2014年05月17日放送放送内容まるわかり!

新たな“労働時間制度” あなたの給料は?働き方は?

先月、政府は新たな「労働時間制度」についての検討を始めました。仕事の報酬を「労働時間」ではなく「成果」によって決めることで、自由な時間に働けるようになり、子育てや介護などの事情に合わせた「多様な働き方」ができるようになるというのです。しかしこの制度には「"残業代なし"の長時間労働につながる」との不安の声も。 仕事を"成果"で評価することはできるの?長時間労働は減らせるの?これからの「新しい働き方」について、深読みします。

今週の出演者

専門家

八代 尚宏さん(国際基督教大学教養学部 客員教授)
今野 晴貴さん(NPO法人 POSSE代表)
竹田 忠(NHK解説委員)

 

ゲスト

林家正蔵さん(落語家)
宮崎美子さん(女優)


小野 アナウンサー
お給料が成果で決められるって、どういうことなのか?
中山アナウンサーのプレゼンです。

中山 アナウンサー
このお話、アベノミクスの成長戦略に関係していることなんです。
日本って今、労働人口が減っています。
ですので、経済を成長させるために若い人、お年寄り、女性に外国人にも、もっと働いてもらおうと働きやすい仕組みづくりを進めてきました。

そして今、企業に対しては、新たな"労働時間制度"を導入してもらおうと議論を進めているところなんです。
給料を成果に応じて支払うと働きやすくなる仕組み、ということなんですが、一体どういうことなのか?
政府の会議の資料をもとにご説明していきます。
まだ、どういう方が対象になるのかというのは、具体的に決まっているわけではないのですけれども。

今回分かりやすく、電機メーカーに勤務するサラリーマン、深 読太郎さんのケースで見ていきます。
今の働き方はこうなっています。

会社に出社しますと、タイムカード。すると基本給が。

この会社では、9時から18時までが定時の勤務。
その間、働けばもらえるお金です。

定時を越えて働くと、出ました残業代です。
働く時間は、労働基準法で決まっています。1日8時間、週に40時間まで。
残業は、会社と労働者側の話し合いで上限を決めるということになっているんですが、その残業時間、一般的どれぐらいか?この読太郎さんのような一般職・男性40代の方ですと平均、月に25時間。
もらえる残業代はどれぐらいか?というと、基本給30万円の場合は、6万円ほど。

宮崎 さん
大きいですね。

中山 アナウンサー
お給料全体のおよそ2割を占めているわけなんですね。

残業代、読太郎さんにとっても家の収入の中でとても大きなものなんです。

奥様は専業主婦。そして、お子さんの養育費や介護のお金などもあると、もう本当に家計には残業代が必要なものなんです。
サラリーマンの方に聞いてもですね、幼いお子さんを2人育てているという奥さんが専業主婦の方なんかは「もう残業代がなかったら、ウチの家計はアウトです」ということをおっしゃっていたり。
若い独身の男性の方も基本給が少なくて「残業代がなかったら、暮らしていけません」というようなことをおっしゃっている方もいました。
読太郎さんはこの日も遅くまで働いたわけです。その会社を見ると、こんな方々もいるんですね。

ダラダラと働いている方。そして、モチベーションがずいぶんと低いながらも、さらに残りながら働いている人。
読太郎さんからすれば、これ非常に不公平。
こういう方々にも同じように残業代が出ている。
会社からしてみれば、これは非常に効率の悪い働き方だと。業績に響いてしまうかもしれない。
だから、こうした問題を解決しようということで、これですね。

新たな労働時間制度となったわけなんです。
給料が時間の働いた長さではなく、基本は成果に応じて支払われるということですね。

となると、これは、もういらない。

代わりに上司の方と目標を設定して、それが実現できたかどうか。それで決まっていくわけですね。

宮崎 さん
いや~、大変これ。

中山 アナウンサー
読太郎さんは目標が決まりました。
「よし、読太郎くん。新商品の企画五つ出してもらおう」「その一つを商品化してもらおう」となるわけです。
それが実現できれば、そのお約束どおりお給料を。

これだから、いわば"成果給"。

これまでの長く働けば働くほどもらえていた残業代は...。

定時の時間働いていたらもらえていたという基本給は...。

小野 アナウンサー
基本給もなくなる?

中山 アナウンサー
代わりにこれ、成果給。分かりやすくしていますけれども。成果給になるということなんです。
そうなると読太郎さんは、企画を一生懸命考えます。企画を五つ提出しました。
すると上司の方は「おっ。いいね、その企画。一つ商品化しよう」となる。
すると見事、目標が達成されるわけでございます。
さらに、読太郎さんは頑張るんですね。新しい企画も出しちゃおう。出しました。
すると「おっ、それもいいね。商品化だ」。
そうなると、またまた頑張る読太郎さん。企画をまた出した。

すると「おっ、えらい。よし、商品化だー」
成果が増えれば増えるほど、給料も上がっていくと。

こうなると社員の方は、ヤル気が上がると。
頑張る読太郎さんを見たこうした方々も一生懸命頑張るようになって。

効率良く働いて生産性が上がり、会社の売り上げもアップする。

正蔵 さん
ちょっと質問です。
もしですね。その目標を出して、それができなかった場合は、全くもらえないんですか?

小野 アナウンサー
そこですよね。そんなに上手くいくのかどうか?
きょうは、新労働時間制度に対して賛成の専門家と反対の専門家、両方のお立場の方にお越しいただいております。
反対のお立場なのが、若者の労働相談に取り組んでいる今野晴貴さん。
そして、賛成のお立場は労働経済学者の八代尚宏さんです。

八代 さん
そういう極端なことはあり得ないわけで。
基本的に労働者の給料というのは、基本給があって。それから成果部分がそれに乗るわけですし。
こういうやり方をすでに実行していたことがあるんですよね。
2000年代に電機労連というシステムエンジニアとかプログラマーがメインの労働者ですよね。
こういうところは、労働時間がすごい不規則なんです。
ですからそこではまず、今までもらっていた残業代をひとつの定額に替えると。まあ、会社によって違いますけど。
大体、年収の3割ぐらいを残業をしてもしなくても、もらえるというかたちで導入したわけです。
これは逆に労働時間を短くするために導入したんです。
つまり忙しいときは、どんどん残業しなければいけないけれど。
そうでないときは、自分で休める。休んでも損をしないと。
ただこれは「違法だ」と言って、つぶされたんですね。労働省によって。
つまりせっかく労使が考えて、労働者のために作った組合主導であった仕組みをつぶしてしまったというのが、非常に問題なわけです。
これが実現していたら、今もっと建設的な議論ができていたと。

正蔵 さん
なんでそれは、つぶされてしまったんですか?

八代 さん
つまり今の法律には、そういうことは想定していないと。
働いた時間に応じて残業代を出さなきゃいけないという非常に硬直的な考え方ですね。

今野 さん
現実には、いっぱい弊害があってですね。
そもそも成果と言ったときに、誰がどうやってはかるのか?
まず、目標はどう設定されて、その目標がどれだけ達成したのかということが、どう評価されるのかが問題なわけですよね。
さっきの話でいくと、評価されて、またもっと頑張るともっと評価されて。
でも逆に企画を三つ最初から通さないとダメだと。
今度なったらどうなるのか?そこまでやらないと、あなたもう最低限をクリアしていないんですよと。
いや、むしろ五個、六個だと。それいかなければ常に評価しないよと。こういう話になってしまったらどうか?
これは実は仮定の話ではなくて。私が受けている労働相談だと毎日のようにそういうような方がですね、すでにいらっしゃるわけです。
すでにそういう働かせ方はいろんなところで行われていて。
特にブラック企業というのは、それ常とう手段にしているんですね。厳密に言うと違法なことが多いんですけれども。
例えば、管理監督者という制度があるんですね。管理監督者というのはなにか?
「あなたはもう会社の幹部です」と。「幹部だから残業代は出ません。つまり経営者と同じように、もう自己責任で働いてください」。こういう働かせ方があるんですね。
これを例えば、ブラック企業では、店舗の店長に適用する。
「あなたはこの店舗の店長として、会社の幹部として、とにかく売り上げを上げてください。売り上げが上がらなかったら、あなたはまったく成果が評価されませんよ」と。
だけれども、どのぐらい売り上げを上げなければいけないのか?絶対無理だというような条件を突きつけられてしまうと。
とにかくサービス残業をひたすらするしかない。
最近来た相談なんかにも、こういうのがあるんです。
突然、一店舗の店長だったのを「もう二店舗やれと。二店舗を絶対成果だせ」と。
これで、できなければいけない。これ180時間残業する。
80時間を超えて残業をしてしまうと、身体をこわす危険がある。死んでしまう場合もある。
これ、厚生労働省が言っているんですね。
ところが「あなたのノルマは二店舗回すことだ」。こういうふうに設定されてしまうと、これは、もう死ぬほど残業しなくてはいけない。
こういうのは世の中にいっぱいあるんですね。挙げていくとキリがないんですけど。

正蔵 さん
自らの目標ではなくて、会社側から、そんなのできないよ、というようなことを押しつけられるということになるわけですよね?

八代 さん
今野さんはブラック企業を専門にしておられるから、そういう人ばっかり来るわけですけど。
世の中には、まともな企業もたくさんあるわけですよね。
今のようなケースは、組合があれば組合とちゃんと会社が相談しまして。
それがなくたって、基準監督署がちゃんとチェックしているはずなんです。
だから、問題はブラック企業がそんなに多いということは、基準監督署の怠慢であってですね。
ちゃんと今の法律を守らせる義務があるわけです。

小野 アナウンサー
新労働時間制度では、みんな残業代なくなってしまうんですか?

竹田 解説委員
もし、これが入るとしたら、どういう人が対象の可能性があるのかというと。
これ大変みんな興味、関心のあるところだと思うんですけれども。
これを話している新たな労働時間制度って、非常にちょっと分かりにくいタイトルでしょう?

これ実は、これまで何度も話してきたものなんです。
これは、ホワイトカラー・エグゼンプションといわれる。アメリカでおこなわれている制度でして。
ホワイトカラー、つまり事務職のうち一定条件の人は、労働時間の規制からエグゼンプション、適応除外しましょうという制度なんですね。
これ安倍政権にとっては、入れることが念願のようなもので。
第1次安倍政権、7年前のときにもこれを入れようとして、すごい反対にあって断念をして。

宮崎 さん
聞いたことありますね、この言葉。

竹田 解説委員
去年も第2次安倍政権になってから、国家戦略特区と呼ばれる総理肝いりの仕組みの中で入れようとしたんですけど。
これもやはり反対が強いので議論を断念して。今回は3度目のチャレンジのようなものですね。
ホワイトカラー・エグゼンプションは、今まで何度も話してきたんですけど、基本的にはこちらのタイプだったんですね。
高収入型。例えば年収が1000万円以上だったり、高度な技術を持っている人。
例えばデザイナーとか、弁護士資格を持って会社の法務部で働いている人。
そういったような人たちが、主にまず入る対象となる。
労働時間の規制からはずれて、要するに成果給になるということですね。

宮崎 さん
これだったらもういいんじゃないかな?と一般的には思いますよね。

正蔵 さん
そうですよねえ。

竹田 解説委員
ところが、今回はもう一案、付け加わったんです。こちらなんです。

こちらの案が付け加わりまして。
こちらもう一言で言いますと。年収要件が入っていませんので、もしこれが入ったとしたら、今までの人よりも適応対象がかなり広がる可能性がある。
ただ歯止めとしては、本人の同意はもちろんですけれども、労使の合意が必要であると。
つまり組合もちゃんと同意していないとダメですよ、ということで。歯止めは掛かっているんですけれども。
厚生労働省などに言わせますと、どうしても労使の関係でいくと、いくら労使の組合側の同意が前提といっても。
労使の関係でいけば、使用者側が、つまり経営者側の立場のほうがどうしても強くなりがちなので、どこまで本人の意向とか、組合の同意というのが、どこまで本当に配慮されるのか?というのが大変不透明なところがあると。
あくまで労使の合意なので、当面はやはりキチッと組合側があって、というようなところが対象になってくるので。

今野 さん
二つ補足することがあるんですが。
一つは、もうすでに労使の合意ということを条件にして、いろいろ労働法を規制緩和するということは、いろんな場面でおこなわれているんですけれども。
過労死をしてもおかしくないような労働時間を労使合意で仕方ないと、認めてしまっている企業すごく多いんですね。
中には80時間が過労死ラインなのに、200時間も300時間も認めてしまっているという大企業あるぐらいなんです。
そのぐらい労使合意というのは、もう内実がないわけです。
ですから、大体どんなことでも通ってしまうというふうに。これはもう、ずっとそうなんです。
だから、それをはさめば大丈夫ですよと言うのは、かなり非現実的。

八代 さん
労使合意だけで決めるのではなくて、国が対象者の範囲の目安を示すわけです。
だから、国が当然チェックするわけです。
だから、今野さんが対応しているブラック企業のような例えば外食産業とか、そういうところで働いている人は、基本的にお客サービスですから自分の裁量で労働時間は決められないわけですよね。
そういう人は、基本的に対象外になるんです。

今野 さん
非常に問題なのは、今回、具体例として挙げられているのは、営業職なんですね。
営業職というのは、ものすごく幅広くて。かつ今でも非常に長時間残業が問題になっている。
最近来ている労働相談では、営業ノルマがあって、それを達成するために何時まで働いていてもいいよという仕組みになっている。全然、残業代出ないわけです。
そうすると、みんな必死になって営業成績上げようと思って、帰らない。
他の人ももっと他の人より成績上げたいから、結局、エンドレスでみんな競争している。
これは今までだったら違法なんですよ。
残業代出しなさいと言えば、労基署が動けるんですね。
ところが今度の法律が通ってしまうと、労基署がそれを取り締まれなくなるわけです。

八代 さん
いや、それはまったく間違いで。
国が示す労働時間の制限というのを前提にしている。
それがないと、おっしゃったようなことになるわけです。

小野 アナウンサー
成果が誰でもあげられるとは限らない。
そういう人はどうするんだ?というご指摘については?

八代 さん
だからこそ労働時間の上限を決めることが大事なんですよね。
今の日本の労働法では、労働時間の規制というのはないんです。
残業手当を払えという規制しかないんですよ。それが問題なんです。
それは今野さんと同じ意見でですね。
だからこそ、グローバル・スタンダードである労働時間の上限を決める。

小野 アナウンサー

現在ある労働時間の規制は、法定労働時間は1日8時間(週40時間)までと決まっているけれども?

竹田 解説委員

要するに36協定というのを労使の間で結びますと、これを越えて働けるんです。
問題なのは、この36協定でどこまで結べるのか?というところ。
これは結局、結果的に事実上、青天井なんですよ。

八代 さん
ですから、それを変えるのが今回の法律の役割なわけで。
まず今までもらっていた時間に比例した残業代の代わりに当然、定額残業代は出るわけです。
これは電機労連もそうしています。つまり管理職と同じなんですね。管理職手当というのが出ますから。
それが、だから年収の3割近いものを。

今野 さん
まさにそれはブラック企業の手口で。
「あなたは30時間分の残業手当がありますよ」と言って、それを基本給にふくめて。
そして、そもそも基本給が30時間、あるいは50時間、ひどいときでは100時間残業をして、初めて基本給で「18万円ですよ」とか。

八代 さん
それは、違法なんです。

今野 さん
いえ、違法ではないです。合法なんです。
出ている話というのは、残業代は一切払わないようにすると。
その代わりに、上限規制もうけると言っているんですが、関係なくて。
残業代は出たうえで、上限規制も必要なんですよ。ふつうに考えると。
さらに言うと、上限規制さえしていればサービス残業の問題生じないとみんな言うんだけれど。
今、すでにサービス残業というのは、刑事罰付きで違法なんです。
これが全然守られていないわけなんですよね。
そもそも刑事罰だけで国家が社会全体を統制していくというのは、これはかなり難しいことなんです。
そういうときに、労働時間を規制する武器になにがなっているかというと、残業代だけなんです。
これは、国が無理やり払わせるというかたちではなくて、自分で最後に辞めるときとかに請求できるんですね。
これがものすごく今、重要な規制の方法になっていて。
仮に残業代の請求ができなくて、その代り国が取り締まりますよと言っても、国がろくに取り締まらない。
もうちょっと強化したとしても、多分ほとんど防げないです。
そんな状況のままでは、残業代すら結局請求できないというふうになってしまうだけなんじゃないか?

八代 さん
今すでにこういう問題があるんですよね。今野さんが言われたように。
だから、この報告書でもまず第一に書いてあるのは、キチッとした監督行政をやれということを言っているわけで。
その前提でこういう改革をやるわけなんですね。
だから、ブラック企業がいるから改革しちゃいけないというのは、全然これは議論がすれ違っているわけでありましてね。
まず、今も変えなければいけない。で、我々はちゃんとそういう基準監督署を強化する案があるわけですよ。
それはなぜかというと、監督官を増やすのが一番大事なんですよね。
だけど、公務員はそう簡単に増やせない。だったら、スクラップ・アンド・ビルドでですね。
例えば、ハローワークというような職業紹介。これは、国家公務員が窓口業務をやっているんですよね。
こんなことは民間で十分できるんです。
問題は、労働警察である基準監督署は公務員でしかできない。
公務員にしかできない仕事にもっと集中して人材をしましょうと。こういう提案もしているわけなんです。

正蔵 さん
ちょっと基本的に立ち戻りたいんですけれども。
結局、成果給になった場合、成果が上げられないと給料が上がったり、上がらなかったりするんですか?

八代 さん
プロフェッショナルな人はですね。当然、成果給で働くわけですよね。
サラリーマンだって、これからはやっぱり指揮命令に従って働く。
工場労働者の人たちなどは今までどおり、キチッと残業代を払う仕組みのままでいる。
ただ管理職ではないけれども、自分の判断で働くプロフェッショナル的なサラリーマンはまさに成果で働くということが、はるかに合理的なんですよね。

今野 さん
そうですね。私も含めて多くの専門家のあいだでも、これどこまで広がるのか?全然見えませんよ。 ということが非常に大きな懸念になっているんですね。
さらに言うと。仮にそれがプロフェッショナルのところにある程度、限定されたとしても。
そういう業界では労働時間、日本長いわけですよ。今回の政府の審議会の議論でも出ているように。
今回こういう規制をはずせば。つまり、さっきから出ている業績設定とかノルマみたいなものが、上手く会社とのあいだで話し合われて、それさえクリアしたらすぐ帰れるよと。
つまり、ワーク・ライフ・バランスに資する。目標設定がはっきりするんだから、早く帰れる人は帰れますよ、という話になっているんですが。
順番が逆で。目標設定がキツ過ぎてみんな帰れないのに、規制をはずすと突然それが上手くできるみたいな言い方になっているんですね。
なぜ、残業代を払わないという話になると、突然企業は良心的な目標設定をし始めるのか?全然分からないですね。

八代 さん
それは残業代をもらったほうが、今の労働者のほうにとってメリットがあるからであってね。
だから、そういう意味で残業代のほしい労働者と帰らなきゃいけない労働者と利害が対立しているわけですよ。
ですから、そこはもっと今より改善できる話です。

今野 さん
ダラダラ残業をできる人というのは、そもそもかなり恵まれた人だと思うんですね。
それはいるかもしれないけど、私から見ると、ものすごく少ない人たち。
今、大半の人は困っているわけですよ。

小野 アナウンサー
今野さんは基本的に日本の現状からしたら、成果給を入れちゃダメだとおっしゃっているわけですね?

今野 さん
入れちゃダメだというよりも、みんなどこでも導入しているし。
さらに言うと、それを導入する方法なんて、いくらでもあるんですね。
だけど、その成果給自体がすでにひどいものなんです。

八代 さん
そうですね。今の成果給がいいとは言いませんが、それを直していけなければ、日本経済は持たないんですよ。

今野 さん
なぜ規制をはずすと直るのか?私は逆で。
むしろ労働時間規制、つまり残業代の規制をもっと強化したほうが、企業はこの時間の中でどれだけできるのか?ということをシビアに考えなきゃいけなくなると思うんですね。逆で。

竹田 解説委員

要するに残業代をどうするのか?というお金の話と。
それから長時間労働をキチッと管理するのか、おさえるのか?という時間の話ですね。
基本的には、成果に応じて払うようにする。
だけど、その成果に応じて払ったほうがいい人と、そうじゃない、時間に応じて払ったほうがいい人と、やっぱりそれはあるわけで。
どうこれをしゅん別するか?というのが問題なんですね。
じゃあ、時間をどうするのか?というと。とにかく客観的な条件として、日本人は働き過ぎなんですよ。
週50時間以上働いている人の割合ですが、日本はこんなにいるんですよ。
ヨーロッパに比べると全然多いですよね。
しかも、例えば過労死につながっていってしまったり、心の病の背景になったりするわけです。
ですからやっぱり、これをおさえなきゃいけない。

小野 アナウンサー

「成果給で職場は良くなると思いますか?悪くなると思いますか?」
というアンケートを実施したところ「悪くなる」とお答えになった方が69% 「良くなる」31%をはるかに上回りました。






竹田 解説委員
日本のみんなでチームワークでやるというのから生まれたのが、私は「お・も・て・な・し」につながっていると思うんですよ。
まさにタコツボ化するんじゃなくて、自分の領域を超えて、お客さんに喜んでもらうためには、さらに自分の領域を超えて、すき間になっているところをふくめて、どうやって埋めていくか?配慮していくか?ということを気づかっていくわけですよね。

今野 さん
そもそもそういう仕組みになっているので個人の評価できないんですよ。
評価ができないから、チームを運営しているリーダーから「いや、お前は貢献度が低い」とか「高い」ということが、大ざっぱに評価されて。
そこで例えば、そりの合わない部下に対して「こいつのノルマは2倍にしよう」とかですね。
「不得意なことでもやれ」というようなことも。こういうことも中には起きてくる。

小野 アナウンサー
こんなご意見もきています。


八代 さん
こういう現状を変えるために制度改革が必要なんですよ。

今野 さん
また同じ話になっちゃうんですけど。
なぜ残業代規制がなくなって、逆に企業に対してゆるくなってくると、なぜ突然良心的な設定ができるようになるのか?
因果関係が分からないです。

八代 さん
残業代規制じゃなくて、直接、労働時間規制。これは先進国のやり方なんですね。
それに変えていくだけ。今は貧しいときの時代で。
お金さえあればいいでしょう、というやり方なんですね。

今野 さん
ロジックとしては分かるんですけど。八代さん、労働現場のことですね。
もう少し具体的に言うと、監督署がいくら人数、仮に今5倍になったとしてもですね。
それ全部のところのサービス残業を取り締まって、一人一人立件していくなんてことはできないわけです。
そうすると結局、自分で請求できるのですか?

じゃあどうするのか?という話ですが、今だって、いろんなことができて。短時間正社員。
つまり時間を短くして、その中で仕事をして評価しよう。
こういうことは別に今すぐでも、企業は導入できる。
なんの法律上の制約もないんです。
あるいは、フレックスタイム制というのがあります。これなにか?というと。
働く人が自分で自由に選んで働ける。必要なときにはちょっと長く働けるということもふくめて、可能なんですね。
もちろんこうした制度をやりながら違法なことをしてくる企業も、あるんですが、こういうものをしっかりと今、導入・運用するために、規制緩和は必要なくて。
今すぐにでも実はできる。この視点を無視されているんですね。
なぜこういう仕組みがあるのに、さっきから出ているような、まともな成果給が広がらないのか?悪いことをする企業はなぜ多いのか?それは、もともと悪意のある企業もそうだし。
あるいは、仕組みとして今、導入すると悪い方向に流れていくような現実があるんですね。

小野 アナウンサー
いい上司がいないとダメだというところはありませんか?いい上司は、どうやって育てたらいいんですか?育てるという言い方も変ですけれども。

竹田 解説委員
これ、経営の問題なんです。マネジメントの問題。
つまり、もともと残業しないと仕事が終わらないなんていうのは。
そもそも所定労働時間で終わらない仕事を割り振っているという。
そのもともとのマネジメントが全然できていない。

八代 さん
おっしゃるとおりです。だから、問題は成果給を管理職にまず導入することなんですよ。
これまで上手くいかなかったのは、平の人に導入して、管理職は遊んでいたわけで。
管理職というのは一つの職種なんですよね。単に年を取ったら、なれるものではないんですよ。
まず管理職にやる。だって営業職を管理するのも管理職ですから。

今野 さん
じゃあ、それはそういうふうに明記されていればいいんですけど。
そういうことがちゃんと書かれていないと思うんです。
管理職といっても、どこまで、誰が管理職なのか?さっき言った店舗の店長が、もうほとんど自分で業績、目標設定なんでできないのに。
一人で二店舗やれと言ったら、やるしかないような人が。
「あなた、会社の幹部だから」と言われている現実のなかで。
上限規制をもうけるという話でバランスが取れるというんですが。
上限規制をやぶった企業は、じゃあ誰をどうやって取り締まるのか?
そのとき、残業の請求もできないのでは、どうにもならないじゃないか。

正蔵 さん
入社するときに。 例えば私は、こっちのタイプにしてください。私は、こういうふうな時間にしてくださいとか、給金にしてくださいという条件というのは、できないものなんですか?

宮崎 さん
人生のいろんなステージにおいて選べたらいいですよね?

竹田 解説委員

成果給にするかどうか?ということだけじゃなくて。
やっぱりまず、今これまでの話でも分かっているように、長時間労働をどうおさえ込むのか?
という観点でいけば、こういったことをやっぱり考えなければいけないんです。

八代 さん
なんとなく皆さんの議論を聞いていると、労働者は長く働かせれば企業の得、労働者の損という労使対立で考えられておるんですけれども。
ぜひ言っておきたいことは、今の日本の最大の問題点は、非常に労働生産性が低い。
それは労働時間が長すぎるからということもあるんですよね。
日本人は労働時間が長いから、時間当たりの生産性が非常に低いわけなんですよね。

今野 さん
実際、正しくて。僕からするとですね、それはさっき言ったような無理なノルマを課せば、法律にろくに規制されずに。
そしてこれからは、サービス残業もOKになっていくわけですから。
より強化されたかたちで、ムチャな営業ができちゃう。そうすると、会社自体は努力しなくなるんですね。
つまり、この限られた時間で残業代が高く付いてくるよとなれば、この限られた時間で営業して、そして利益が出る生産性の高い店舗を残していく。
あるいは、そういう店舗を増やそうとなるのに。今とりあえずここに出してしまおう。
で、売り上げは出るかどうか分からないけれども、とりあえずコイツにさらにもう一店舗やらせれば、限界まで超えてやらせれば、そうすればもしかしたら、ちょっと利益出るかもしれない。
こういうことをどんどんどんどんできてしまう現実があるわけで。
さらに、この制度でそれが加速されるんじゃないか?
つまり、これはもっと下がっていくんじゃないか?というふうに、私からは見えるんですね。

八代 さん
それを防ぐための規制なんです。
規制の実効化のためには、ちゃんと対象者を決めるんですよ。

今野 さん
なぜ規制を緩和すると、規制の実効性が高まるというふうになるのか?
そこの因果関係を説明できないじゃないですか。

八代 さん
それはまったく誤解でですね。規制を緩和するなんて一言も言っていません。
規制を組み替えるんですよ。今の金さえ払えばいいという規制を、金を払ってもダメなんだと。
労働時間は上限を決めなければいけないという、より厳しい規制に替えるんです。

竹田 解説委員
要するに、労働時間の上限って先ほど説明しましたように、今の労働法制のもとでは、36協定さえ結べば事実上、青天井なので上限がないに等しい。
だから本当にキチッと。これヨーロッパ諸国でもおこなわれているところあるんですけれども。
例えば月間の残業時間とか、そういう長さを本当に法律で規制をする。
上限をきっちり強制力を持ってやると。それから、ヨーロッパでおこなわれているインターバル規制。
これは一日の仕事が終わって、翌日の仕事が終わるまでに、例えば11時間あいだ空けなさいと。休息しなさいと。
一日24時間しかありませんから。11時間引けば13時間。どんなに長時間労働やっても、13時間でストップですよというのが、この主旨ですね。実際に今、入れているところがあるわけです、ヨーロッパでは。
さらに、残業代の賃金の割り増し。これ日本は、残業すると賃金の25%以上の割り増しというのが基本なんですけれども。
これ、安くて。アメリカでも、基本50%以上なんですよ。
ヨーロッパの国の中には、75%というところもあるので。
だから残業させると企業にとって割が合いませんよ、というようにする一つの方策なんですよ。
ですからこういったことを、まず今の制度のもとでもキチッと考えられることとして、まず私は緊急に考えるべき対象だと思いますね。

小野 アナウンサー
新労働時間制度。
これには、今竹田さんが言ったような長時間労働の対策は組み込まれようとしているんでしょうか?

竹田 解説委員
今の産業競争力会議のなかで出ている案には、これは入っていません。

八代 さん
具体的には入っていないけれども、そういう労働時間規制をしなければいけないということは、入っているわけです。
私は長すぎる労働時間というのは、公害だと思うんです、社会的公害。
だから、ちょうど自動車の排気ガス規制をやるように、一時的に企業の負担になっても、これはやるべきで。
それは結局、日本企業の競争力を高めるための基本になるわけで。

今野 さん
もう一つ言っておくと、労働基準監督署の強化、ずっとおっしゃっているんですが。
具体的には情報開示とか、そういうことしか書いていないんです。

小野 アナウンサー
この新たな労働時間制度、今後どうなっていくのでしょうか?

竹田 解説委員
ええ。これは今月の終わりにも、再び産業競争力会議開かれて。
厚生労働省と競争力会議の側でどうするか?具体的な話をつめていきます。

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