2015年01月31日放送放送内容まるわかり!

格差社会の種明かし!? ピケティ本はなぜウケる?

今回のテーマは、いま話題のあの本。『21世紀の資本』(トマ・ピケティ著)。 定価5940円、600ページ以上もの分厚い経済書が、世界で150万部以上、日本で13万部以上と、異例のベストセラーです。 「働いても豊かになれない気がする」「格差が広がっているんじゃないの?」。こうした不安や疑問に、この本はひとつの回答を示したと言われています。 なぜいま、ピケティ氏の本は人の心をつかんでいるのか。 深読みします。

今週の出演者

専門家

山形 浩生さん(ピケティ著「21世紀の資本」翻訳者)
土堤内 昭雄さん(ニッセイ基礎研究所 主任研究員)
竹田 忠(NHK解説委員)

 

ゲスト

デーブ・スペクター さん(放送プロデューサー)
藤本 美貴さん(歌手・タレント)


小野 アナウンサー

これがその本です。
これを深読みで徳永アナウンサーがわかりやすく説明してくれたら、私も本を読んだことにしていいですよね?

プレゼンテーション①

徳永 アナウンサー
それはだめ!でも、本のエッセンスは、誰にでもわかるようかみくだいて説明します。

この方が今、来日中のトマ・ピケティさん。43歳。
著書が今、37か国で翻訳が決まっていたりもう売られていたり。世界中で150万部のベストセラーになっています。
この本で最もピケティさんが言っていることは、これです。

「rは、gよりも大きくなるものですよ。」

rというのは、「資本収益率」を指し、gというのが「経済成長率」をさす。
これを中学生ぐらいにも理解してもらいたいと思って、ためしに人に例えてみます。
rさんとgさんが出てまいります。

gさんは、親から財産は引き継いでおりません。好きな言葉、コツコツ頑張る。
gだけに、とりえはガッツ!給料をいっぱい稼いで、将来はお金持ちになるぞと、意気込んでいる方です。

rさんは、rだけにリッチです。パパの財産がたくさんあるから、俺何もしなくてもいいや。
さあ、どっちに将来お金持ちになってもらいたいですか?

藤本 さん
gさんですね!頑張ってほしい。

徳永 アナウンサー
最後はgさんに稼いでもらいたいというのが人情のような気がしますが、ピケティさんの本を解釈するならばこうです。
「gさんはいつまでたってもrさんには追いつけない。それどころか、その差はますます開く一方ですよ。」っていうことになりかねない。

藤本 さん
rさん何もしてないですよね?親からの財産もらって、グータラ生活。

徳永 アナウンサー
rさんのお金がどうやって増えるのかを説明します。
お金を持っている人っては、現金で持っているということはあまりない。価値のあるものに変えて持っています。

例えば、パパが残してくれたマンション。誰かが借りますよね。

月々賃料が入ってきます。
パパから引き継いだ株を持っています。その会社が儲かれば配当金がもらえる。

もうけの一部を分けてもらえるのが株のルールですよね。

つまり、うまくいけば、パパからもらっていればrさんは何もしなくたって、財産がそのままもうけになるんですよ。

ピケティさんは、こういう財産のことを「資本」と言っています。
「資本収益率」っていうのは、もうけの上がり方です。

つまり、この増えた幅のことをrと呼んでいるんです。
では、ガッツがとりえのgさんはどうやってこれに対抗しましょう?会社勤めです。

小野 アナウンサー
課長になって、部長になって、社長になって。

徳永 アナウンサー
誰かが出世するということは、誰かが出世できないという差がついちゃうだけでしょ。
会社員全体、gさんみたいな人が、世の中みんなが豊かになっていく、手取りが増えるためには、それだけじゃだめ。会社がもっともうからないと。
...ということは僕たちがもっとこの会社の品物を買えばいい。
...ということは、もっとみんながお金を使うようになればいい。
つまり、世の中のお金のめぐりが活発になればなるほどいいわけですよね。

去年より今年、お金のめぐりが活発になってくれればお給料も基本的には上がるし、 今年より来年、もっとお金のめぐりが活発になれば、もっと給料は上がる。

世の中のお金のめぐりが前に比べてどれくらい活発になったかというのを「経済成長率」と呼ぶと思って下さい。
つまり、ガッツがとりえのgさんのお給料が伸びるかどうかは、理論上はこの経済成長率にかかっていると言ってもいいわけです。
ピケティさんは自分で調べてこう結論を出しました。

「rはgよりも常に大きい」と。
つまり、gさんが一生懸命頑張って世の中景気がよくなって給料が上がったとしても、rさんの資本のもうけの伸び率の方がはるかに高いですよ、ということを言っています。
で、財産は親から子、子から孫へと引き継がれて行きますから、放っておけば差はひろがる一方。

子や孫のためにgさんが残した財産よりも、rさんの残す財産の方がこんなにも上がるんだと。

デーブ さん
でもそれって当たり前すぎて、わざわざ本を出さなくても!

小野 アナウンサー
そうですよね、大人になるとみんな知ってますよね。
お金持ちはどんどんお金持ちになるって、大人は知っている!!

徳永 アナウンサー
落ち着いて下さい、落ち着いて下さい。
それは経済学を学んだ人にとっては、そうなの? 常識と逆じゃない?となる人もいる。
ちょっと、経済学の常識というのを見てみましょう。

ピケティさんの大先輩をご紹介します。
アメリカの経済学者のクズネッツさん。この方、20世紀前半のアメリカ人一人一人の税金のデータを集めて調べた結果、「景気がどんどんよくなれば"格差"は段々縮まっていきますよ」という論文を書いたんです。60年くらい前なんですけど。
これがきっかけで1971年にノーベル賞をお取りになって、これが今までの経済学の常識とされてきたんです。
ところが最近の世界の格差を見てて、おかしいよとツッコもうとした方がいます。

ピケティさんのすごいところは俺も調べると、データを集めました。
世界20か国以上、しかも200年ぐらいの間の税金などのデータを集めた。その前の時代も後ろの時代もそこから推測した。
もちろんその統計の取り方に異論を唱える人もいますけども、ピケティさんはあえてそれをやってみたんです。
ちょっと見てみましょう。クズネッツさんが調べた20世紀前半の世界のrとgの関係。

gがrより上にある。っていうことは、給料の伸び方のほうが、お金持ちの資本の増え方より上回る。

藤本 さん
夢がありますね。

徳永 アナウンサー
そう、夢がある。
つまり、頑張ればあのお金持ちにも俺たち追いつけるぞ!どんどん行こう!っていうふうにもとれますよね?ピケティさんは「クズネッツさんの調べたことは確かにそうでした」って書いています。
ただ、その前後を見てみましょうか、推測も含めて。

藤本 さん
gが上にあるのは一瞬だけ...。

小野 アナウンサー
クズネッツさんが調べたときだけgの方が優位だったのはなぜなんですか?

徳永 アナウンサー
ピケティさんは本の中で大きく、これが理由じゃないですかと挙げています。

この時期は大恐慌があったんです。ものすごく急に不景気になる。
rさんの資産で見ながら考えていきます。大恐慌になると、株券が突然、紙くず同然にまでドンと下がる。資産がいっきにパーになる。
世界大戦で、戦争ってものすごくお金がかかるんですね。いっぱい国がお金集めます。
お金持ちの資産が減ります。世界大戦だから爆撃もあります。建物崩れます。土地の価値も落ちます。お金持ちにとってはもう悲惨な時期なんです。
でも、焼け野原になってみんなで働くしかないですから、せっせと復興のために働いて、経済はこのころ伸びた。
だから、たまたまこの時代だけ逆だったんじゃないですか?ってピケティさんはおっしゃっている。

全体的に言うと「給料が1%伸びたとしたら、同じうちにだいたい資本、お金持ちの財産の価値っていうのは5%は上がるもんです」とピケティさんは言っています。
つまり、賃上げだ、やったー!ってサラリーマンが言ってる陰で、お金持ちは5倍ほくそ笑んでると言わざるをえない。
何もしなければの話ですけれどもね。

小野 アナウンサー
いやでも、経済学の世界に革命的な出来事だったとしたらその意味では分かるんですけど、一般の人もこの本を買っているというのはなぜなんでしょうか?
だって、お金持ちがますますお金持ちになっていくものだというのは、大人はみんな肌で感じていることなのに、それが書かれている本がこんなに売れているというのは。

デーブ さん
"オキュパイ・ウォールストリート(ウォール街を占拠せよ)"というデモとか、まさに"格差"の問題が世界中でも多くて、なんで1%のお金持ちの人たちだけが我々を制覇してるのかっていうタイミングもちょうどあったという話もあるんですよね。

小野 アナウンサー
山形さんは、このぶ厚い本を日本語に翻訳なさった方です。

山形 さん
そのオキュパイ・ウォールストリート。
ウォール街の1%の金持ちだけ得してよくない!許せん!っていうのは、1%と99%っていうのは、まさにピケティがこの研究で1%だけがやたらにもうけているぞ、これはどういうことですか?"格差"は開いてるじゃないですか?というのを出したという、それがベースなんですね。

竹田 解説委員

これがピケティさんの本の中で出てくる数字。
その国の上位1%の人の所得が、その国全体の所得の何%を占めているか。
つまり、アメリカだと上位1%の人の所得がアメリカ全体の所得の17%以上、もう2割近く占めているってことですよね。
イギリスだと15%近い。日本はこれに比べればずっと下ですけども、でも日本も1割近くを占めている。

小野 アナウンサー
番組では800人の方にアンケートを行いました。
「ピケティに注目している方、その理由を教えて下さい」という質問をしてみました。





やっぱり"格差"というものを実感しているから読みたくなるんでしょうか?
土堤内さんは "格差"と幸福のあり方を研究なさってます。

土堤内 さん
デーブさんにも藤本さんにもお聞きしたいことがあって、"格差"って言葉を聞いた時に、それはいいことなのか悪いことなのか、あるいはニュートラルにどっちでもないのか、どんな印象を持たれますか?

藤本 さん
難しいですよね。なければない方がいいと思うけれども、頑張っている人と頑張っていない人が同じでも困るなと思います。
そういった意味でしょうがないのかなっていう部分もちょっとありますね。

土堤内 さん
だから、"格差"って本当は価値判断が入らずに「違いがある」ってことなんですよね。
だけど、私たちが"格差"って考えるとやっぱりそこに価値判断が入って、それはどっちかっていえば不平等であったり、なんか悪いことじゃないのかなという。
だから"格差"を考えるときにとても大事なのは、ピケティさんがこの本の中にも書いていますけど、違いの大きさではなくて、なぜその違いが生じているかということがとても大事だと。

デーブ さん
あと、日本でなぜこの本のインパクトが大きいのかっていうと、今まで90%の人達が自分が中間層と思ってたんですよ。
たぶん世界で唯一9割の人がミドルクラスとずーっと言ってきた。
なのにこんなに日本でも"格差"があるっていうのは、衝撃が外国より大きいと思うんですよね。
ただ僕は、トリクルダウンっていうのがあって...。

藤本 さん
トリ...? それ、なんですか?

デーブ さん
要するに、富裕層から降りて来るものが多いんですよ。景気がよくなれば。
例えば、高級ホテルが一泊5万円以上、10万もするようなホテルで働く人もいるわけですよ、野球選手にばかばかしい給料払うけど、客が入ればビールが売れるんですよ。
そういうもので、ビル・ゲイツみたいに自分の資産を半分以上もうすでに寄付したり、資本経済はそうやってあんまり恵まれない人を含めて助けるっていうシステムになってるんですよ。
(※「トリクルダウン」...富める人がいっそう富むことで、富がしたたり落ちて貧しい人にも分配されていくという考え方)

小野 アナウンサー
なっている?なってるかどうか。

土堤内 さん
そう、そこが問題で、そのトリクルダウンでこぼれてきた富がいろんな人にきちっと再配分されればいいわけですね。
だからさっき言ったように、別に差があってもそれが正当な理由に基づいて適正に配分されていれば、きっと誰もそんなに文句を言うことはないんですよ。

小野 アナウンサー
適正に配分されてないような気がするという感じが、その本が売れている理由ではないかと土堤内さんは見ている?

土堤内 さん
そうですね。だから、必ずしもその本を買っている人って、自分が"格差"で悩んでいて、いわゆる貧困の人が買ってるわけじゃないんですね。
6000円近くする本ですからね。むしろお金のある人で、さっき言った"格差"の上にいる人が買ったりしているわけですよね。
それはなぜなんだろう?っていうのが、この本が売れる一つの謎を解くことになる。

小野 アナウンサー
ただ一方で、こんな声もたくさん寄せられています。
さっき藤本さんもおっしゃっていましたけど。

いったい日本に"格差"というのはどれくらいあるものなのか、徳永アナウンサーのプレゼンを聞いてから考えましょう。


プレゼンテーション②

徳永 アナウンサー
人生すごろくを作ってみました。

Aくんの家庭は、親の年収が1000万円です。

B君の家庭は、親の年収が200万円。よく最近いわれる子供の貧困っていうのがありますけれども、だいたいこういう規模です。
今、子どものいる世帯の6分の1ぐらいがこれぐらいの規模だと思ってください。
大事なことは、自分の年収じゃないんです。生まれた家の親の年収によって、人生がどうなるかっていうことなんです。
まず、学生時代について、1つデータをご紹介します。

高校卒業後、大学に進学したかどうかを調べたデータがあります。
親の年収が1000万円を超えているお宅のお子さんは、62.4%の人が大学に進みました。
一方で、親の年収が400万円に満たない家庭のお子さんは、3割ちょっとにとどまっています。
ここから言えるすごろくは、こんなふうに言っても言い過ぎではないかもしれません。

Aくんの家は見聞を広めるために海外旅行にも行かせる、塾や習い事も自由にさせてあげる。経済的に余裕がありますから。

そんなこともあってか、中学受験をする。中高一貫校に行く。一気に大学まで行く。

でも、Bくんの家は同じようにさせてあげたくても先立つものがありませんから、意欲はあってもアルバイトをしなきゃいけない。
学費を稼ぐためだけでなく、親を助けるためという理由も最近は増えています。
勉強をする時間も足りない。もし学力があったとしても今、国公立大学4年間でかかる学費がだいたい242万円と言われています。学力があっても進学できないというケースも出てきています。
次は、社会人になってからの、こんなデータ。

結婚していますか?というアンケートです。30代の男性に聞きました。
自分の年収が600万円を超えている人は割弱の人が結婚しています。対して、300万円に満たない人は、1割も結婚していません。
これについては、こんな人生すごろくがありえます。

Aくんは大手企業に入りました。30代でだいたい年収は600万円ぐらい。結婚して子宝にも恵まれます。

Bくんです。大学を断念すると、非正規雇用にいく率が高いと言われています。
今、高卒の人で非正規雇用の人がだいたい4割。大卒は2割なんですね。
そうするとだいたい年収225万円程度だと言われています。独身にならざるをえない。
結婚しない理由は自由なんですが、経済力が乏しいからしたくてもできません、と国の調査でも答える人が増えている。
さらにいきます。老後です。

Aくんは正社員ですから、厚生年金が出ます。比較的多めに老後、お金をもらえます。
蓄えもあります。孫もいます。もしもの時は、有料老人ホームにお金をいっぱい持っていけば充実したところがあります。

ところが、Bくん。非正規の人は国民年金だけという方が多い。
厚生年金より老後の手取りはグンと下がります。所得が低いと老後に行く施設が限られています。
特別養護老人ホームという安いところは、ただいま52万人が入居待ちです。
将来入りたくても入れないというケースが心配されているというわけなんです。
一番言いたいのはこういうこと。
自分の努力以前に、生まれた家の年収で人生に差がつくとしたら問題だ、というのが今、日本で指摘され始めている"格差"の問題なんです。
最後に1つクイズを。

さて、「 ? 」には何が入ると思いますか?

デーブ さん
生まれた人?

徳永 アナウンサー
生まれた人。そうであればいいですねー。

藤本 さん
中学受験?

徳永 アナウンサー
そうそう、その延長上です。

実は、親の年収と学力には関係性があると国のデータでも示されているんです。

視聴者の声

「学校の勉強をしっかりやれば同じ土俵にたてるはずだが、今は塾にいかないとよい学校にはいけそうもない。」

「公立高校が無償化されたにも関わらず、制服代、修学旅行代などが厳しく、中退する子供がいる。」

「収入が少ない家庭では義務教育でさえも十分身につけられない場合がある。」

土堤内 さん
今の説明を聞いてすごく思ったんですけれど。

つまり社会としては"機会の平等"は必要です。これ、みんなだいたい同意するんですね。
だけど、それは"結果の平等"を保証するものではない。だけど、今の説明を見ていると、実際、"結果の不平等"は"機会の不平等"がもたらしている部分がすごくあるということなんですね。
だから、"結果の平等"を保証するためには"機会の平等"を保証するということがどれだけ大事かっていうことを、さっきの人生すごろくの中で言っていたなと思います。

竹田 解説委員
特に今は、子育て世帯の貧困が問題になっているわけです。
"就学援助"という制度があるのをご存じですか?小中学校の生徒を対象に、国や自治体が行っている制度なんですけれど、学用品が買えない、給食費が払えない、修学旅行のお金が足りない、そういった子どもたちのために国や自治体が補助する制度なんですけれど、今どれぐらいの子どもが受けてると思いますか?
「6人に1人」です。

藤本 さん
そんなに受けているんだ...。

竹田 解説委員
よく「そんなに"格差"ってあるの?」「そんなに貧困ってあるの?」って言う人がいます。
それは見えていないだけで、実際にそういう立場に立たされている子どもたちは多いわけです。
ですから、子どもの時の"格差"とか貧困っていうのが、結局、"機会の平等"のところ、教育の機会とかそういうものを奪っていくことになるかもしれない。

"相対的貧困率"というんですけれど、国民の平均の所得のその半分以下の所得の人がもう16%いるわけですよ。
6人に1人の方が、日本でも貧困状態とされているわけです。

視聴者の声

「親の年収で子供の年収が決まる、そんな夢も希望もない国。」

「われわれは努力しても意味がないってことを露骨に言ってるわけかな。」

「頑張ってもムダということだろうか。」

山形 さん

先ほどデーブさんがおっしゃったトリクルダウンではないですけれど、ちゃんとそのお金持ちからそうでないところにお金がいって、貧しい人にも機会を与えるような状況になればいいんですけど、日本の教育の公的資産、特に税金をどのくらい使ってるかというと、非常に低い。
学生時代のところで"機会の平等"を図ってあげればいいのに、今そういうふうになってないというのはやはり"格差"を作る原因になっちゃっている。
で、今紹介された大きないろんな不満っていうのもそういうところか出てるというのがございますね。

小野 アナウンサー
それをなんとかするための策というのは、ピケティ先生は何かおっしゃっているんでしょうか。

山形 さん

はい、実はかなり議論を呼んでいるんですけれども、彼は単純です。
金持ちが有利ならば、それに税金かけろと。

デーブ さん
結構かけているんじゃないですか?

山形 さん
もっとかけろと。特に金持ちって、お金をたくさん貯めているとたくさん見返りが得られますので、金持ちほど税率をあげろと。それを世界的にやれと。

小野 アナウンサー
そうしたら、お金持ちは外国に行ってしまうんじゃないですか?

山形 さん
だから世界的にやれと。

竹田 解説委員
でも、ピケティさん自身が「これはユートピアだけどね」と言っている。

小野 アナウンサー
他にピケティ先生は何かおっしゃってないんですか?

山形 さん
彼はこれを思いついたんで、こればっかり旗を振るんですけれども、実はもっと言っていて。
教育をもっとちゃんとしろよっていう話とか、所得税とか相続税とかももっと頑張ればいいんじゃないとか、奨学金であるとか社会保障であるとか、そういうのをもっと頑張ればいいんじゃないかってことをいっぱい言っているので、あの本が厚くなっているという。

竹田 解説委員
つい先日も国会で、まるでピケティ論争みたいな、「ピケティさんが"格差"があると言ってるぞ、これどうするんだ」っていう論争になったんですよ。
で、やはりまずピケティさん自身も言っているんですけど、この格差是正のために何が有効かっていうと、基本的に、経済成長っていうのがまずある。
問題はとにかく、働いている人の所得よりも働かない人の所得の方が大きいという、ざっくり言うとそういうことですね。ですから、働く人の所得をあげなきゃいけない。
ここを上げるためには、つまり経済成長を上げなきゃいけないわけだから。

実際、これがホントにこうなるのは理想論ですよ。
だけど、できるだけg(経済成長率)を大きくして少しでもr(資本収益率)に近づけなきゃいけない。それがまず経済成長だというわけですね。
だから、今、安倍政権でアベノミクスをやってますよね、三本の矢で。
だからまず、その経済成長やるっていうことがその点では合っているんですけど。

土堤内 さん
だけど、そこに日本の抱えている大きな人口構造の問題があるんですよ。
つまり日本は今、世界一の高齢社会です。g(経済成長率)を増やそうと思っても、働く人がどんどん減ってるわけです。
だから確かにできるだけ「r=g」という関係に近づけたい、経済成長したい。
だけど、そのgを成長させる働く人の人口がどんどんと今減っている。
その中でじゃあどうやって日本が、みんな幸せに豊かに生きていけるかっていう問題を解決しなきゃいけない。

デーブ さん
あと、もう1つの原因は、非正規が多いっていうのは、企業がただでさえ多すぎる正社員を守るためにケチってる面があるんですよ。
だって、孫請けなんかアメリカで聞いたことない言葉なんですよ。
株主、つまり、会社の株価を優先しているという企業体質もどんどん変えなければならないと思うんです。

土堤内 さん
ただ実は、経済成長させるために、より効率的にするために、非正規という雇用を増やしてきた。
だけど今、非正規の人が増えていることが実は少子化の大きな理由なんです。さっきの人生すごろくにもあったように。
で、それによって少子化が進んで労働力人口が減るっていう。つまり、アクセルとブレーキを同時に踏もうとしてるわけですよ。
経済を成長させようとしていることが、結果的には労働力人口を少なくして経済の成長を押さえてしまっているという。
その根本のところをなんか変えなくちゃいけない。

視聴者の声

そりゃ、格差ありすぎですよ。格差のトップクラスが経済について舵取りしてるわけですから。

お金持ちや上位の人間だけが社会を変えられるそれが今の日本ではないでしょうか。

小野 アナウンサー
何か変えようというよりもむしろ、あきらめというムードを感じるんですね。

デーブ さん
でも、確かに大企業のCEOに何十億と法外な給料を払ってるけれど、そのおかげで会社自体が伸びているんですよ。その人の知恵というか経営能力で。
で、実力がなければ1年2年でバイバイという。それが自由経済の根本ではないですか?

土堤内 さん
その利益がみんなに行き渡ればいいんですけれど。
今朝僕、ここへ車で来たんですけれど、その運転手さんがこう言われていました。
「今、ガソリン価格がこれだけ安くなって、そういう意味では運輸業界はもうかっている。だけど、その利益は自分たちのところには全然返ってこない。」
だから、会社がもうかるということと個人が豊かになるというとこに分断が起こっているんじゃないかなと。

竹田 解説委員
それとピケティさんが言ってるのは、とにかく資本主義が続く限りは必然的に、仕組みとして格差が生まれると言っているわけですから。
単なる競争の結果こうなったってことじゃなくって、仕組みとしてそうだって言うからには、やはり富の再分配、つまり"格差"を埋める政治的なことを国がやる責任がある、ということになるわけです。
ですから、きちっと経済成長をやるのがまず大前提ですけれど、その上できちっと富の再分配をしないと。
相続税も今までよりも上がって、多くの人に相続税を払ってもらうことになりましたけれど、やっぱり豊かな人にはもう少し負担をしてもらったり、我慢をしてもらったりいうことは、当然、経済成長と同時にやらなきゃいけないっていうことですね。

土堤内 さん
"格差"の問題で大切なのは、貧困で悩んでいる人だけの問題じゃないということです。
裕福な人だって、"格差"が広がっていったら自分たちの暮らしが不安になる。
例えば治安が悪くなったりとか、そういうことでマイナスの影響を受けるわけです。
だから、"格差"を是正することは、自分たちにとっても幸せになるために大事なことなんだっていうことをこの本は言ってるんじゃないかと僕は思います。

山形 さん

そうですね。その本の最後の部分なんですけれども、やっぱりみんなもっとお金に関心をちゃんと持つべきだと。
あともう1つ。お金を持っている人、例えば先ほどデーブさんのおっしゃった大企業のCEOさん。
そりゃ、俺の実力で会社をデカくしたって言うけれども、実はよく見ると大したことをしていない人もたくさんいる。
ちゃんとそういうのを見て、これはおかしいよとか、ここは何とかしろ、それからあと、こういう生まれつきの格差はおかしいじゃないか、というのは、ちゃんとデータを見ろ、諦めるな、そこでちゃんと声をあげろ、というのもこの本の重要なメッセージになります。

小野 アナウンサー
この文章の後に、何かくるんですか?

山形 さん
だから、放置しておいて何もしなくて、それが一番貧しい人の利益になるってことは絶対ありえない、というのがピケティさんの一番最後の言葉になっていました。
ですから、そこで放置すればいいとか、現状に甘んじずにもっとなんかしようと考えるべきだというのは、そのためにこの本を買えとはいいませんが、図書館でいつか読んだりなんかして考えていただければと思っています。

竹田 解説委員
ピケティさんは、政治の問題だと言っているんです。
もう経済の仕組みの問題じゃない、これは政治の判断の問題なんだって言っているわけです。
だから、それはわれわれがきちっと政治に要求しなきゃいけない。

小野 アナウンサー
なるほど、その政治っていうのは、政治家の人たちがやっていることじゃなくて、私たちが選んでることだと。

竹田 解説委員
そうです。きちっとわれわれが投票行動なりなんなりできちっと考えて、われわれが判断して行動しなきゃいけないってことですね。
あと一点、先ほどの人生すごろくで、非正規は国民年金ってありましたけど、非正規の人は国民年金の人がどうしても多くなるっていうことの意味なんですけれど、つまり、そういう社会保障の充実も、格差是正には必要になってくるという話ですね。

視聴者の声

「格差を社会構造のせいにして努力することを諦めるって考えはよくない気がする。」

「ネガティブな流れ、変えてほしい。」

「格差はお金の格差。幸せの格差につながらない社会になったらいいと思います。」

小野 アナウンサー
頑張ろうっていう声もだんだん増えてきました。

山形 さん
ぜひそういう気持ちを持ち続けて言っていけば、r(資本収益率)とg(経済成長率)が昔、逆転したというのも、戦争のせいもあるんですけども、政治があって、国民がそういうふうにしなきゃいけない、そういうふうにしないと国の存亡がかかっている、というのが出てきたからであって。
今もみんながそういう意思を持てば変わるんだ、変えられるっていうのがこの本の大きなメッセージです。

小野 アナウンサー
どうもありがとうございました。

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