2015年05月30日放送放送内容まるわかり!

どうする"住まいの貧困"~川崎 簡易宿泊所火災から考える~

10名が亡くなった川崎市の簡易宿泊所の火災。 十分な防火対策がとられていなかった可能性が指摘されています。 宿泊者74人のうち70人が生活保護を受給。 長期滞在していた高齢者も少なくなかったと見られています。 もともとは工場や港で働く労働者のための簡易宿泊所。 なぜ今、貧困状態の高齢者の"ついの住みか"となっているのか? 誰もが安心・安全に暮らせる住まいを確保するためにはどうすればいいのか? 深読みします。

今週の出演者

専門家

平山 洋介さん(神戸大学大学院 教授)
藤田 孝典さん(NPO法人ほっとプラス 代表理事)
山﨑 登(NHK 解説委員)

 

ゲスト

田村 亮(タレント)
宮崎 美子さん(女優)


小野 アナウンサー

川崎の簡易宿泊所の火災をきっかけに、自分の老後の住まいのことが心配になってきたっていう方がいったいどれくらいいらっしゃるかというと、今回700人のアンケートをとって、結果が49%。
もう半分近い方が不安を感じていらっしゃいます。
たくさんの声もお寄せいただきました。



実際、簡易宿泊所にいま滞在してらっしゃる方の声もいただきました。

どうしてこんなにみんな、老後の住まいのこと心配しなきゃいけない世の中になってるんだろうというところをきょうは考えていきます。
まずは徳永アナウンサーのプレゼンです。


プレゼンテーション①

徳永 アナウンサー
どうして1人暮らしのお年寄りの方が簡易宿泊所に事実上住んでいたのかを深読みしていくと、いまの皆さんの声、なるほどと思ってきました。

この方、深読作さんとしましょうか。どうしてこの方が簡易宿泊所に住まなきゃいけなかったのかを見ていきます。
お仕事はずっと工場や建設現場で働いてきた方です。よく言う非正規で、ずっと1人暮らしで両親も亡くなって、いま身寄りのない方です。
読作さんも若いころは夢がありました。

マイホームでした。
マイホームには憧れましたが、はしごがかかってないのでお分かりのとおり、夢でしかなかった。

マイホームは、住宅ローンを組まなきゃとても建てられません。これが壁になって、考えもできなかった。
だいたいマイホームっていうのは、多くの場合、正社員になって、家族をもうけて、誰も倒れずアクシデントもなく、給料は上がっていき、貯金ができるから払えるものですが、そもそも非正規・身寄りなしの読作さん、そんなのはとても無理です。

だから現実は、賃貸住宅に若いころから住んでいました。
現役時代はよかったんです。働きながら暮らしていけましたから。
ところが、体力にも限界がきて、年金暮らしになります。

非正規の方の多くが、厚生年金はなくて国民年金だけです。
手取りはもちろん下がりますから、安いアパートに借り換えようかなと思ったんですが、一度このはしごを下りるとまた壁がある。
実際、いまこうなんです。

高齢者お断り。
国の調査のデータがあって、大家さんに聞くと。

6割の方が高齢者の方の入居に拒否感があるって答えているんです。
それから、孤独死への不安っていうのがあります。
さらに、お金の問題だけじゃ必ずしもなくて、いちばん大きいと言われているのは、身寄りのない方が増えている。
アパートを借りた時のこと覚えていませんか?保証人って書かされませんでした?どんなに自分に蓄えがあっても、もしも何かあっちゃいけないから、代わりに家賃払える人を教えてくださいっていうのが保証人です。
いま無縁社会って言われて相当たちますが、身寄りがいない、身寄りがいても縁を切っているという方も少なくなくて、こういう方はこれだけ空き家がニュースになっていても借りられないと言われています。
でも、まだありますよね。

困った時は、公営住宅。都営住宅、県営住宅などのように、自治体が税金を使って団地などを建てて、安い家賃で低所得者の人に住んでもらう。
でも、こんな現状です。

満員。
財政難です。自治体もゆとりがなくて、新しい公営住宅がほとんど建てられていない。
実は東京都、この15年間新築の公営住宅を建ててないんです。
倍率が、自治体によっては、都内は30倍から、果ては300倍ってこともある。抽選で。
ほとんど空いてないから、応募しても、本当にくじのような状態なので、入りたくても、読作さん、また入れない。

では、老人ホームってどうかなって思うわけですよ。
でも、元気なうちに入れるところというと、有料老人ホームに行かなきゃいけない。

それは、月平均して17万円です。
読作さんのようにコツコツ働いても国民年金だけ、蓄えなしって方は全然届かない。どこにも住むつてがないというのが現実。
でも、困った時、最後は憲法を読むと、25条っていうのがあるんですね。

つまり「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」が誰にもあるはずですよ、この国は。
これに基づいて、ある制度が1つありますよね。生活保護。
セーフティネットと呼ばれるものです。

だから、読作さん、最後はここに頼ろうとします。生活保護は一口に言ってもいろんなメニューがありまして、家に困ってる人のために家賃を出してもらえる「住宅扶助」という制度があります。
これ、どこの自治体に住んでいるかや家族構成によって額が変わるんですが、最ももらえるケースで、1人暮らしの場合はだいたい最大6万9800円まで家賃を出してもらえるんです。
読作さんも窓口行ってこの住宅扶助もらって、家探そうと思うんですが、現実はこう言われます。

宮崎 さん
いやいやいや。

小野 アナウンサー
だから、住むところないから。

徳永 アナウンサー
生活保護って市町村単位でやってることが多いから、その市町村に本当に住んでる人かっていうのが分からなきゃ出せないっていう言い分もあると。
住んでいる証明書を出してくださいというケースもあって、読作さんは困ります。
行くところはないんです。でも、とりあえずどこかに入らなきゃいけないとなります。
そこで、ニュースで今回出てきたこれの話。

簡易宿泊所。"ドヤ街"ってよく言いますよね。これ、"宿"を逆さにして呼ぶ俗語のようなもの。
港の近くや建設現場の近くにこういう簡易宿泊所ができて、一定期間、作業員の人がやってきて寝泊まりをしながら作業をする。日雇いの労働をする。
こういう人たちがいまの日本の礎を築いてきたんですが、現実はニュースでご存じのとおり、お年寄りが事実上、住んでいる。

これ、あくまで一時的に泊まる場所ですから、そもそも狭いんですよね。
私も川崎の簡易宿泊所を見たんですが、だいたい畳2、3畳。一時的に住む場所。風呂・トイレも共同という環境なんです。
でも、ここに滞在すれば、役所からは住宅扶助をもらえることになるわけですよね。

看板見ると、川崎の場合は1泊2000円前後です。
何が得かというと、宿泊所ですから電気代・ガス代、全く払わなくていい。宿だから保証人の欄なんて求められない。すぐにここに滞在できます。
ここに住んでいるという証明もできますから、とりあえずここにっていうのは分かるという事情もあります。

実際、今回火事になった川崎の2軒の簡易宿泊所では、宿泊者73人中67人の方が、実際生活保護を受け取っていたことが分かっています。
今回のニュースではこの川崎の宿泊所が取り上げられましたが、思い返せば、ニュースはいろいろありましたよ。

法律に事実上違反しながら、小部屋にたくさん人が住んでいる家っていくつも報道されていますし、ネットカフェに住んでいる状態の人というのも取り上げられています。

表向きは分からないけど、家に困った人がこういうところにひっそりと住んでいる。
これが憲法25条があるはずの、日本の住まいのいま。
だから、半分の人が老後の住まいに不安を感じている。少しお分かりいただけたのではないでしょうか。

宮崎 さん
簡易宿泊所が住所になっている時点で、役所は分かって放置しているということですよね?

山﨑 解説委員
相談に行った時に、とりあえずここへ住んだら生活保護を出してあげますよっていうふうに紹介された人もいるんです。
そうしないと、困っている人に行政も生活保護費を渡してあげられないから。
それも行政の窓口の人にとっては親切心。

藤田 さん
私は年間300人の相談を受けているんですが、いま、健康で文化的な住居を得られないって方たちが相当数いて、年間300人のうちのほとんどは、脱法ハウスとかネットカフェ難民になっている方とか、あるいは、無届けの介護ハウスから出たいっていうのとか、そういった施設から、ほかにちゃんとした場所に住めませんか?っていう相談が非常に多いんですね。
これは高齢者に限らず若者にも多くて、国民全体にちゃんとした家がないっていうことが広がっている状況があるんですよね。

小野 アナウンサー
いままで住んでいたところを出てしまうきっかけっていうのはいろいろあるようなんですけれど、冒頭でお声をご紹介した簡易宿泊所に暮らす51歳の男性は、31歳の時にうつ病にかかって、勤めていた会社を退社したそうなんです。
そのあと180日で失業保険が切れた時に賃貸マンションの家賃を滞納してしまって、退去を迫られた。それで住むところがなくなってしまったそうです。
この方は本当に切実な声をお寄せくださっていて、「今後、年金のない高齢者も増えていく中で、簡易宿泊所に暮らす高齢者がますます増えていくことになるのではないかと感じています。自分もそのうちの1人です。
私のような人間を反面教師として何か対策を考えないと、日本は将来大変なことになるのではないかと簡易宿泊所で暮らしながら日々感じています」とおっしゃっています。

平山 さん
日本の住宅に関する政策はですね、戦後ずっと一貫して「家を買ってください」という政策をずっとやってきたんですね。
公営住宅が非常に少ないですよね。とにかく家を買ってくださいという政策をやってきて、ところが、いまになって家を必ずしも持てない人が非常に増えているということですよね。低所得の方が非常に増えています。
1つ目のグループは、非正規雇用の方々が増えました。90年代にどっと増えた。
これを第1世代と呼んでいるんですが、この方々がどんどんどんどん年が上がってきて、50歳、60歳になるとどうなるかっていう問題が1つありますね。
もう1つは、低所得の高齢者が非常な勢いで増えているという問題があります。
3つ目に、結婚していない方が非常に増えてきて、日本の特徴なんですけど、結婚しないと家を買わないっていうのがありまして、2030年に男性の3割くらいが生涯未婚、女性の2割が生涯未婚ということですね。

持ち家率。持ち家を持っている人が若い世代でぐっと下がっている。
若い世代で家を買うのがかなり難しくなっているってことが分かるかと思うんですね。
80年代に下がったのは、バブルで値段が上がって家買えなくなったっていうことですよね。
90年代、2000年代になって、価格下がってみんな家を買えるようになったかっていうと全然買えなくて、今度は所得が下がって買えなくなったということと、あと結婚しなくなったということですね。
ですので、とにかく家を買ってくださいっていう政策のリアリティーというか、いまでも合理的なのかどうかっていうことを考えてみる必要があるかなと思います。

視聴者の声

「住居の問題は高齢者だけではなく、若者でも深刻な問題です。」

小野 アナウンサー
いま困っている人がいるってことは、ネットカフェや脱法ハウスで夜露をしのいでいる若い人たちは、老後どんな状態になってしまうのかという不安だと思うんですよね。

田村 さん
僕らの業界は、芸人はもともと食えないから安いところに住んだり、追い出された時に先輩の家に住んだりで、とにかくコミュニティーがあってやっているんですけど、そういうのがない人がネットカフェとかに行くのも、分からんではないですね。

平山 さん
いま、若い世代で非常に増えているのが、親の家にずっと住んでいて、昔でしたら25歳、30歳になったらだいたい家を出ていたんですけど、ずっと親の家におられる方が非常に増えています。
ただ、地方から東京に来られた方はそうはいかないので、いろいろ苦労をなさるという状況ですね。

宮崎 さん
でも一方で、空き家とか空き部屋って増えているような気がするんですけど、うまくいかないものなんですかね?


プレゼンテーション②

徳永 アナウンサー
空き家という話が出ましたので、実は同じことをおっしゃっている藤田さんのアイデアをご紹介します。
空き家、空き家って言っているのは、賃貸の空いてるところも入ってるんですね。
これをどうにかできないのかというのが藤田さんのお考え。
われわれも探してみたら、新しいことをしているところを見つけました。
ここです、福岡。

福岡も、家を借りたい1人暮らしのお年寄りは多いんですが、一方で不動産会社さん、貸したくないという人が7割を超えているってデータもあるぐらい、やっぱりミスマッチでした。
話は同じなんですよ、保証人の話や孤独死の不安。
そこで福岡市は考えました。

社会福祉協議会と一緒になって「大家さんの不安、解消します!」
保証人がいない方のために、手数料も若干必要ですが、われわれ責任をもって保証人になりますから、安心して借りられますよ。
それから、緊急時に連絡先がない方のために、大家さんに私たちの連絡先伝えていいですよっていうサービスもしている。見守りサービスなんていうのが、民間でどんどん増えていますよね。
中には、もしものこともあります。

「この不安を解消します」と呼びかけた中には、葬儀屋さんや遺品整理の業者さんが。
何が起きたとしても、私たちが作ったチームの業者のどれかが行きますので、不安に思わないでくださいと呼びかけたところ。

思いどおり、家が借りられるケースが月に何件かのペースで始まっているそうです。
これ何がいいかっていうと、当然お年寄りは借りられて安心します。不動産会社は物件が埋まるので喜びます。
もう1つ、民間の業者がお客さまをつかまえられます。これは持続できるんじゃないかといま注目されている話です。

小野 アナウンサー
こういうのって、どうしてできるんですか?

山﨑 解説委員
これ、いま国のほうで、全国でやろうとしてるんです。

住宅セーフティネット法っていう法律が平成19年にできまして。福岡市でやっているように、社会福祉法人とかNPOとか行政とか不動産業者が一緒になって、低所得の高齢者で住む場所がない人に空き家を紹介したり、その空き家の人が「身寄りのない人は困りますよ」と言ったら、その人のために保証人をあっせんするような仕組みを作って、これをやろうとしてる。
この仕組みは、いま福岡市の例であったように、市区町村レベルでこの仕組みがないと機能しないですよね。
ところが、いま全国にこの仕組みがある市区町村って、いいところ11か所くらい。
都道府県レベルでは37あって、各市町村で作っていきましょうよっていうことはやっているんですが、まだ現場での仕組みができてないから、全国的に見ると福岡のようなことをやれているところはほとんどない。今回の川崎市にもこれはありませんでした。

小野 アナウンサー
福岡ではどうしてできたんですか?

藤田 さん
結局、行政と社会福祉協議会とかそういった方たちが、高齢者からこんなに悲痛な叫びがあるっていうことをよく聞いているんですよね。
なので、これだけ家が買えない人がいるっていう現実に向き合って声を聞いて、それで政策をどうしていこうかっていうことを考えていく中で、この取り組みが始まっていくことになったので。
なので、実態としてはこれだけたくさんの困っている人がいるんだよっていうことに、どう制度、政策が向き合ったらいいか。
あとは、空き家がたくさんありますから、それを空き家にしておくよりは貸したほうがいいよって、税金のインセンティブを働かせるとか、なるべく活用するような制度・政策を進めていく必要が早急に必要だと思います。

平山 さん
あと、空き家活用で必要なのは、家賃補助の制度だと思うんです。
でも、先進国っていうんですか、OECDの中で家賃補助の制度をもってないのは、日本と、あと2、3か国ぐらい。
要するに、たいていの国は家賃補助の制度があるんですよね。
日本は、"政府"ではなくて"会社"が家賃補助をやってきた。それが日本の大きな特徴なんですよね。

田村 さん
うち、してくれないですよ。有名ですからね、うちの会社は。

平山 さん
会社によって家賃補助のあるなしが大きく違ったり、会社もだんだん厳しくなってきて、家賃補助を削っていったり。
普遍的な家賃補助の制度っていうのは、そろそろ日本でも必要なんじゃないかと思います。

山﨑 解説委員
住宅扶助の話がありましたね。生活保護でもって住宅扶助が最大で69800円って。
ことしの厚生労働省の社会保障審議会の報告書でも、住環境っていうのは大事なんだということは書いてあるんですが、もろもろの財政難の中で、この住宅扶助が削られる方向にある。

小野 アナウンサー
削られる方向?

田村 さん
いちばん最初にやらないと、回らないイメージがあるんですけど?

山﨑 解説委員
それはたぶん、みんなでもって、社会保障とか住宅というもの、あるいはセーフティネットっていうものを、どういうふうに考えるかっていうことにかかるんですよね。
そこが、今までずっと、平山先生がおっしゃるように"持ち家制度"を中心にしてやってきた。
ところがこれだけ高齢化社会になってきて、しかも、1人暮らしの高齢者世帯がどんどん増えてきましたから、世の中の仕組みとか制度を社会の状況に見合ったものにしていかないといけないっていう。
たぶん、そのちぐはぐなことがいま起きているんだと思いますね。

藤田 さん
「アフター・ハウジング・インカム」っていう言葉があって。
いま、私たちのところに若い相談者がたくさん来てるんですけども、非正規の方で月収16万円とか18万円のうち、都内に住んでる方だと家賃が10万円とか12万円かかるんですよ。
「アフター・ハウジング・インカム」って、収入の中から家賃を引かれたあとの手元に残る額がどれくらいなのかっていう額なんですけれども、それが、ほとんど手元に残らないケースもあるし、手元に2、3万しか残らないケースもあるので。
住宅が、いかに負担が大きいかっていうことが言えますよね。

小野 アナウンサー
ローンを背負ったりした場合も同じですよね。
使えるお金はほとんど残ってないっていう状況になる。

宮崎 さん
いっそ、条件は選べないけどとりあえずどこかに住めますよっていう保障がもしあったら、ものすごく安心して現役世代も消費もできるし、景気もよくなるのかな、なんて夢想することがあるんですけど。

徳永 アナウンサー
まさにいま宮崎さんがおっしゃった、住むところが最低保障されればっていう話。

それを考えるきっかけを教えていただいたのが、住宅政策のご専門の平山先生。
家賃補助のお話も出ていましたが、こういった公営住宅もありますよというお話です。

ヨーロッパなんですけど、海外のこういうものを紹介していただきました。
公営住宅と言わずに、ヨーロッパは「社会住宅」っていうのがある。
何が違うかっていうと、公営住宅って日本は、要はほぼ100%税金ですよね。
社会住宅は、「民間企業さんがんばってください。国や私たち公は、利子なしとか低い利子でお金を貸してあげます。税金で応援しますから、民間さんどうぞ建ててください」っていう考え方。
家賃も市価の半額くらいで済むんだそうです。

数が結構多くて、国によってはすべての住宅の中の2割から3割が社会住宅っていう国もあります。
日本の公営住宅のイメージとだいぶ違います。

民間ですから、やっぱりいろいろと工夫するというか、画一化されていないんですよね。
1人暮らしの社会住宅でも、最低40平米以上ある。
社会住宅コレクション、ちょっとご覧いただきましょう。

宮崎 さん
あっ、きれい!

田村 さん
充実してるな!

徳永 アナウンサー
これはドイツの社会住宅。

小野 アナウンサー
おしゃれ!

徳永 アナウンサー
フランスいきますよ。はい、フランス。

宮崎 さん
これいい!

田村 さん
住みたいってなりますよね。

徳永 アナウンサー
もう一丁いきましょうか。

田村 さん
デザイナーズマンションみたい!

徳永 アナウンサー
要は、あくまで民間企業が建てていますので、差異化しようといろいろ競争をするということもあるんだそうです。
なんでこんなことが行われるかというと、実は基本的な考えが日本とだいぶ違うんです。ヨーロッパってこういう考えが多い。

"家とは権利"だと。
日本は基本的には"最後のセーフティネットは、お金を渡すからがんばって"。
ヨーロッパは基本的には"まず家をなんとかしますから、がんばって"という考え方。
フランスには、住宅人権法という基本的な精神を書いた法律がわざわざあるぐらいなんです。これが大きな違いなんです。

田村 さん
なんで、ものの考え方が日本とは変わってきたんですかね?

藤田 さん
先ほどから平山さんがおっしゃっていたとおり、日本は家は買うもので、買うまでは我慢して一時的な滞在場所にいてくださいねっていうことなんですけども、この一時的な滞在場所にずっといざるを得ない人がたくさんいて、家がちゃんとした状況で提供されてないっていうことですね。
買うものだっていう"消費財" として家が見られていますから、家は権利じゃないっていうのが、日本のいまの状況になっちゃってますよね。

平山 さん
日本の場合、公営住宅は4%ぐらいしかないんですね。
4%しかないとどうなるかっていうと、4%分の働きしかしない。ところが、数が2割、3割になってきますとマーケットに対する影響力があるので、競争原理を働かすので、競争するわけですね、民間と社会住宅が。マーケット全体の家賃を下げる効果を持つ。
ですので、社会住宅とか公営住宅というと市場経済に反するような印象があるかもしれないけど、そうではなくて、マーケットを上手に使うための手段だというふうに言えるんです。
それともう1つ。ヨーロッパの社会住宅もそうなんですけども、"投資"なんです。
住宅は作ると、長く使えるんですよね。住宅を作る時にはたくさんお金がいりますので、借金しますよね。20年ぐらいで借金が返し終わりますよね。
そのあと、管理費だけで安く立派な住宅が残るということが重要なんです。

小野 アナウンサー
でも、日本の住宅はだいたい30年くらいで耐久が...。

平山 さん
そうです。ですから、日本の家は、建てて、借金返し終わった頃につぶして、また建てて、また借金を返すところから始まるわけで。

田村 さん
30年、40年たったらさすがに建て替えな、っていうイメージがある。
どれくらいで老朽化するかっていうのは、ヨーロッパと価値観が違うってことですか?

平山 さん
いろんな理由があって、建築の材料が違うとかいう意見もありますけども、日本の場合、いちばん大きな違いは中古住宅の市場が非常に少ないということですね。
欧米の場合は、住宅の8割が中古住宅です。家を買うと、自分の家がマーケットからどう評価されているか常に気にしますので、ちょこちょこちょこちょこ手を入れる。

小野 アナウンサー
メンテナンスもちゃんとやると。

平山 さん
日本は、家を買うと、言葉は悪いですけど、住み潰しちゃうようなところがあってですね。

小野 アナウンサー
だけど、先生のおっしゃっていることはつまり、これからどんどん社会住宅を日本でも建てたらどうかっていうご提案ですよね?
だけど、いま日本は何をやるにもお金がないじゃないですか?

平山 さん
お金はあんまりないんですけども、民間の借家は毎年たくさん建てているわけで、そこに少しお金を入れていって、社会住宅に近づけていく。

小野 アナウンサー
いいものを造るようにしたらいいと。

平山 さん
いま、投資をすると、あとでいいことをやったと思える日が来る。

小野 アナウンサー
ただ、ヨーロッパだからできることで、日本ではどうなのかなと思うんですけど。
実際にやろうとすると「こんな立派な家を、低所得の人のために国のお金を使って建てるの?」っていう反発がありそうな気がするんです。

宮崎 さん
ヨーロッパでは、社会住宅は低所得者しか入れないんですか?

平山 さん
2割、3割になってきますので、中間所得の人もたくさん入っています。

小野 アナウンサー
だから、みんなが入れるんですよっていう、呼びかけをすればいいってことですか。

山﨑 解説委員
あとは、セーフティネットというものを社会の中でどういうふうにみんなが望むかっていうことですよね。

ヨーロッパの社会保障の先進国では、「福祉は住宅に始まり住宅に終わる」っていうふうに言われているんですね。
さっき宮崎さんがおっしゃったように、住むところがあればがんばって、だめになってもここで支えてもらえる、っていうふうに思うじゃないですか。
だから、そういうものを社会のセーフティネットとして用意するのかしないのか。
それは社会全体でコンセンサスを得ながら決めていく必要がある事柄ですよね。

平山 さん
高齢者がこれから4割くらいまで増えるわけです。
そうすると、社会保障がどんどん必要になりますよね。でも、社会保障って基本、お金を配ることです。お金は使ったらなくなるじゃないですか。
でも、住宅を建てて、ていねいに使っていけば100年くらい使える。
だから、いま最後のチャンスだと思うんです。いまちゃんとした住宅を造れば、あとは借金さえ返せば管理費だけの立派な家が残る。
なので、住宅は社会保障の中でも、投資としての性質をもっていて、いまやるべきだと思う。

田村 さん
住むところが安心になると結婚も考えられるようになるから、出生率も上がっていくっていう考えですよね。

藤田 さん

実は火事は、毎年のように繰り返されていることで、劣悪な環境で火災が起こる。
その時その時、毎回ブームのように、これは改善しなきゃねっていうことを言ってくるんですが、いちばん本質的に改善するべきことは"住まいの貧困"をなんとかするということなんです。
無届け高齢者施設で、2011年にはアパートで、大阪ではビデオボックスで、火災になって犠牲者が出ましたが、ああいうところで生活せざるを得ない人たちがたくさんいるっていうことですね。
これをもう少し、ヨーロッパのような形にするしても、家賃補助を入れるにしても、制度を変えていかないと難しいっていうことですよね。

小野 アナウンサー
社会住宅のイメージを自分たちの頭の中で持てるようになるというのは、かなりの発想の転換ですよね。
そして、賃貸住宅を困っている人と結びつける取り組みも、誰かがやろうよって言わないと始まらない気がするんですが、どうすればそれができる町になれるんですか?

藤田 さん
私もずっと、空き家を活用しようということで、ホームレスの人とか高齢者の方の住まいを提供していくということもやっているんですけれども、いちばん大きいのは貸し手ですね。
大家さんが「ちょっとこの人に貸すのは怖いな」ということを思ってるんですね。
でも、実際に私たちがそういった方たちに貸してみると、そんなに怖いことって多くなくて、先ほどの福岡の例のように、亡くなった時どうしようとか、保証人どうしようかって、いくつかのリスク要因を削っていければ、そういった人たちにおうちを提供してくれる大家さんって、日本にまだまだいると私は思っていて、最近だと空き家バンクっていうことで、空き家を活用していこうってことが広がってきてるんですよね。
なので、どこかが少しリスクを肩代わりしながら、行政とか社会福祉協議会が中心となっていただきたいと思うんですが、そういった方たちが、家のない人たちに積極的に門戸を開いていただきたいって思います。

小野 アナウンサー
行政や社会福祉協議会が「よし、やろう」っていうふうになるのは、何があると、そうなれるんですか?

平山 さん
やっぱり生活が苦しい方が増える時代になってきて、皆さんの議論の中心は、所得なんですね。
とにかく給料が減っているんだ、所得が低いんだっていう。
けれども、収入はもちろん重要ですけども、住宅に関する議論は非常に少なくて、給料の話には皆さんすごく敏感なんですけども、住まいの安定が非常に重要だっていうところには話がいかない。
公営住宅でも、社会住宅でも、家賃補助でも、手段はいろいろあります。
でも、その前にやっぱり、住宅が、落ち着いて住めるっていうことがすごく大事なことだということを想像する、想像力が重要だと思います。

小野 アナウンサー
自分がくつろげる場所があって、好きな時にお風呂に入り、トイレに行ける。

田村 さん
賃金が上がることを考えたりするけれど、結局それは、家賃が助かるっていう。

平山 さん
賃金が上がっても家賃が上がるだけですよ。上手にやらないと。

藤田 さん
朝起きて、窓がない部屋で、シミのついた布団から起きて、雑音も聞こえて、そこでこれから1日がんばって働こうって思えるかっていうことですよね。
健康で文化的な生活自体は住まいで決まっちゃうんですよね。
朝起きて窓を開けて、すばらしい景色があって、コーヒー飲むだけで、「じゃあ、がんばろう」って意欲が出るはずだと思うんです。

山﨑 解説委員
火事が起きたりすると、火事は社会のひずみをあぶり出しますけれど、本当はみんなでもって、ふだんから考えなくちゃいけない。

例えば、「住生活基本計画」というのがあって、最低限の生活をするために、単身者でも広さは25平方メートルは必要ですねって書いてある。
でも調べてみると、生活保護を受けている単身者でこの広さを満たしている人は46%しかいない。もっと劣悪なところで暮らしている人がたくさんいる。
そういう人の中には、先ほどの声にもあったように、若い時に一生懸命働いて、病気になってやむを得ず...っていう人もいるわけです。
そういう人たちのセーフティネットをどうするかっていうことを、こういう番組なんかをたくさん作って、みんなで議論しなくちゃいけないですね。

藤田 さん
生活保護受給者の方の住まいについても、補助金も生活保護費も削られてきているところがあって、これをまず止めないといけないんです。
だから、もう生活保護受給者の問題だけじゃないんだということですし、あとは、ここが削られていくと、一般世帯も普通に暮らせなくなってきちゃうということになりますので、一部の不正受給は取り締まらないといけないんですが、それが原因で、家賃を削ってもいいとか、生活保護を削ってもいいというのは、ちょっと理解がしがたい状況があると思います。

小野 アナウンサー
どうもありがとうございました。

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