、日本円にすると157億円をかけてこれを造りました。
気候変動適応センター。
これを州それぞれのところに設置してですね。ここが何をしているのか?
もともと自然災害に備えるというと、どうでしょう?皆さん。いろんな過去に起きたその状況。
水がここまで来たから、じゃあここの高さだったら、この堤防ぐらいでいいかな、高さは?というふうに、過去のことを気にしていると思うんですが。
そうして実際、今まで対策が取られてきたのを、この適応センターがしようとしていること、これです。

未来を予測。
未来、気候変動どうなるのか考えて、それに備えて、用意しましょう。
先ほど文珍さん"想像"ということをおっしゃっていたんですけれども、まさにそのイメージで適応センターはこんな町を考えております。

これ、海近いですよね?
今後、海面が今はこうですけど、上昇すると予測したんです。

そして海の近くの家をこれから建てるんだったら全部『高床式』にしてくださいと。
これもう実際、始まっております。
この高床式のところ。これ今、進んでいる話なんですけど。
実際こう(上昇が)来ちゃった。来ちゃったら、じゃあこうしましょうよ。

居住禁止にしますよ、この地区。ということを考えている。
で、もし住民の方が自分のこの土地を奪われた、なんとか保証してよ、という話になったら国がしっかりとサポート、お金の面でもしますよ、ということを考えているんです。

さらに洪水がどんどん広まって、この道路まで来るのを予測している。
これ実際に過去に被害にあっているわけではないんですけれども。予測して『う回路』を造っているんですね。これで大雨、高潮、洪水に備えて、みんな予測をして適応しようと。

他にもこれ、ありますね。干ばつ。
干ばつに関しては、今後猛暑が今までの10倍起きるだろうと予測したんです。
そうすると水がどんどん減っちゃうなということで、これ(淡水化プラント)造っております。海水を淡水に変える施設です。

上流に目を向けますと、ダム。
水不足になると、かれちゃうかもしれないということで、少しでも取っておきたい。
この水、蒸発しないようにしたいというので...ダムにカバー。というのを考えているんだそうですよ。

こうして国レベルで適応策を考えているというのは、実は各国で進められていたんです。
ヨーロッパをまず見てみましょうか。イギリス・テムズ川。
これ、ロンドンを流れる川の堰(せき)、川の水をせき止める堰ですね。
この施設、これ水面が今後上がるかもしれないという予測をして、水門を下から上に上がるようにして、それで洪水を防ごうというふうに今どんどん施設を改良しているんだそうですね。

さらにオランダ。オランダって海抜低いところ。
今後、水が増えてきたら住めるかな?とうので、これ家をよく見てください。
水に浮いているんです。水に浮く家を開発しました。
今後はさらにこういった家をどんどん増やして、水に浮く家の町を造っちゃおうという構想があるそうです。
これが適応策なんですね。

韓国にもありました。
ソウルって暑かったんですね。なんとか涼しくしたいなって。どうしよう、どうしようと言って、こうしたんですね。
道路を川にしました。もともと川が流れていたところをふさいで道路にしていたのを川に戻したということなんです。
これ実際に道路があったときよりも、気温夏場は3~4℃下がったというんですね。
今、韓国でしたけれども他にも目を向けると、ありますね。

アメリカにカナダにヨーロッパだって、ドイツやフィンランドなんかもしている。
さらに中国も国をあげてこの適応策をすすめているというんですね。


白井 さん
適応策というのは始めてはいるんですけど。
何ももちろんしていないというわけではなくて。ただ、今、適応という新しく話をされましたけど。ちょっと今のプレゼンで一つだけ気になるのがあってですね。
ハードウエアというか、ハードの工事で海水面が上がるとか、豪雨に対して対応しましょう。みたいなことを説明されましたけど。それだけ言ってしまうとすごく予算も必要だし、土木工事ばかりやっているような国になってしまうんですね。それだけではないということは、気をつけなきゃいけないと思います。
そういうふうなハードだけではなくて、ソフト。ヒューマンウエアとかですね。
例えば雨が降って決壊しそうだって、今もやっていますけど「早く逃げましょう」って言いますよね。そういう「早く逃げる」といのも重要な適応策なわけですよ。
それを土木工事で防ぐようにするというだけでは、やっぱりダメなので。そんなことをやるには、いくら予算があっても足りない話になってしまいますね。
なので「早く逃げる」ようなことも適応策なので、そこのソフトウエアとかヒューマンウエア、つまり人の意識とか、人と人とのつながりとか、コミュニティ、地域ぐるみで何かやりましょう、話し合ってやりましょうとか共同でやりましょうとかそういうことも重要なんだということをちょっと気をつけなきゃいけないですね。

室山 解説委員
質問なんですけど。
日本って山が高くて、川が急しゅんで、少子高齢化が進んで、それからこの間の津波のような災害がすごく多いですよね。
こういう日本みたいな国で適応策ってどこがポイントになるんですかね?

白井 さん
そうですね。なかなか安全な場所はないというのもありますし、防ぎきれないというのがあると思いますね。
適応策の具体化みたいな研究もやっていますけど、その中で「レベル1・2・3」とか言っているんですが。
レベル1というのは、完全に防御してしまう。それはハードでやるということも必要かもしれません。今、レベル1でも日本なんか防ぎきれないということもあるし。
あと洪水なんかでもレベル2で早く逃げましょうみたいなことも。
あとレベル3だと住む場所を変えるとかも考えられます。

小野 アナウンサー
ツイッターでは
「優先すべきは温暖化が進むことを前提とした災害対策では?温暖化防止対策よりもそっちの方が大事じゃないか」
という緩和策か適応策か?というご意見が届いていますが。

木本 さん
どっちがどっちより大事ということじゃありませんけども。
適応策というのはちょっと今まで日本は忘れていた。

文珍 さん
どうなんでしょうね。
異常に地球が温暖化していくと、長ーい歴史の中で二足歩行を人間がするようになったように、大自然の変化に対して人間自身が変わっていくということはあるんでしょうか?

木本 さん
あります。ありますけども。
今回の温暖化は1つ温度が上がるということですけど、人間自身の変化以上にそのスピードがすごく速い。
ですから生態系も人間も、追いつくことができない速さなんです。

小野 アナウンサー
21世紀の終わりまであと80年。

文珍 さん
人間がついていけないぐらい速いと。はあー。

小野 アナウンサー
ただ、未来予測をもとに防止対策を考えたりするって、お金を例えばともなうときに私たちどうですかね?
もしかしたら、もっともっと水面が上がるかもしれないから、これだけお金を国費から出しますよって言われたときに、それなんか根拠あるの?って、過去のデータあるの?って聞きたくなる気がするんですよね。

白井 さん
お金が掛からない対策というのもあるんだということで、そういうのを優先的に研究しようというのがひとつだと思います。
あと今、対策を取らなくても将来の影響というのは少し様子を見ながら、常に監視をしながらモニタリングして、対策を取っていくというような考え方も必要だと思うんですね。

室山 解説委員
この間ある先生が言っていた、堤防を造るでしょ、適応策として高潮用に。
堤防のところに波力発電のシステムを組み込むんだって。そうすると、そこで発電すると。"発電する堤防"という発想で研究している人もいたんですが。
だから、お金をどんどん捨てるんじゃなくて、それを今度は足場にして、ポジティブに展開するような知恵も考えた方がいいかもしれないですね。

白井 さん
もうひとつ、例えば日本の適応策の例で。農業関連はよく進んでいるんですね。
すでに米の被害を受けたりとか、米の品質が落ちたり、収量が落ちたりとか、現に起こっていますので。その将来より大きくなるという話をしているんですね。
そうすると高温でも育つような稲を品種改良で作って、それを普及したりとか。ただそれも消費者が買ってくれないとみんな作れないですよね。消費者の協力も必要だし、単に技術開発だけじゃなくて。
あるいは米じゃなくて、別のものを作りましょうと。
長野の研究所が今やっていますけど、リンゴも被害を受けているわけです。これからより被害を受けると。
リンゴじゃなくて、リンゴ栽培どうしようか?とか。リンゴ以外のもしかしたら別のものを作るというのも将来的には考えないといけないと。そういうのは、今リンゴ植えているのに、いきなり切って植え替えるというわけにはいかないですから。
例えば、リンゴ次、植え替えるときがあるかもしれないじゃないですか。
そのときには気候変動の長期の影響を見通して、もしかしたらブドウを植えましょうとか、リンゴでも別の品種にしましょうとか。

木本 さん
適応っていろんな分野で、それぞれにいろんなことを考えて、知恵を出して適応していかなくちゃいけませんよね。
ですから国民の人、一人一人、農業の人も水産業の人も考えなくちゃいけない。
ですけども、一人一人だけではできない部分もありますし。全体を見て決めなくちゃいけない。
町を溢れそうな川の近くにはなるべく造くらないようにしようなんて言うと、一人一人じゃ無理ですので。
やっぱりある程度は国の方がリーダーシップを発揮して適応するためにはどういう研究が必要で、それに対してどういうふうな情報がいるか、というのをね。
よその国ではそういうふうに国がリーダーシップを取っているところもありますので。

例えば、これはイギリスの例ですけれども(国の温暖化専門研究機関ハドレーセンター)。
ここが責任を持って、国でできるような適応策については策定をいたしましょう。その情報を集めましょう。
だけどそれは、こんな分厚い報告書が出るくらい難しいことですから、ここだけではできないので各方面に協力をしてもらってやります。
日本でも適応策を進めるためには、こういう仕組みが必要なんじゃないかなと。

白井 さん
今、研究チームはあります。
でも、こういう役割はきちんと位置付けられていないというのはあります。

室山 解説委員
検討会議が8月に始まって、再来年の夏までに適応計画を閣議決定しようと。

小野 アナウンサー
どうしてそういうものが必要なんですか?なぜ必要なんですか?
これ。ハドレーセンターのようなものって。

木本 さん
それはやっぱり、一人一人が農家の方がどう適応していいか、どうしていいか、その情報が必要ですよね。
それはベースになる気候はどういうふうに災害がどういうふうに変わるかという情報が必要ですから。

小野 アナウンサー
科学の研究結果と政策を結びつけるということが大事だとおっしゃっているんですね。

白井 さん
トップダウンとボトムアップといいますけれども。
ボトムアップというのは、現場があるわけですね。地域でいろんな取り組みをやっているわけです、すでに気候被害が。
一方で将来予測をするトップダウンも必要で。そのトップダウンとボトムアップをいかにあわせていくか?
トップダウン的な話だと地域の様子は分からないわけです。

室山 解説委員
気をつけなきゃいけないのは、こういうときは弱い立場の人が被害をこうむりやすい。
例えばお金持ちの国ならできるけど、お金がない国ではできないので。国内でも同じですね。
だから、そういうところに目配りをしながらやっていかないと。矛盾が、とにかく弱い人のところにこういうときって行くんですよ。
それは気をつけないといけないと思いますね。

白井 さん
一つ言いたいのは、将来の影響だけじゃなくて、すでに被害が起こっているということですね。
これだけ豪雨が増えているとか、猛暑も増えています。
それは温暖化の原因というのはハッキリしている。すでに起こっている現在の問題なんだ。自分も被害を受けているわけですね。
今、起っている問題に対して自分を守るということを考えれば、そんなに切り替えではないと思うんです。
その延長上に未来があるんだと思います。


寄せられたご意見・ご感想はこちら

■番組では随時ご意見を受け付けています。現在募集中のテーマはこちらから。

ページの先頭へ戻る