2013年12月14日放送放送内容まるわかり!

"認知症800万人" 徘徊(はいかい)事故をどう防ぐ

認知症の人が徘徊し道路や線路内で事故にあったり、車を運転し事故をおこすなど、"徘徊(はいかい)事故"が、いま深刻な問題に。
高齢者の7人に1人が認知症なのに、地域の介護サービスはまだ不十分。
家族の負担も大きく、24時間見守る事は難しいため、思わぬ事故につながっています。
中には、介護する家族の責任が裁判で問われるケースも。
なぜ徘徊事故は相次ぐのか?患者や家族を支えるには何が必要か?とことん深読みしました。

今週の出演者

 

専門家

新田國夫さん(全国在宅療養支援診療所連絡会 会長)
牧野史子さん(介護者支援NPO代表)
飯野 奈津子(NHK解説委員)

 

ゲスト

細川茂樹さん(俳優)
早見優さん(歌手)


小野 アナウンサー

はいかいして列車事故にあった認知症の人の家族に、鉄道会社がおよそ700万円の賠償を求めた裁判というのがありまして。
今年8月に見守りを怠ったなどの理由で家族に賠償を命じる判決が出されました。

早見 さん
24時間ついていられないという気持ちも分かりますし、でも自宅で介護したいという気持ちも分かりますし、難しいですよね。

小野 アナウンサー
こうしたはいかい事故が起こる背景に何があるのか?
徳永アナウンサーのプレゼンです。

プレゼンテーション①

徳永 アナウンサー
取材をもとに、認知症の人の家族がどんな生活を送られているのか、典型例をわかりやすくまとめました。
こちら、深 読蔵さん78歳。
5年ほど前から認知症の症状が出て、最近は家の中をウロウロするようになっていました。

読蔵さんの介護をしている人は2人です。
一緒に住んでいる妻の読子さんは、つきっきり。
そして娘の読恵さんは、働きながらお母さんを手伝っています。
2人は周囲の人には、はずかしくて全然言えなかったんです。
さらに、読蔵さんが物を忘れていくという現実を受け止めきれなくて、いつしか時間が経ってしまった。

そのうちどんどん症状は進行していきます。
認知症の人は、私も経験があるからなんとなく分かるんですが、昔のことより今のことから忘れていくんです。
だから、この家が自宅なのかどうか?ひいては家族の顔、名前などから忘れていってしまいます。
ですから読蔵さんは、朝になると、もう辞めている会社に行こうとしたり、夕方になると生まれ育ったかつての実家に帰ろうとしてしまいます。
私たちは、はいかいと片付けますが、認知症の方にはちゃんと理由があって、外に出たいという意思があるんですね。

あるときのことです。とうとう読蔵さんは外に出てしまいます。
読子さんは、あわてます。「あなた一体どこに行ったの?」
家を探してもいません。一瞬のすきでした。
「どうにか事故とかあってなければいいわね。ケガなんかしていなければいいわ...」

帰ってきた読蔵さん。
ひたいを見るとケガのあと。自転車にぶつかって帰ってきたんだそうです。
こうなってくると、読子さんたちは考えをあらためます。
もう家族だけで見るのはやめて、介護保険を使おう、外に助けを求めようとします。
介護がどれくらい必要か?要介護度といういうのを判定してもらいます。
5段階で数字が高いほどケアがいるということなんですが、結果はこうでした。

5段階のうちでは、一番軽いものになってしまいました。
なぜかというと、要介護度というのは、基本的には自分で食事とか行動ができるか否かというのが一番大きな要素になってくるんです。
ですから認知症の症状も加味されるんですが、基本的に体の自由がきく方は、比較的要介護度が低くなる傾向にあるんです。

ですから、要介護1などというと24時間見てもらうのはやっぱり難しくて。
現実は例えば週3日、日中だけデイサービスで見てもらって、あとは読子さんとか読恵さんが自分の時間を割いて、夜間もつきっきりで見る。
24時間体制で見なきゃいけない日もあり、だんだんと疲労の色が濃くなっていきます。

限界があるので、これを持ってもらうことにしました。
どこにいるかわかるというGPSというのが入った携帯電話を「常に持って歩いてね」と声をかけます。

そして、迷いはしたんですが、「子どもみたいなことしてゴメンね」と、服という服に保護されてもいいように、名前と連絡先を書くようにしました。苦じゅうの選択でした。

つきっきりで見ておこうしたんですが、トイレに立ったそのすきでした。
読蔵さんは、少し目を離すと、やはり出て行ってしまいます。
読子さんは、あわてます。
「たった10分トイレに行っただけなのに、父さんどこへ行ってしまったのかしら?今度は何かあったら困るわ。ケガなんかしていたら、どうしよう」とあせるわけです。

そして帰ってきました。ケガしてない。
でも手には、ほうき。でも、ほうきに何が付いているか?

細川 さん
値札?

早見 さん
万引きしてしまったんですね?

徳永 アナウンサー
わからなくなって、レジを通さずに持って帰ってしまった。
読子さんは、あわててお店のご主人に頭を下げます。
「うちの夫は認知症です。すいません、悪気はなかったんです。どうかゆるしてください」と何度も何度も頭を下げてようやく理解してもらう。
読子さんや読恵さんは、さらに考え方を変えます。

もう玄関から出させないようにしよう。父さんには悪いけどこれを付けよう。こんな人も多くいらっしゃいます。
玄関が開くとセンサーが鳴る仕組みにして、24時間出られないようにしてしまう。
そうすると、今度はこんなことが起きます。
読蔵さんがストレスをためて、大きな声を出したり、時によっては家の中であばれてしまったりとかいうことになります。
何度も言いますが、認知症の方は、意味があって外出したいと思っているんです。
閉じ込められると思うと、ストレスがどんどんたまって、認知症の症状って進むんだそうです、おうおうにして。なので、これも万能ではないと、あわてます。

もう限界だ。施設にあずかってもらおうとします。
いろんな種類の介護施設があるんですが、特別養護老人ホームは個室だったり、グループホームや介護老人保健施設などもあります。
市役所に読子さんや読恵さんは駆け込んで、「なんとか入れてください」と言います。

市役所の返事はこうです。
「すいません、満員です。入所を待っている人が42万人近くおりまして、ちょっと待ってください。長くて10年かかりますね」

「じゃあ、グループホームや介護老人保健施設どうですか?」
「あ、そこはなんとかなりますよ。ただし月10万円ぐらい相場かかりますけどね」
年金が主な収入源になっている読蔵さんの家だとこんなお金はとうてい出せない。
結局家でみざるをえない。認知症の人の半数がいま自宅で家族と一緒に過ごしているというデータもあります。

小野 アナウンサー
あらっ?また読蔵さんいなくなっちゃった。

徳永 アナウンサー
センサーがあるのを見た読蔵さんは、勝手口から出てしまいます。
読子さんはもうあわてます。「ここまでしても出てしまうの?お父さん」
そして電話をかけます、GPS。

でも、持つことを忘れて出てしまっています。
もう探すすべがない。最後の手段で警察に捜索願を出します。

3時間後に連絡が来ました。
意外な場所で見つかります。線路の上です。
電車は止まり、間一髪で命が助かったものの、家族はもう気力もヘトヘト。
こういうケースは決してめずらしくありません。

実はこのような実態は、ほとんど調べられることが去年まではありませんでした。
警察庁が去年初めてまとめました。
認知症やその疑いがある方で、去年1年間、捜索願が出た行方不明の方だけで、9300人を超えています。
去年1年間で、死亡が確認された方は359人にのぼります。
この方々も不幸ですが、その数以上に困っているご家族もいらっしゃる。
こういう実態があると。こういうわけなんですね。

早見 さん
認知症の方が意味あって外出したいとか、そういうことをちょっと知らなかったなと反省してしまいます。
もちろん健康な人間なので、出かけたい、閉じ込められたくないという気持ちは当たり前ですものね。

小野 アナウンサー
この深さん家はもうちょっと早く周りの人に打ちあけて、助けてもらうとかできなかったのかな?という感じもするんです。
牧野さんは、介護する家族の側の支援をしていらっしゃいますが、家族にとっては、他の人を頼るのは難しいのでしょうか?

牧野 さん
基本的には、日本では家族がやって当然という考え方があるんですね。
それから認知症の初期の場合には特に、「我が家のことは我が家で」というふうに隠してしまいたいという思いが働いてしまいます。
愛情が深くて、まじめな人ほど自分でがんばりたいと思ってしまう。あるいはご本人が、他人が入ることを嫌がったり、デイサービスに行くのを嫌がったりして、ついついサービスを使う時期が遅くなってしまうということが。

細川 さん
どんどん家の中に閉じ込める感じになっていくんですね?
それが本人のストレスになっていっているんですね。

小野 アナウンサー
抱え込む側のつらさについては、今回たくさん声を寄せていただきました。 ご紹介いたします。家族の声です。
北海道・50代・女性
「居眠りもできず、朝晩の逆転生活で大変。油断できない」
奈良県・60代・男性
「はいかいが一番の難題。出かける意思はあっても戻る認識がなく、いくら諭しても聞く耳を持たない」
静岡県・30代・女性
「はいかいは時間的な拘束が大きく大変。体もがっちりしているので介護側が体力を使う」

認知症の介護が大変なのは、制度に問題があるような気がしますが、新田さんは、どうお考えですか?

新田 さん
もともと介護保険というのは、いわゆる脳卒中とか身体介護を主体としてできたものなんですね。
その頃、認知症ってまだ20数年前ですから、それほどの問題ではなくて。むしろ脳卒中介護が重大になって。
脳卒中というのは、リハビリを主体とするとか点と点の介護でなんとかなる介護だったわけですね。
その頃から、認知症というのは非常に要介護が低く判定されたんですね。なぜかというと身体は歩けるわけですから。そのところが介護保険では反映できなかった。
しかし、プレゼンでの家族の話もそうだけれども、認知症というのは線の介護が必要なんですよね。点ではなくて、ずっと見守りもふくめて。
そのことに対しては、介護保険というのはあまり有効ではない。

飯野 解説委員
やっぱり介護保険って、家族が介護することを前提に作られた制度なので。
いま本当に家族の形態が変わってきていますよね。

高齢者のいる世帯の中でどんな世帯が多いか?
ひとり暮らしの方だとか、夫婦だけだとか、親とあと未婚の子どもということで。
家族そのものがいない方もいらっしゃいますし。
家族がいても高齢だったり、未婚の子どもが働いていたりということで。
家族の介護力も低下しているのに、介護保険がこういう世帯の家族の変化に追いついていないので、いま対応できなくなっているという問題もあると思うんです。

細川 さん
待機児童問題ってありますけど、"待機介護"問題ですよね?

視聴者の声

30代・女性
「あっという間にいなくなる。ずっと見ているわけにもいかず、責められても困るし、縛りつけるわけにもいかない。カギの開け方はよく分かっていたり、予測不可能なときがある」

60代・男性
「母が動けなくなり病院のベッドに横になったときは、かわいそうというよりもほっとした」

早見 さん
家族も「外の人に恥ずかしいから言いたくない」なんておっしゃっていましたけど。言えないから、よけいまたストレスがたまっていく。
解決策がすぐなくても話せる場所があると、少しはなんか改善されるのかな、なんて思うんですけど。

細川 さん
認知症というのは治るんですか?

新田 さん
はい。認知症は基本的には治りませんね。
ただし、はいかいという言葉を使いますが、行動障害が起こる場合、それは治るんですね。
ただ病態によります。ケアの質によってですね。ここは居心地がいいとか、安心するとか、となるとはいかいは、なくなることも多いと。
だから、いかに家族もふくめて、みんなで安心する場所を作ってあげるか。

飯野 解説委員
早くわかると、いま進行を遅らせる薬もあるので、症状の進行をおさえることもできるし。
早く分かって専門家の方たちに入ってもらって、どういうケアをしたらいいのかとか、どういう話の仕方をすればいいのかとか、そういうことを学べば、本人の混乱をなくすことができるので、あんまり症状が進行しなくてもすむということですよね。

認知症ってやっぱり本当に思い込みだとか誤解が多いんじゃないか?と思います。
認知症になると、何もわからなくなるだとか、何もできなくなるって、たぶん思い込んでいる方がすごく多いんじゃないかと思う。
だから自分はどうしてもなりたくないから、なんか物忘れ始まって、おかしいなと思っても、病院に行くの嫌だ。この病気怖いから自分避けたいと思うと、言えなかったりとか。
ご家族が恥ずかしいから言えないというのも。
あと、特別な病気だと思っている方も大変多いと思うんだけれども。
いま高齢者の4人に1人は認知症か、もしくはその予備軍ということなので。本当に一般的にだれでも起こりうる病気です。
また、どんどん悪くなっちゃうんじゃないか?という点でも、早い段階からきちっとケアを受けたり、お医者さんの薬をいただいたりすると、そういうことでもないんだよ、ということを、きちっとお伝えしないといけないなと思います。

新田 さん
十数年前は認知症を早期発見しても、何も対応ができなかったんですね。われわれ医師も。
いま対応する薬が出てきたので、なんとか少し遅くするとか、そういうことができるし。
あとケアも発展しています。

早見 さん
私がすごく印象に残っているのは、アメリカの元大統領のレーガンの「いま僕は人生の夕暮れ時に近づいてきた」という手紙。
ご本人もわかっているんですか?

飯野 解説委員
日時がわからなくなるとか、曜日がわからなくなるということが、一番自分がつらくて、やっぱり不安になっちゃいますよね。
ご本人が今いろんなことを語り始めているんですけど。
やっぱりつらい、自分がどうなるかわからないということで一番不安なときに、周りから「なんでできないの?」と言われちゃうと、よけいにこうやって自信をなくしてしまって。

視聴者の声

60代・女性
「家族だけに責任を持たせるのは絶対、納得いきません。万能ではないのですから、隙はあるのが当然です。介護する人が一生懸命やったうえでの不可抗力な事故なら、社会も責任を負うべきだと思います」

飯野 解説委員
冒頭にご紹介のあった裁判のケースです。

愛知県内の当時91歳だった認知症の男性が家から出て、列車にはねられて。列車が遅れると振替輸送とかをするので、鉄道会社は損害賠償の請求をしたと。
今年8月に名古屋地裁の判決があったんですけれども、このおじいちゃんが前に、はいかいをしたことがあったと。そういうことがあったんだから、家族は出て行くことも予見できたはずなのに対策を怠ったということで、家族に防止策を怠った責任があるということで、賠償が認められてしまったんですね。
この裁判はまだ続いて、次の控訴審があるんですけれども。
ただ介護の現場の方たちは「家族がずっと見ていろと言われてもなかなか難しいよね。こんなこと難しいじゃない。もし、こういうことをやれと言うんだったら、閉じ込めてカギをかけるとか、そんなことしかなくなっちゃうから。それはどうなのよ?」という声が出てきているということですよね。

牧野 さん
特に認知症の初期の場合は、時に物忘れがひどかったりすることもあったり。
あるいは、たまに来る親類の前とか、よその人が来たら、シャンとなさって、おこづかいを兄弟にあげたりとか。
そうすると、周りの人たちは「お母さん元気じゃないの」というふうに言ってしまう。
でも現実は一番近くにいる家族に、つらくあたるのが認知症なんですよね。
そうすると家族のほうは、わかってもらえないんだという気持ちが強くなります。
そうすると、ますます「もう自分だけでやろう」と言って閉じてしまう。
非常に孤立感が高いんですね。

細川 さん
介護している家族が参っちゃいますね。

牧野 さん
そうです。うつになる可能性も非常に高いんですね。
普通の介護よりも認知症の介護のほうがストレスが高いですし。身体をこわしているご家族もたくさんいらっしゃいます。

新田 さん
いまの時期に僕は重要な判決が出たと思いますね。ある意味でみんなが課題にしないといけないものを知らしめてくれたと思うんです。
民法上はこういう判決というのは、だれかの責任になる。
この家族も介護した人に責任持つわけですからね。そうすると、だれも介護しなくなりますよね?
それから、もうひとつは、それこそ認知症の人を本当に閉じ込めるしかない。施設でも同じですよね。その人にとっての最適な居場所ということを探す場合に。
例えばさっきのグループホームとかいろいろあるけど、いろんな場所を探さなきゃいけないときに、家族だけに負担を負う。
こういう判決は、ある意味、私たちに重要な認識をさせてくれたと思います。

小野 アナウンサー
もうひとつプレゼンをご覧いただいてから、議論を続けます。徳永アナウンサーです。


プレゼンテーション②

徳永 アナウンサー
地方の都市は、家族だけではなくて、いざというときは、社会みんなで動こうと。実はもう100以上の自治体が動いています。
そういう自治体が、まず勉強に行くという町があるんです。福岡県の大牟田市です。

小野 アナウンサー
安心して徘徊(はいかい)できる町?

こうパンフレットにも書いてある。これぐらい意識を変えようと。
はいかいはあるものとして、いざというときは、みんなで助けようじゃないかというのを10年以上やっているところです。

例えば1人の方が、はいかいで出てしまったとします。

そうすると何が起きるかというと、当然家族は捜索願を出しますね。
捜索願を出すと普通は警察に情報がいって、市役所などから防災無線などを使って呼びかけますよね。
これは普通かもしれません。でも、大牟田はこんなものじゃ終わりません。

まず情報が一気にこういうところに流れます。
駅やバス・タクシー、商店・企業、郵便局。こういった仕事の人の共通点があります。
お仕事で町中を動きます。よく見ています。

こうしたファックスが送られます。
サンプルなのですが、名前、年齢、性別、出かけたときの服装、身体の背たけはどれくらい、はいかい歴はどれくらい、かかりつけ医はどこ、こういうのが流れます。
このような人を見つけたら連絡してくださいと。

まだあります。実は市役所からはもっと多くの人に情報がいきます。
あらかじめ、なんと4000人近い人がメール登録しておくんです。
いまの情報をメールでいっせいに流します。
4000人の中には、会社勤めの人もいれば、工場の人もいるし、女子高生や中学生だって、主婦もいます。だれかが見つけるかもしれません。

みんなで1人を探そうじゃないかという仕組みなんです。
名前が付いていまして。『徘徊SOSネットワーク』
これ機能しているんですね。
大牟田のすごいところは。去年1年で保護された方は22人。
1年間で22人の人が助かっているということです。

ここのすごいところは、仕組みを作っておしまい、じゃ終わらないんです。
訓練をします。
今年は市民なんと2000人の方が参加します。
どういう訓練か?

市民のある方にお願いして、はいかい者役になってもらいます。本当に市内のどこかを歩いてもらいます。
その人の情報を同じネットワークのシステムを使ってやってみて、何分見つけられるか?
今年の場合は、1時間45分で見つけることに成功しています。
視察がいっぱい来ているそうです。

さらにこの訓練、もうひとつあって。『声かけ訓練』というのをします。
何度も申しあげているとおり、はいかいされている方は、意味があって外出してしようとしている。あまりつらくあたるとプライドが傷つけられて、ストレスがたまって、一緒に行こうと言ってもついて来てもらえません。
効果的に保護できる声かけのテクニックというのが、専門家の方に聞くと、あるんだそうです。

市はそれを10いくつまとめているんですが、主なものを3つここでご紹介します。
「目線を合わせてしゃべる」
「まずは、あいさつから」これが大事なんだそうで。
あせると「どこ行こうとしているの?」とか、大きい声をかけたり、「見つけた!」というのはダメです。
あくまで人格を尊重して。目をちゃんと合わせて、驚かせずに、おだやかなあいさつ。
そして「できることなら慣れた地元の言葉をかけましょう」

こうした訓練は、結果が出ていまして。
ここにいる方、セーラー服着ているでしょ?
女子中学生が声をかけたことで、はいかい中の方を無事保護に成功したケースも出てきているんです。

早見 さん
これから高齢者社会になっていくので、こういうマニュアルがあってもいいですよね。

小野 アナウンサー
大牟田市がとてもいい町だということは、わかったんですが。他の町でもできるものなんですか?

早見 さん
例えば東京ではどうなんでしょう?

細川 さん
正直、やっぱり都市部ではなかなか難しいと思うんですよ。

飯野 解説委員
大牟田市の人口は約10万人ですね。本当に人があんまり東京みたいにいないんですけれども。
でも大牟田の方たちに聞くと「東京のほうが目はたくさんあるよね」
例えばコンビニがあったりとか。情報がちゃんと伝わって多くの人たちに正しい知識が広がれば、見つけてくださる人たちがたくさんいるわけだから。
「都会のほうがこれやりやすいんじゃないの?」という声もありますね。

早見 さん
ひとついいなと思ったのは、これだけ町全体が意識をすると、例えば介護をしている人たちも、外に相談をすることが恥ずかしくなくなるかもしれませんね。
みんなの意識が変わりますもんね。

新田 さん
私は東京都の国立市なんですけど、去年『認知症の日』というのを作ったんです。
最初『認知症の日』ってちょっと抵抗があったんだけど。認知症と言える町に、自分で。という意味なんですね。堂々と言おうと。
ちょうど7万8000人なので。10万規模というのは、東京でも新宿でも10万規模になって。
そういう中で作っていくというのは、けっこう可能なんですね。

飯野 解説委員
大牟田では、はいかい訓練をしている。ネットワークがあるだけでなくて、こういう訓練をすることで、いろんな人たちに勉強してもらっているんですね。
例えば小中学校に認知症の人、本人が行って、自分の思いを伝えたりとか、自分が苦しいこととか、やりたいこととかをお話をすると。
子どもたちは認知症って何もわからないかもしれないと思ったけれど、やりたいこともあって、みんなこんな思いでいるんだ。じゃあ、それだったら、いつでも声かけてあげようという雰囲気になっていく。
こういう取り組みって見つけるだけじゃなくて、意識を広めていくということも重要ですし。そういう意味では、とても大事な取り組みだなあと思うんですよね。

いま『認知症サポーター』と言って、これオレンジリングと言うんですけど。
各地で認知症のことを勉強してもらった市民に、この輪を。認知症応援しているよという印にしているんですけれども。
いま440万人ぐらいの人たちがこのリングを持っているんです。
こういうのを例えばお店の人たちが着けてくれていると、お買い物に行ったときも、家族も安心して、この人たちはみんな認知症のことをわかってくれているんだなという安心にもつながるし。
みんな支えているよというメッセージにもなるのでね。こういう取り組みを広げていけば。

牧野 さん
ご家族が勇気を持って、町会にご自分の認知症の介護のお話をしましたら、その町会で、毎月サロンを開いてくれるようになったんです。
そうすると、一緒にお散歩するときに町の皆さんが声をかけてくれたり。それから、車で病院に近所の人が連れて行ってくれる、そういう手助けをしてくださったり。皆さんの協力が得られるようになったということも聞きますので。
けっこう介護を経験していらっしゃる方は、身近にたくさんいらっしゃるので、ちょっと声を出してみたり、ちょっとクリーニング屋の方に「実はね」とお話をしておくとか。
自然に気楽にお話を勇気を持ってしていただきたいなあと思います。

細川 さん
話してみればね、そりゃストレスもだいぶ緩和しますもんねえ。

新田 さん
この前、「認知症の日」に小学生に歌を歌ってもらったんですよ。で、歌を歌う前に認知症のサポーターの講座を作った。
皆さんこれがカッコ良くてですね。「いいね」と言って喜んで非常に受け入れられましたね、子どもたちに。だから子どもたちもすんなり受け入れると思いますよ。

飯野 解説委員
国もようやくいま制度を始めていまして。本年度からなんですけれども、オレンジプランというプランで。

これなにをするかというと、初期の対応がとても大事だと。
認知症の方って、なかなか病院に行かないこともあるので。
なにかおかしいなあ?と思って相談をしたら、専門家が自宅に来てくれて。
暮らしの様子を見てくれて、認知症かどうかということを判断してくれて、支援をしてくれる。
もし認知症の場合には「お医者さんに行ったほうがいいよ」とか「こういう接し方がいいよ」とか「混乱しないように家の中をこういうふうにしたらいいよ」とか言ってもらうとか。

新田 さん
こういうチームをいま作っているんですけれども。
社会福祉士と保健師と医師とで作って。情報をキャッチしたら行って「今こういうことですね」と見て。家の環境を見て。家族の皆さんを見て。じゃあ、こういうふうに対応しましょうって。
そうすることによって、次のステップ、はいかいとかをなるべく早く防ぐという。

牧野 さん
いま国が進めていることのひとつに、オランダで非常に広く普及された『認知症カフェ』というのがあります。
日本でも大分これは進んできているんですが。認知症カフェという名前ではなくても、先ほどのオレンジがテーマカラーなので『オレンジカフェ』だとか、あと町の名前を使った『渋谷カフェ』だとか、そういう形で広がってきているんですね。
それはご本人も初期のときに「デイサービスには行きたくないけれど、こういうカフェだったら行っていいかな」。
「ちょっとお母さん、カフェにコーヒー飲みに行かない?」という誘いのもとで行きます。
そして家族もここで相談できる。そうすると新田先生のような方がここにいらっしゃるんですよ。
病院に申し込んだら、3ヶ月もかかるところにコーヒー飲んで、タダで先生に相談できるという。そういう平場の場所なんですね。
ぜひ、こういうところに気楽に連れて行っていただきたいし。このカフェがいっぱい日本中に広がってくれたらいいなと。

細川 さん
多分すごい勢いで認知症の方って増えているはずですよね?だとすれば、やっぱりケアに回るほうもちゃんと考えていくことが大事ですよね。

早見 さん
ケアによって改善されるのなら、そのケアのハウツーみたいなものを教えていただきたいですね。

飯野 解説委員
ちょっとひとつだけポイントを言いたいのですけれども。

認知症の人ってさっき言ったように、自分がわからなくなることをすごく苦しんでいらっしゃって。みんなが「あなた、なにもわからない」と言われることを、すごく自尊心を傷つけられているんですね。
だから人としてちゃんと接するということが大事で。
きちっと目を見て、話をするということを。その人をちゃんと認めていますよ、ということなので。同じ目の高さで、正面から、本当に近くから心を込めてといいますかね。見つめることですとか、やさしい言葉で話しかける。なにもわからないと思っているかもしれないけれど、ていねいにゆっくりと話をすれば、理解できることはたくさんあるんですね。
そういうことも、なにもわからないって偏見が一番怖いので。
その人たちのことを良く知って。その人たちの思いに寄りそった対応をしていくということが、すごく大事だということが。ぜひお伝えしたいなと思うんですよね。

新田 さん
新しい介護保険の枠内に、すべてのインフォーマルもふくめてちゃんときちんとしましょう、地域をちゃんと作りましょうよという。

「地域包括」といわれる概念、難しいんですけど。そういう概念じゃないと、とても難しいよねと。
医療側としては、かかりつけの先生が実は最初から最後までみるんですよね。
普通に外来に通われて、糖尿病とか高血圧とか、その人がだんだん認知症になっていきますよね。
そうしたら途中は専門医のことも聞きながら。途中でまた専門医とかかりつけ医。
最後はもし、それでだんだん身体能力が落ちてきました。それもやっぱり今度は、かかりつけ医がみると。そんなようなことがおそらく要求されると思います。
いまそれをなんとかしようというのが、国とかわれわれの役割だと思いますけど。

小野 アナウンサー
きょうはここまでです。ありがとうございました。


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