2014年08月23日放送放送内容まるわかり!

"子どもと向き合えない..." 超多忙! 学校の先生

新学期を前に、"教師の多忙化"について考えます。 今年6月。OECD・経済協力機構の調査で、日本の教師は最も多忙であることが明らかになりました。 一週間の労働時間は、世界平均の38時間を大幅に上回る54時間。 しかし、授業や生徒の指導につかった時間はその半分のも満たない20時間。事務作業などに多くの時間が割かれているのが現状です。 なぜ教師が多忙になっているのか?子どもたちへの影響は?とことん深読みします。

今週の出演者

専門家

堀田 浩一郎さん(熊本県山鹿市教育委員会 教育長)
平川 理恵さん(横浜市立市ヶ尾中学校 校長)
早川 信夫(NHK解説委員)

 

ゲスト

レッド吉田さん(タレント)
安田 美沙子さん(タレント)


小野 アナウンサー
先生からの声がたくさん寄せられました。





小野 アナウンサー
昔、先生そんなに忙しそうに見えていましたっけ?

安田 さん
一緒にドッチボールしたり、もっとお話した覚えがありますね。

吉田 さん
マンツーマンで接してくれた記憶がありますけどね。
放課後に勉強をがんばっている子のところにそーっと来て、「内緒だよ」と言ってアイスクリームをくれたのを覚えていますもん。

小野 アナウンサー
どうして先生たちはそんなに忙しくなってしまったのか?
中山アナウンサーのプレゼンです。


中山 アナウンサー
先生たちに取材をして、どのように忙しくなっているのかを模型にしました。
その代表に登場していただきます。
3年B組~、深八先生~!

深八先生はですね、とにかく「人」を育てたいんですっ。

安田 さん
ああ、ものまねが・・・。

中山 アナウンサー
深八先生は、夢をしっかりと抱いた子ども、自分の力で人生を切り開ける子どもを育てたいと考えている。
・・・というのにもわけがあって、文部科学省が先生の役割をこのように書いている。

「自立した人間を育て個人の能力を伸ばすとともに、国家や社会の形成者である国民を育成する役割を担う」
そのためには、とにかく生徒と接したい!学校での1日をこのように過ごしたいと深八先生は考えていたんです。

授業以外の時間は、とにかく生徒と朝からコミュニケーション。
そして、お昼休みも生徒とお話し。
放課後もギター片手に話すのかはわかりませんけれども、とにかく生徒と接したい!
さあ、実際の深八先生の1日はどのようになっているのか?
深八先生が学校に来るのは、生徒が来る1時間半前。
校門で生徒たちを出迎えましょう。というふうに思っていたんですが・・・。

小野 アナウンサー
あら、まっすぐ学校に入って行っちゃった。

中山 アナウンサー
職員室に直行です。ここですることがあるんですね。

授業の準備です。これが今、非常に量が増えている。

深八先生は社会科の先生なんですが、例えば、『世界の宗教』。
グローバル人材が求められる世の中になっている。となると、昔よりも世界のいろんなことを生徒たちは知らないといけない。

そして『裁判員制度』。
5年前から始まった裁判員制度に生徒たちが大人になったときに関わることがあるかもしれない。
授業で、新しいことをどんどん教えるようになっていて、わかりやすく興味深く伝えるためには授業の準備にやはり時間がかかる。

吉田 さん
なるほどね。自分がまず理解しないことには伝えられないですもんね。

中山 アナウンサー
生徒たちはどんどん登校して来ますが、なかなか職員室から出ることが出来ない。
そうこうするうちに授業が始まります。午前中はみっちりと授業。

そして、昼休み。授業がわからなかったという生徒がいるかもしれない。
その生徒の質問に答えましょう!となるわけですが・・・。
これがあって出来ない。

『校務分掌(こうむぶんしょう)』や『調査・報告書の提出』。

小野 アナウンサー
はーい、先生。『校務分掌』ってなんですか?

中山 アナウンサー
「校務」というのは学校を運営する仕事。
その「校務」を先生たちが分担して行っているんです。それが『校務分掌』。

例えば、深八先生はコンピューター担当。ホームページに最近の学校の出来事を書いて更新をする。
学校内のコンピューターでインターネットにつながらないものが出てきたら、それをメンテナンスするという仕事もある。
備品担当の先生は、備品の管理をする。机、イス、黒板消しとか、文房具に体育用具など、学校にはいろんな備品があるわけですが、それらを管理して、足りなくなったらそれを発注するわけなんです。
そうこうするうちになかなか職員室を出られない。

吉田 さん
こんなことまでやっているんですね。

安田 さん
他に担当者がいそうですけどね。

中山 アナウンサー
まだ、ありますよ。『調査・報告書作成』。
取材をした先生たちも「最近、これが非常に増えていて大変なんです」とおっしゃっていました。
社会でなにかが問題になると、国や県、市町村などいろんなところから調査・報告・アンケートを求められるんです。

例えば、スマホ依存の問題があったときに「子どもたちはスマートフォンをどれぐらい持っていますか?」「誰とどのようにやり取りしているんですか?調べてください」とか。
「光化学スモッグ、学校どのように対策を取っていますか?調査してください」とか。

小野 アナウンサー
その下にある「米粉の使用」ってなんですか?

中山 アナウンサー
気になりました?
これ、米粉がブームになったときに「給食でどれぐらい米粉を利用しているか、調べてくださいね、現状を知りたいので」。

小野 アナウンサー
それ、先生が調べるんですか?

中山 アナウンサー
対策を取るためには、学校の現場をわかっていないといけないということで、どうしても現場の先生に頼ってしまう。
アンケートを年間200回以上しているという学校もありました。
そういうこともあって、やはり職員室から出ることができない。 でも、まだ生徒と接するチャンス、ありますね!?放課後があります。

安田 さん
放課後、大事!

中山 アナウンサー
でも、こういったことがあってなかなか生徒と親身に話すことが出来ないんだそうですね。
「職員会議」「部活」

小野 アナウンサー
まあ、こういうのは昔からありましたよね。

中山 アナウンサー
で、気がつけば、夜になっちゃう。生徒は帰ってしまいました。
でも、翌朝こそは校門で生徒にあいさつをするために、夜のうちに授業の準備だけはこなしたい!と思ったのですが。

地域や保護者の方から、いろんな要望が来るようになっていて、放課後はその対応に追われる。

例えば、近隣の住民から「運動場の砂ぼこりが家に入ってきて困るんですけれども。どうにかして。」
保護者からは「うちの子どもがどうしても朝、起きられないんです。電話で起こして。」これ実際にあったことなんです。

安田 さん
それは先生が対応しなければいけないんですか?モーニングコールも。

中山 アナウンサー
生徒に関することなので対応するのは、やはり先生たち。
さらに給食費を払っていない生徒の家に、催促の電話をしたり。どうしても払ってもらえないというときは集金に行くということもあるんだそうです。
そういうことをしているうちに、1日が終わってしまいました。
結局、授業の準備は次の日の朝に・・・。

吉田 さん
忙しいなぁ...

中山 アナウンサー
その間、教室では・・・。

いじめや非行に不登校...。深八先生はさまざまな問題を見落としていました。
6月に国際機関が出したこんな調査結果も。

日本の先生で「自分の指導に自信を持っている」と答えたのは2割にも満たなかった。

安田 さん
「自信あって先生やっています」と言ってほしい。

吉田 さん
18%というのは、相当低いですよね。
授業以外の仕事を、ほかに回すことはできないんですか?

平川 さん
私は民間企業出身で、校長になって5年目なんですけど。
民間の会社と学校があまりに違うのでびっくりしたんです。まず、業務の範囲があいまいなんですよ。
なんでもやらなければいけない。先ほどの仕事に加えて、給食とか部費とか学級費とかの会計簿をつけたり。
掃除も先生の仕事です。それから、誰か業者さんが来て、その受け付けも先生の仕事です。銀行に行くのも先生の仕事です。

吉田 さん
うわー、大変だ。

平川 さん
全部やらなければいけないなら、土日に授業の研究やればいいじゃないか。
でも、土日は部活動があります。だから1か月の中で1回も休んでいないという先生も、たくさんいるんです。

小野 アナウンサー
アンケートなんか「ちょっと忙しいんで」と断れないものなんですか?

早川 解説委員
それは10年ほど前に問題になって、文部科学省も調査を減らしましょうということを各地の教育委員会に通知を出したんです。
で、そのときは減ったんです。だけどその後、いじめや体罰の問題とか起きた。そうするとまた調査が増えていく。
国から来た調査に、さらに県とか市町村とかが調査をプラスして、どんどんどんどん調査が増えていくんです。

堀田 さん
以前はいろんな問題が起きても学校独自で解決していました。
今、いろんな問題が出てきたときに、情報化社会の中で、マスコミなどを通していろんなところに聞こえるということで、教育委員会も実態を知りたいと。
だから本当は、問題が起きても学校で責任もって解決していれば、こんな調査もいらなかったんですけど。
そこらへんがまだまだ不十分なところかなと。

早川 解説委員
学校の先生たちに過度な期待が集まるようになったというのは、1970年代の後半あたりなんですね。
学校が荒れたという時代だったんです。校内暴力、いじめなどの問題があって「先生は何をやっているんだ?」と、世間の風当たりが強くなった。
一方で、金八先生のような理想の先生がモデルとなったテレビドラマなども出てきて、そうした活躍をしてほしいという世間の期待感も高まったんですね。

吉田 さん
あれは理想なんですか?

早川 解説委員
理想ですね。一生懸命やっている先生もいるけど、ぶらぶらしている先生もいるじゃないかということをその当時から世間から追及されて、だんだんだんだん仕事が増えていったという歴史があるんですね。

安田 さん
先生が子どもと接するために、例えば会計担当やネット担当などの人はつけられないんですか?

平川 さん
まさに付けてほしいです。
職員室に1人、そういうことをやってくれる秘書のような人とか事務の人とか置いてほしいなと思います。
技術員さんだって、学校に1.5人とか2人しかいないという中で、校庭の草抜きとか、全部あの広いところを出来るかというとできない。
でも、やらないと近所から「学校が汚い」と、それこそ放課後に電話がかかってくるんですね。

安田 さん
そこに対して、国の補助などはないんですか?

平川 さん
うーん。学校では、そういう人の裁量というのはないですね。

堀田 さん
国が決めた定数がありますから。
この規模の学校だったらこれだけの先生の数ですよ、という定数があるから、なかなか改善されていない。

吉田 さん
法律で変えれば改善されるんですよね?

堀田 さん
変えればなります。

早川 解説委員

日本の場合、国や地方自治体が出している公的な教育費が非常に少ないんですね。
世界の平均ではGDP比5.4%ぐらいの教育費の支出。デンマークだと7.6%ぐらいあるんですけれど、日本は各国平均よりもさらに低くて3.6%。OECD先進国30か国の中で、最低なんですね。

安田 さん
えー!?少ないんですね。

小野 アナウンサー
ご意見を紹介します。
『世の中の方々はご存じないでしょうが学校はまさにブラックな業界です。いい先生ほど蓄積疲労で心身ともにギリギリのところでやっています。』

堀田 さん
まさしくそうですね。
会社も同じかもしれませんが、仕事をすごくさばける先生がいると、その先生が仕事をうんと持つ。
校務分掌も、1人で3つも4つも持っている先生もいるんですね。そういう実態を本当に改善していかないと。

小野 アナウンサー
ブラック企業という言葉が出ましたけど、こんなに朝7時から夜7時まで働いて、残業代はつくんですか?

堀田 さん
教職員には残業というのはないですね。

早川 解説委員
これには歴史的経緯があるんです。
昭和40年代に先生がどれだけ働いているのか調査があって、週あたり2時間ほど残業をしているという結果が出たんです。
それで、勤務時間全体の4%ぐらい残業しているということになって、その4%分が給料に上乗せされた状態になっている。
それが昭和40年代からずっと変わらずに50年間来ているということですね。

小野 アナウンサー
じゃあ月間8時間しか残業していないとみなされているということですか。
実質は何時間残業しているんですか?

早川 解説委員
現在は、週でいうと14時間オーバーしているわけですね。

中山 アナウンサー
私が取材した先生は、月50時間ぐらい残業しているとおっしゃっていました。

早川 解説委員
給料からすると割に合わない計算になるんですね。残業代がつかずに働いている。

吉田 さん
子どもってやっぱり宝だと思うんですね、今の子どもたちが将来の日本を背負って立つわけですから。
政府がもっと考えてくれるという方向はないんですか?

早川 解説委員
そこが、なかなか難しいところで。二つ理由があるんですけども。
一つは、"国のふところに余裕がない"。
もう一つは、"政治家にとって教育というのは票にならない"。
義務教育を担う先生の人件費は、国の負担しているお金が1兆5千億ぐらい。
これは文部科学省予算の3割ぐらいを占めていて、財政難の折に教育費だけ増やすのかということに対してはなかなか腰が上がらない。
高齢者の年金とか、医療費とか、防衛費とか、公共事業とか、国が使いたいお金はたくさんあるわけですね。
そこを削ってまで教育費に回すのか?という判断が出来ない。
ところが、政治家に対して投票してくれるのは高齢者。

吉田 さん
あらら。うわーっ、なにそれ?

早川 解説委員
票が入らないので、なかなかそっちにお金が回るように議論が進んでいかない。

吉田 さん
そういうことか...。
でも、教育を子どもにしっかりとすれば、大人になったらいろいろなことを考えてくれるわけじゃないですか。そこをまず考えてもらいたいですけれどもね。

堀田 さん
「人づくり」や「国づくり」とか言葉では言いますよね。「人づくりは、まちづくり」という言葉を言います。
その言葉と現実がちょっとうまくいっていないということですね。
「人づくり」というのは教育だから、そういう言葉を言うんだったら、本当にもっと力を入れてほしい。

安田 さん
社会性とかコミュニケーション力とか、そういうことを教えるのは、すごく大事じゃないですか。
でも、違う方向に行っちゃっていて、もったいない。

平川 さん
やっぱり海外に比べてお金をかけなさ過ぎているんですね。
一番わかりやすい例でいうと、私は前職で留学支援会社をやっていて、欧米の学校を500校ぐらい見てきたんですけど、生徒の人数は1クラス15人から25人ですよ。

吉田 さん
少ないですね。

平川 さん
日本は40人ですよね。小学校低学年では35人学級が始まりましたけど。
それが結局こういうことなんです。

小野 アナウンサー
日本は教育にかけるお金が少なすぎる、という数字ですね。

平川 さん
原資が少なくなってきているのは変わらないので、その中で、子どもにかけると決めるかどうかなんです。
子どもには参政権ありませんから。

小野 アナウンサー
無い袖は振れないけれど、税金を納めている側からすれば、大事なところには使ってほしいという思いはありますよね。

安田 さん
この数字が子どもに少なからず影響しているような気もします。

堀田 さん
そうです。おっしゃるとおり、ここにあるように「日本の子どもは自己肯定感が低い」。

だから、子どもに降りかかっていますね。子どもたちは、先生たちとじっくりふれ合うことで認めてもらいたい、ほめてもらいたい。
1人1人すごくいいものを持っている、すごい個性を持っていますけど、そこを会話をしてコミュニケーションする中で「あなたスゴイんだよ。よくがんばったね」。
そういう会話をする時間を増やさないと。自己肯定感は低くなりますね。

吉田 さん
先ほどの「自分の指導に自信を持っている先生が18%」という低い数字はつながっている可能性がありますね。

堀田 さん
「自立した子どもをつくりたい」という目的があるけれど、本当にそういう教育を自分がやれているんだろうか?という教師の不安ですよ。

小野 アナウンサー
理想はあるけどお金がないというとき、どうすればいいんでしょうか?

早川 解説委員

三つのことをあげたいと思います。
一つは「脱・長時間勤務」。先生は忙しくて当たり前という考え方を変えること。
二つめは「借・地域力」。地域の力を借りて、先生を支援しようということ。
三つめは「鍵・授業力」。授業にきちんと取り組んでいる先生をちゃんと評価しようということ。
この三つを実行すれば、先生の"多忙感"は解消できるんじゃないかと思うんですね。

小野 アナウンサー
どうすれば先生たちが子どもと向き合う時間が取れるのか?
そのヒントを中山アナウンサーが探してきました。


プレゼンテーション②

中山 アナウンサー
きょうお越しの専門家のお二人の取り組みをご紹介します。
まず堀田さんの取り組み。

おととしまで堀田さんが校長を務めていた熊本県の山鹿(やまが)中学校。

堀田さんがこちらの学校に赴任した6年前。学校はいろんな問題が山積み。
先生たちも忙しくて、なかなか職員室を出ることができなかった。

こんな学校には行きたくないな、という生徒もいて、全校生徒のうち41人が不登校。
これはなんとかしないといけないということで、堀田さん、こうしたんです。

安田 さん
えっ?誰もいない。

小野 アナウンサー
先生に辞めてもらった?

中山 アナウンサー
堀田さん、先生たちに「とにかく職員室から出て、生徒と接する時間を作れ」というふうに指示したんです。
その時間をどのようにして作ったかというと、毎日行っていた職員会議をやめたんです。

職員会議の内容は、例年行われている行事の段取り確認が多かった。

そういったものはマニュアルにまとめて、先生たちに読んでもらうことに。
どうしても職員会議を開かなければいけないときは、夏休みなど生徒が学校にいないときに行うようにしたんです。
すると、まさに最初のプレゼンで深八先生が思い描いていたようなことに。

朝、廊下や校門、教室で生徒とコミュニケーションを取れるようになった。
勉強の個別指導も行えるように。
さらには、1日でも学校を休んだ生徒がいたら家庭訪問。そして「今日はどうしたの?病気なの?それともなにか嫌なことあったの?」などたずねてみる。
問題が大きくなる前にしっかりと生徒と寄りそうよう時間が作れた結果、不登校は今や2人だけになったそうです。

しかも、学力も上がりました。
全国学力テストも全項目で全国の平均以上とるようになったそうなんです。

吉田 さん
やる気スイッチがもうしっかりと押されたという状態ですよね。

安田 さん
やっぱり大事なんですよ。ふれ合うことが。

小野 アナウンサー
堀田さん、これはどこの中学校でも出来ることなんでしょうか?

堀田 さん
やろうと思えばできるんだと思うんです。仕事がたくさんあるのは、どこの学校も同じです。
だから、自分の学校にはどんな課題があるのか?その課題を解消するために校長として何をするのか?やはり「先生と子どものふれあいしかない」と私は判断したんです。
そのためには校長として先生にお願いするばかりでなく、先生の時間を作ってあげようと。
その時間の中で、子どもとの本気の関わりをやろうと。子どもの心を読み取れるぐらいの会話をやろうという取り組みでしたね。

小野 アナウンサー
成果があったなと感じていらっしゃいますか?

堀田 さん
ありましたね。職員の意見も「会議・研修よりも、子どもとふれあいながら、成績が上がったことで喜んでいる子どもの顔が見られるのがとてもうれしい」と。
やはり教師です。勉強をしっかり教えるとか、厳しい状況の子どもたちに関わるというのが教師の本分。
昔はやっていたそういうところを、取り戻したということですね。

早川 解説委員
先生自身の意識改革というのも必要だと思います。
先生自身、長く働くのが当たり前という感覚が染みついてしまっているので、そこから変えていかないと、なかなか変わっていかないんじゃないかと。
ある学級通信に「毎日午後8時まで学校にいるので、何かあったら遠慮なく電話してください」というようなことが書いてあったそうなんですが、それは美徳のように見えるけれど、毎日残業していますよ、ということを言っているわけで。
その意識から変わっていかないといけないんじゃないかと思います。

中山 アナウンサー
続いて、外部の力を使って、先生が子どもと向き合う時間を増やそうと考えた、平川さんの取り組みをご紹介します。
平川さんが校長を務める横浜市の市ヶ尾中学校。
まず、こんな外部の方を呼びました。

「児童文学評論家」。図書室の本を選んでもらおうというんです。
学校では図書室の本を毎年800冊ほど購入していましたが、その作業は校務分掌で先生が請け負っていた。

忙しい中で先生が一つ一つ本を探し出して、選んで、発注するということは大変な手間がかかっていたんです。
でも、児童文学評論家はその道のプロ。生徒におすすめできる本もよーく把握しています。
外部パワーという点で、さらにこんな方々にも頼みました。

「地域の大人」です。
授業に積極的に参加してもらおう、と。

例えば、美術の陶芸の授業のときには地元の陶芸クラブのメンバー。
そこで先生と一緒に教えてもらう。家庭科の授業には、子育てを終えた主婦が。
特別支援学級の調理自習などで包丁の使い方などを先生と一緒に教えてもらう。
こうして複数の大人の目が入ることによって、先生の負担が軽減される。
すると、先生に教室を見る余裕が出てくる。一人一人のことをよりこれまで以上に見ることができるようになったというんです。

小野 アナウンサー
でも、代わりに授業してくれるわけではないんですよね?
先生は絶対授業にいなければいけないのであれば、仕事の量としてはそんなに変わらないのでは?

平川 さん
もちろんその先生は、授業にいなければいけません。
でも、考えてみてください。1人の美術の先生が陶芸でコネコネやっていて40人見られますか?という話なんです。
40人の生徒たちから「先生!」「先生!」「先生!」と必ずそうなりますから。
生徒4,5人の班に1人ずつ地域の方に入っていただいて、そこで教えてもらう。
もう一ついいことは、その中で会話が生まれるんです。
昔は普通にあった地域社会のおじちゃんおばちゃん、隣のお母さんお父さん、お兄さんお姉さんとのふれあいというのがなくなって、子どもたちが接するのが自分の保護者か先生だけという、ちょっとさみしい人間関係になってきているんです。
それを地域の方であったり、企業の方であったり、ちょっと有名人なんかに学校に来ていただいて、ふれあう機会を作ることによって豊かな教育活動を行うというのが一番重要なんじゃないかなと。

安田 さん
近所付き合いなくなりましたもんね。
安心ですよね。町で「あっ」と会えたら、安心するというか。

平川 さん
そうですね。「このあいだ授業で会った○○ちゃん、元気?」ということとか。
大人と話す機会が本当になくなっているので、わざと学校の授業の単元に合わせてそういうマッチングをするということが重要なんじゃないかなと。

吉田 さん
これ、ボランティアでやっていただいているんですか?

平川 さん
ボランティアです。

堀田 さん
地域の力を入れようというのは、全国かなりやっていますね。
特に、放課後の部活動が非常に先生の多忙になっているんですね。
だから、放課後も教材研究ができない、とかですね。
そこらへんで、外部の地域の指導者に学校の中で力を貸してもらおうという。

吉田 さん
うちの学区は、野球とかサッカーとかバスケットボールとか、クラブ活動に関しては外部のボランティアの方がやっていますね。

小野 アナウンサー
へえー、いいですね。

堀田 さん
もちろん先生も一緒にやるんですけれども。
どうしてもやっぱり先生がやると、部活動などは勝ち負けをとても気にする保護者も多いから。
地域の方が加勢してくれると、同じ保護者としての仲間だからその辺は緩和されますね。

中山 アナウンサー
「何か起こったときの責任は?」という質問もきているんですけど、どうなんですか?

平川 さん
そこは「学校管理下」という言葉があって、子どもが家を出て、学校にいる間、そして家に帰るまでは、学校の責任なんです。
なので、授業の中に先生は必ずいなければいけない。ナンバーワンはやっぱり先生。先生が責任を取ります。
ボランティアの方は、アシスタント的に、ナンバーツー、ナンバースリーという形で参加してもらう。

堀田 さん
国の政策で、少人数学級とかチーム・ティーチングというのは、国から加配が来るんです。
そういうのを市町村によっては、例えば私の山鹿市では、サポートティーチャーというようなかたちで非常に力を入れてもらっています。
これは教員の免許持っていなくてもやれる補助教員みたいなもので、免許はないんですけど。

小野 アナウンサー
「外部パワーとして呼ばれた人たちには手当か何かあるんですか?」という質問がきています。

平川 さん
手当はお仕事でやっていらっしゃる方には、1万円とか2万円で「報償費」というかたちでやっていただいて。
ほとんどはボランティアでやっていただくんですけれども。

早川 解説委員
学校が地域とうまくつながるということは、地域の側にもメリットがあるんです。

例えばこれ、東日本大震災のときに学校に設けられた避難所に、地域住民による自治組織がスムーズに立ち上がったかどうかを行った調査なんですけれど。
日ごろから地域の人たちがボランティアとして授業の手伝いをしているような学校では95%が「順調に立ち上がった」と答えているんですが、そうでない学校は35%なんですね。

安田 さん
全然違いますね。

早川 解説委員
日ごろからいい関係ができていれば学校も得をするし、地域も得をする。そういう関係なんですね。

小野 アナウンサー
「教育は学校だけではない。その親がダメなら学校を改革してもまったく効果はない。」というご意見が。

堀田 さん
そういう保護者の人たちとうまく連携をするためには、子どもと教師の関係と同じように、大人と学校ももっと連携をしないとダメですね。
私たちもなかなか外に出るのが昔ほど多くなくなりましたからね。
学校教育にあまりご理解がない保護者の人たちにもしっかり話して関わることで、だんだんと理解していただけるじゃないかと思うんですね。
保護者の方はみんなやっぱり自分の子ども預けている学校を信用したいし、がんばってほしいと思っておられます。
だから、そのへんの気持ちが一体化しないと、誰が悪い、彼が悪いと言っても、なかなか教育は成り立たないですね。

小野 アナウンサー
子どもたちと向き合えるのなら、がんばりたいと先生方も思っておられるんですよね。

堀田 さん
はい。

早川 解説委員
最後のところは、鍵になるのは授業力。とにかく授業をきちんとやって、そのための努力を惜しまない先生をきちんと評価しようじゃないかということ。
そういったことで、荒れた学校から立ち直った学校もあるんです。授業をきちっとやる。
そして子どもたちがわかると、どんどん学校に戻って来て、授業に集中するようになる。

堀田 さん
わかる喜びですよ、子どもたちの。

小野 アナウンサー
味わってほしいですね。どうもありがとうございました。

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