土曜の朝はしっかり!じっくり!週刊FU.KA.YO.MI

生放送!

NHK総合 毎週土曜 午前8:15〜9:28

―――

放送内容まるわかり!

2017年02月11日放送

トランプ政権3週間 世界・日本はどう向きあう?

就任後、「TPPからの離脱」「メキシコ国境への壁の建設」などの政策を次々と実行に移そうとしている、アメリカのトランプ大統領。先週にはシリアやイラクなど7か国の人の入国を一時的に禁止。これに対し、国内外で抗議の声が広がっています。 そんななか今月10日には日米首脳会談が開催されます。トランプ大統領率いるアメリカと日本はどうつきあっていけばいいのか?トランプ大統領は世界をどう変えていくのか?深読みします。

今週の出演者

専門家

久保 文明さん(東京大学法学部 教授)
横江 公美さん(政策アナリスト・東洋大学客員研究員)
三浦 瑠麗さん(東京大学政策ビジョン研究センター 講師)
髙橋 祐介(NHK 解説委員)

 

ゲスト

綾部 祐二さん(タレント)
香坂 みゆきさん(タレント)


小野 アナウンサー
日米首脳会談、どうご覧になってますか?

綾部 さん
僕が正直、具体的にいろいろ聞きたいとこなんですよ、本当に。

久保 さん
非常に印象的だったのは、トランプさんが1980年代から抱いていた日本観、例えばトランプさんは1987年に、日本を批判する新聞広告を出したことすらあるんですよね。しかも、安全保障をアメリカにただ乗りする、そういう日本観で、それをずっと口にしてきて、先週ぐらいまでそれに近いことを言っていた。為替操作とか、自動車とか。
それをある意味で全く放棄して、これまでの大統領とほぼ重なる日本観に転換した。その変わり身のすごさっていうんでしょうかね。

香坂 さん
それは転換なんですか?いまだけ?

久保 さん
公式の共同声明にも書いてますので、忘れちゃいましたとか、あの時の気分の発言っていうことはないと思いますね。

三浦 さん
安全保障に関して、相当緻密に打ち合わせをしてきた感はあるんですよね。ただ、記者との質問のやり取りになると、トランプさんは、安全保障上の中国との関係っていうのを経済問題に置き直して答えてしまったり、実は、関心の所在っていうのは意外に経済にしかないっていうところも分かったんです。

小野 アナウンサー
だから、原稿を読んでたんですね。

横江 さん
そうだと思います。今回ね、非常に優しかったと思うんですよ。その理由は、イスラム7か国の入国禁止令がすごく大きい。ヨーロッパは同じように難民を抱えるところですので、トランプ大統領を批判する。そうしますと、7か国の先進国会議とか首脳会談とかになったりする時に、批判しない国っていうのは日本だけになるわけですよ。そうなった時に、安倍首相に、一緒にゴルフをやろうなんていうふうに言っている。

香坂 さん
ひとりぼっちにならないために?

横江 さん
友達になる、そういう思いはかなりあったと。

小野 アナウンサー
世界からの見方、日本からの見方は違うものがありますね。日本から見ても、怖い人なのか、優しい人なのかとか。
この3週間、どんな政策を、トランプ大統領、実行してきたのか。その背景にはどんな理由があるのかというところから、きょうはひもといてまいります。


プレゼンテーション①

田中 アナウンサー
この3週間でトランプさんが「大統領令」というカードを、やつぎばやに切ってきました。これまでにもう24です。大統領令は、大統領の一存で出す、法律と同じような効力を持つ最高レベルの行政の命令。ゲストのおふたり、気になるものはありますか?

綾部 さん
ちょっといいですか、

これ。早速使わせていただきました。絶対これ、スタッフさんに使ってくれって言われたんで(笑)。
イメージでいうと、大統領の命令が絶対、それ以上のものはないっていうふうに僕は思ってたんですけど、そういうことでもないんですよね。連邦裁判所ですか、そういうとこがあったりとか、とにかく最高実権は必ず大統領がっていうことではないんですよね。

髙橋 解説委員
アメリカって三権分立の国ですから、大統領は大統領、でも、法律を作るのは議会、それをチェックする司法っていうのがあって、大統領は、暴走はむやみにはできないという仕組みにはなっているんですね。

小野 アナウンサー
とはいえ、バンバン出している。

田中 アナウンサー
テロ対策だとして、「IS壊滅」、「難民はノー」。

これですよね、ニュースになっている、「中東・アフリカ7か国からの入国ノー」とか、「メキシコの国境に壁」、

アメリカ人の雇用を雇うためだったら「インフラ建設どんどん進めよう」とか、規制をもっと緩くして、

「国内に工場を作りやすくしよう」というようなことを言っている。
常に背景にあるのはこれですよね。

「アメリカ第一主義」。でも、よくよく考えると、自分の国を第一に考えるって普通のこと。

香坂 さん
でもアメリカって、勝手な私の思い込みですけど、"世界のお父さん"的存在で、いろいろ見てたのに、急に、「もうお父さんは自分のことだけを考えて生きていきます」って言われたみたいで、えーっていう感じがする。

田中 アナウンサー
なんで世界がそんなに驚いちゃってるのかっていうのは、アメリカの歴史をさかのぼっていくと見えてくる。
アメリカのイメージというと、これ。自由の像

いわゆる自由の女神ですね。手に持っているのは?

綾部 さん
たいまつですよね。

田中 アナウンサー
そうそう。そして、左手が?

綾部 さん
辞書?なんでしょ。

田中 アナウンサー
銅で作られた板なんです。書いていることが結構重要でして、ローマ数字で、1776年7月4日というふうに書かれている。

綾部 さん
独立記念日ですよね。

田中 アナウンサー
そうなんです。そして、足元を見たことありますか?これは模型ですのでね、きょうはこんなサービスもしますよ。

香坂 さん
鎖?

田中 アナウンサー
そう。鎖と足かせ。でも、この鎖、実はちぎれている。これが非常に重要でして、すべての弾圧や抑圧から解放されて、人々は自由であるというメッセージが込められている。つまり、アメリカはこれです。

小野 アナウンサー
自由の国。

田中 アナウンサー
とにかく「自由」というものを大切にしてきた。

そもそもアメリカという国はどういう人たちが作ってきたんでしょうか。

香坂 さん
いろんな人(笑)。

綾部 さん
そうですよね(笑)。世界中の人が集まってるってイメージですよ。

田中 アナウンサー
鋭い。ヨーロッパから来た移民です。

最初はイギリスからやってきた移民の人たちが、一生懸命に土を耕したり、道路を作ったりして、新しい国を苦労して作ってきたわけですよね。でも、このころ、まだイギリスの植民地だった。だから、こうした移民の人たちにイギリスは、もっとイギリスに税金を納めろと、かなり言ってきた。
これに移民の人たちは怒るわけですよ。自分たちは新しい国でやってんだ。高い税金、イギリスにもう払いたくない。こうなれば、イギリスと自由をかけて戦争だ。

これが独立戦争です。実に7年間に及ぶ戦いの末、晴れて1776年7月4日、独立宣言ということになった。
独立宣言には何が書かれているのか。

やはり「自由」。自由と幸福の追求は神から与えられた権利なんだと言っています。
自由の国であれば、次から次にいろんな国から多くの人たちがやってきます。

まさに「人種のるつぼ」と言われる国になっていった。
これだけ多くの人たちが自由にここで仕事をするとなれば、国力はどんどん豊かになっていく。ちょうど独立宣言から100年ぐらいたったころですかね、19世紀の後半ぐらいになりますと、イギリスを抜いて、

工業生産世界一へとなっていく。自由の女神が建てられたのもそのころです。
ちょうどそのころの大統領、マッキンリーさん、こういうことを言った。

「"アメリカの自由"を世界の国々に広めていくのは、神から与えられたアメリカの役割です」。
アメリカは自由のおかげでこれだけ豊かになった。じゃあこれは世界にもっと広めていく役割が私たちはあるんじゃないかということで、アメリカは世界に手を広げていくのであります。

小野 アナウンサー
おぉー。

田中 アナウンサー
手が伸びました。さあ、何に手が伸びたのか。

まずはこれです。「他国との戦争」。

綾部 さん
あら?

田中 アナウンサー
そう。あれ?って思うかもしれませんが、ちょうどこれも19世紀の後半、1890年ごろですけれども、アメリカの隣の国のキューバがスペインの支配に非常に苦しんでいた。そのキューバをスペインから自由にしてあげる、解放しようと、そのためには戦争もいとわないということで、圧倒的な武力でスペインを倒す。

綾部 さん
平和っていう考えではなかったんですかね。結局戦争をやるわけじゃないですか。

田中 アナウンサー
でも、自由があれば、それが平和につながるはずなんだ。そのためには武力行使もいとわない。アメリカはこれまでたくさん戦争をしてきましたけど、全部この自由、解放という大義の中でやってきたものです。ベトナム戦争も、湾岸戦争も、イラク戦争もです。
でも、綾部さんの言うとおり、平和じゃなかったら、そもそも自由っておう歌できないよねということで、これ。

第2次世界大戦のあと、アメリカが主導になって、「国際連合」を作ったんです。いまもアメリカがいちばん国連に多くのお金を出しています。
じゃあもっとみんなが豊かになるためには、どうすればいいか。

「貿易も自由」にしようじゃないか。つまり、関税を取っ払ってしまって、自由にものの売り買いをしようということになった。

さらにアメリカは手を伸ばしていきますよ。自由を阻害するような国がある。それは困りますなあ。

じゃあ、そういった「アジアの平和」もアメリカがしっかりと守りますよということで、日本、韓国、フィリピンなどにアメリカ軍を派遣した。

さらに、紛争で傷ついて「難民」になってしまった人たちは、どうぞ自由の国、私たちアメリカにいらっしゃいと。
こうして、まさに、香坂さんもね、お父さんって言ってた、世界から頼られる、世界中から尊敬されるアメリカになっていったわけです。
でも、その分アメリカにのしかかる負担というのは増えてきますよね。軍隊も巨大化していくし、世界各国に派遣するとなるとコストもかかってきますし、難民を受け入れることだって、お金がかかります。それが国民の税金となってのしかかることもあります。
いろんな国から商品が入ってくるということは、日本や中国から非常に安くていい製品が入ってくる。そうなると、国内の産業が圧迫されていくことにもなる。
これは本当にしんどいっすわーってなっていた、

その時に出てきた大統領がトランプさん。アメリカ第一主義ですよ、もうこれからはアメリカのことだけ考えますよ。
自由な貿易? 難民の受け入れ? アメリカのためにならないんだったら、やめさせていただきます。
アジアの平和。まさにきょう、日米首脳会談でトランプさんはこう言いました。

「われわれは日本の施政権下にあるすべての地域の安全に関与して、極めて重要な同盟をさらに強化していく」というふうには言っているんですが、これから先の見通しというのはまだまだ不透明。
まさに自由を世界に広げようと手を広げてきたアメリカですが それを畳むという宣言をした。多くの役割を背負ってきたアメリカが、今度は自分の国だけだって言い始めたから、世界中がびっくりしちゃったということなんですよ。

綾部 さん
なるほど。

小野 アナウンサー
でも、アメリカに対する憧れの部分ってありませんでした?

香坂 さん
いまだにそうですよね。

横江 さん
アメリカ第一主義っていうのは、アメリカ人の本音のパンドラの箱を開けてしまったと思うんですね。どこの国でも自分の利益がいちばん大事ですけれども、クラスでいちばん優秀な子が自分の成績さえよければいいなんて言ったら、クラスは崩壊しちゃいますよね。優秀な子は、みんなの面倒を見る。そういう立場にいたわけですよね、アメリカという国は。それが突然、アメリカ第一主義って自分で言ってしまったので、混乱する。

香坂 さん
急に捨てられたと思いますよね。

久保 さん
「アメリカ第一主義」って言葉は、歴史上ちょっと特殊な意味があって、いま日本でも「都民ファースト」とか、ちょっと違った意味ではやってますけども、もともと1941年ぐらいにはやった言葉なんですね。
ドイツがヨーロッパで侵略をして、日本もアジアで侵略をしてる時に、アメリカの中ではそれでも戦争には絶対反対だという団体がいた

これはアメリカの歴史では「孤立主義」的な考えなんですよね。それを強く名乗った団体がアメリカファースト主義の団体なんですよね。ですから、歴史を勉強した人は、「アメリカファースト」っていうと、ぴんとくるわけなんですよね。単に自分の国が大事ですよって言葉ではなくて、世界で何が起ころうとも、それには目を塞いで、アメリカの中だけ平和であればいいじゃないかという、そういう考えなんですよ。

香坂 さん
そのアメリカファーストと、トランプさんが言うのは一緒ですか?

久保 さん
トランプさんは明らかにそれを知って使ってるはずなんです。もちろん知らない人もいるわけですけども、アメリカの外交史ではそういう意味がある。ですから、アメリカファーストっていうふうに彼が言うと、多くの人は、非常に極端な政策を考えてるのではないかと恐れる。実際、選挙戦中のトランプ氏は、NATOはいらないと言ったり、日米安保についても不公平だと言ったりしてきた。それだけに、きょう伝わってきた日米同盟についての声明は、これからどうなるか分からない面はありますけども、トランプ大統領がよくここまで変わったという面で、画期的かもしれないですね。

綾部 さん
でも、さっき香坂さんがおっしゃったように、お父さんはもう家族やめるからね、お前らはもう自分らで、お父さんはお父さんで、自分のやりたいことやるからっていう、そういうふうな考えを根本的には持ってるんですかね。

久保 さん
根本的には結構あると思います。特にトランプ大統領が、プロンプターを使わずに自分の地でしゃべった時。きょうはちゃんと原稿を読んだ。今回は、側近がこういう路線でいかないと世界の安全保障にとって危ないということを相当吹き込んであると思いますね。

三浦 さん
久保先生がおっしゃるとおり、確かにアメリカは、お父さんとして面倒見ないよっていう思想が源流にあって、それをくんだってなるんですけど、アメリカの自由って、アメリカ国内でスタートした時には、黒人は奴隷でしたよねって話なんですね。そのあとも、フィリピンに侵略したりして、その先の人たちが犠牲になったりしている。そうだとすると、いまアメリカ国内で自由があるっていう状態って、みんなが頑張って自由を勝ち取ってきた歴史があるわけじゃないですか。自由が当たり前にあるっていう感覚が、もはやアメリカの中でも信じられちゃったんだけど、でも、過去の歴史を探ってみると、当たり前じゃなかったよねと。じゃあアメリカ国民って誰なの?と。例えばテロリストが入ってきた時に、そこで子どもを生んで、それをアメリカ国民として受け入れられるんですかって。よく向こうでは出生地主義っていって、生まれたら国民になれるじゃないですか。だから、国民って何なんだ、みたいなことをいま結構考えようとしてるんじゃないかなと思うんですよね。

久保 さん
不法移民については、いま態度が相当厳しくなってます。メキシコから入ってくる人が多いんですけども、1100万人ぐらいいると言われていて、それに対する不満が非常に強い。トランプさん当選を語る時に、欠かすことができない視点かなとは思いますね。日本の1億2000万の人口に直すと、だいたい380~400万人ぐらいの不法移民がいることになるので、相当な数。それなりの反発があるということも理解できないわけではないという気はします。
難民の問題も、確かにトランプさんはオバマ政権の11万人の難民受け入れ、それを5万人に減らすと言った。でも、日本が昨年受け入れた難民の数は28人。その前の年は27人。日本がアメリカは不寛容だと批判するとすると、ちょっとおかしいかなという感じがしないでもないですね。

横江 さん
もう1つね、アメリカは世界の警察みたいに面倒を見てたっていうことだと思うんですけど、それをできない理由ができてきた。
環境の変化では、冷戦が終わったっていうのがすごく大きいんですよね。ポスト冷戦の時代も終わったわけですよ。冷戦の時は、民主主義、資本主義は正しい、共産主義は違うんだという大義名分がありましたので、警察という存在があったわけです。ただ、いまはポスト冷戦という言葉も聞かなくなった。プラス、国土安全保障が出てきました。自分たちの国が攻撃されるかもしれないという時代に入ったわけですよ。
いままで国土安全だったから、リソース全部、世界に使えてきていたのが、自分たちの国を守らなきゃいけないから、予算とか軍隊を国内に入れなきゃいけない。そうすると、いままでのような役割を全部やるのは無理ですよという立場もあるだろうなと思います。

小野 アナウンサー
それにしても、びっくりしたのは、孤立主義とかアメリカファーストっていうのは、ちゃんと歴史を踏まえた考え方だった。裁判所に、出した大統領令をだめだよってすぐ言われちゃうなんて、素人のおじさんが暴れてるみたいに見えなくもないじゃないですか。

久保 さん
実はトランプ大統領は、歴史的に有名な大統領が使った言葉をよく使ってるんです。例えば「忘れられた人々」。これはフランクリン・ルーズベルトの言葉。それから、「ローアンドオーダー 法と秩序」っていうのは、ニクソン大統領の言葉なんですよね。歴代、響きがよかった言葉を結構うまく使ってる部分がある。

アメリカの流れを見ていくと、もともと相当寛容で、ほとんど無制限に移民を受け入れる。こういう国、歴史上いまでもほとんどないんじゃないかと思う。ただ、1924年にはそれに制限をかけた。ちょっと不寛容になった。しかし、1965年にはまたすべての国から、すべての地域から一律に移民を受け入れる。揺り戻しっていうか、揺れがありますね。1985年には、当時300万人ぐらいの不法移民がいたんですけど、その人たちに全部国籍をあげちゃおうという、そういう寛大な措置をしたこともあります。
いまは、その反動ですかね。300万人に、全部国籍をあげることにしたけど、結局どうなったか。また1100万人の不法移民がいると。そういう優しい方法はだめだったという反発もあり、そういう波に乗ってトランプさんが当選したってこともあるかと思います。

三浦 さん
1924年の不寛容になった時代。これは第1次世界大戦と第2次世界大戦の戦間期ですよね。われわれの国が軍国主義に行ったり、ナチスドイツが興隆したりした時代。つまり、世界中でナチズムが興隆した時代に、とりあえず民主主義と資本主義は守った。この時代と同じ時代がいま来てると考えると、じゃあ本当にトランプさんが踏みとどまらなかった時に何が起きるのか。トランプさんはまだ踏みとどまってるほうだと見るべきっていう考え方もありえますよね。

髙橋 解説委員
1924年の移民の制限強化は、実は日本人にも非常に関係のある時代なんです。当時、日本からずいぶん移民が行ったんだけれども、もうやめてくれと、日系人に対する排斥運動が盛んになった時代でもあるんですよね。
第2次世界大戦になったら、12万人にも及ぶ日系人たちが強制収容された。敵国である、ドイツ系、イタリア系は強制収容されないのに、日系人だけは強制収容されたっていう時代もあったんです。
ただ、私はアメリカがすごい国だなと思うのは、そういう間違いを犯しても、久保先生が言ったように、揺り戻すタイミングがあるんですよね。
カリフォルニアなどで排斥された日系人たちは、コロラド州にみんな逃げ込んだんですね。なぜかというと、当時、コロラドの知事だったラルフ・ローレンス・カーという人が、アメリカはそんな国じゃないだろうと。アメリカがアメリカたるためには気高き道義を守らなければいけないと、体を張って守ったんですよね。そういう人たちが、いまも必ずいるはずだと私は信じています。

横江 さん
本当にそうだと思います。ミレニアル世代、35歳より下ぐらいの人たちに話を聞きますと、共和党、民主党関係なく、やっぱり多様化の時代になっていくんだって言いますね。多様化に対するトランプ大統領の政策だけは、どうしても支持できないという、共和党の若い人たちも結構います。


プレゼンテーション②

田中 アナウンサー
実際、揺り戻しというのは、今回の大統領令に対しても出ています。特に中東・アフリカ7か国からの入国制限、これに対しては多くの動きがあります。大統領令というのは、綾部さんが気にしていたように法的拘束力のようなものはあるけれども、でも、それを止める仕組みというのも、ちゃんとあるわけですよね。

まず、議会でいえば、出てきた大統領令に反対する法律を作って止めるとか、その大統領令に関する予算はつけない。これで止めるというやり方があります。
そして、裁判所。最高裁判所で、その大統領令は憲法違反ですという判断をすれば、その大統領令は無効になります。
実際に7か国の入国禁止に関しては、まず、地方裁判所がそれはだめだと、停止だというふうに言いましたよね。それに対してトランプ大統領が、不服申し立てをしたんだけれども、次の2審、控訴裁判所では、

入国禁止7か国の人がアメリカでテロを起こした証拠ってないじゃないかということで、申しつけをはね返したと。ただ、これはまだいま裁判で継続しているところであります。
それ以外でも、例えば大手コーヒーチェーン・スターバックス。トランプさんの政策には反対ですと。

「5年間で難民1万人を雇用します」という声を上げた。
そして、大学。

全米で600ほどの大学が合同でこう言った。「アメリカは世界中の生徒や学者にとっての"目的地"であるべきなんだ」。

さらにIT企業フェイスブックのCEO、マーク・ザッカーバーグさん。「難民に対してドアを開けておくべきだ。アメリカが難民に背を向けていたら、妻の家族はいまここにいなかった」。実はザッカーバーグさんの妻の親がベトナムから来た難民だということで、こういう発言をした。

さらに市民も黙っていません。その大統領令が出た直後に、ニューヨークやロサンゼルスなど各地でこのようなデモを行いました。彼らは、アメリカというのは移民の国なんだと、移民のおかげでこれだけアメリカは大きくなったんだと訴えている。いま国内でこういう動きが出てきてますね。

綾部 さん
「アメリカン・ドリーム」って言葉があるじゃないですか。そこに向けて世界中から、僕もそうですけど、向かっていく。そういうのもすごく厳しくなってしまったりするのかなっていうところが不安ではあるんですよね。大学に限らず、コメディアンとか、例えば役者さんとかダンサーとか。

三浦 さん
トランプ大統領の奥さん、メラニアさん自身も、東欧から来た。奥さんも、最初モデルとして来て活動したわけじゃないですか。考えなきゃいけないのは、アメリカってメキシコから来る移民の量がすごいから、世界中の移民受け入れ国の中でもトップなんですよね。アメリカがもし人の流れを止めてしまうと、大変なことになるんですけども、じゃあなんで7か国に対して渡航禁止をしたのか。
私は、これは政治戦略だと思っていて、

「Shock & Awe(衝撃と畏怖)」、これは軍事戦略なんですよ。つまり、短期戦で、相手を力ずくで納得させて、敗北宣言させるためには、ものすごい衝撃波を送るわけですね。大量に兵員を投入して。衝撃で立ち直れなくなって、防戦一方になる。そうしたところで、短期で戦争を終結させる戦略なんですよ。

綾部 さん
集中攻撃ってことですね。短期的な。

三浦 さん
そう。波状攻撃が何度も来る。これがいまアメリカでは、リベラルに対してトランプ政権から行われてる戦略だと思うんですね。
7か国からの入国禁止は差別的だと言って、大規模デモを繰り広げる。その間に大統領令を乱発する。実際には改革に資するようなものもどんどん出してるわけですよ。規制緩和であるとか。

リベラルは防戦一方になるんだけれども、入国制限はアメリカ国民の49%の人たちは支持してるわけですね。実は国民の中では、トランプさん支持よりも、この政策支持の人が多いってことじゃないですか。とすると、国を、イスラム過激主義に対する恐怖を持ってますか、持ってませんかっていうところで分けると、必ずトランプさん側が勝つ。それによってリベラルを分断し、中道の、何となく不安を持ってる人たちを自分たちに引きつける。よく考え抜いてやってるんですよ。

髙橋 解説委員
トランプさんは批判を恐れてないんですよね。

就任演説のスピーチライターでもあるミラーさんっていう人が、こんなこと言ってるんですよね。「失敗した古いやり方」。これはつまり、オバマ政権下のテロ対策のこと。「これを改革して成功を収めるには、必ず抗議がつきものだ」と。抗議があるのは分かってやってるということですね。

久保 さん
今回の入国の制限についても、司法長官がまだ就任する前にやっちゃってますし、入国管理当局と十分なすり合わせがなかったが故に、例えば中間的な領域の、永住権持った人はどうなのかって全く触れてなかったりとか、明らかに不備が目立つわけですね。極めてわきが甘い形で大統領令だけを出していってしまったわけで、ちょっと焦りみたいな、あるいは再来週に選挙があるかのような、そういう感じのタイムテーブルでやりすぎている。そういう点でも、まだ経営者的な感じでやっていて、政治を動かすという感じの慣れっていうのは全くできてないんじゃないかなという気もしますね。

横江 さん
あと、国民の間の中にずれがあるんですね。思想的内戦って言ってもいいのかなと思うんですけど。例えば難民問題。デモをしてる人たちは「多様化」に賛成するということですよね。ただ、トランプ大統領は、「国土安全保障」だって言うわけですよね。これは国土安全保障のためであって、多様化を受け入れないようにしてるわけではないと。だから、論点がちょっとずれてるんですよ。そのために、49%の人が、国土安全保障と考えると賛成するという、ずれがある。

香坂 さん
そのずれがあるんだっていうのをちゃんと説明すればいいのにね。

三浦 さん
私はそれをむしろ戦略だと思っていて、わざわざあらが目立つ政策を早期にやってしまうわけですよね。待ってればいいのに。これはわざと、敵を作ってるとしか思えないんですよ。人をたたく時に、この政権っていうのはある種いちばんパワーを出す。安全運転でいったら、それこそヒラリーさんだとかオバマさんのほうが上ですよね、実力は。ただ、この政権は、人を攻撃する時にものすごい能力を発揮するんですよ。このリベラルという人たちは、テロの問題意識を過小評価している、本当に愛国主義的なのか、っていうふうに線引きをしていくことが、支持率の低い政権としてはたぶん適切な戦略だったんでしょう。人を分断していくわけですね。

久保 さん
安全運転してるところもあるかなと思うんですよ。壁を作るとか、テロ対策であるとか、移民問題とかには大統領自身こだわりがあるので、かなり無理をして、性急に、拙速な形で、どんどんやっていこうとしてしまう。他方で、けさの日米関係なんかについては、むしろ安全運転できた。部下、側近、閣僚の言うことを聞き始めたところと、自説にこだわって突き進もうとしてるところと、2つあるんだろうというふうに思いますね。

視聴者の声

「アメリカファースト、国内では東京ファースト。そう見ると、小国や地方は無視され、利用されるだけだよね」

「近づきすぎは日本の国益にマイナスもありうるのでは」

「安倍首相、今回は究極の接待ゴルフやな」

三浦 さん
日本は最近ずっと心配してたわけじゃないですか。日米同盟で負担を高めろとか、ただ乗りって言われていて。

小野 アナウンサー
ただ乗りっていうのは、アメリカに守ってもらってるっていう意味ですか?

三浦 さん
守ってもらっているのに、軍事的には貢献をしてないって名指しをされた。だけれども、いざこういうふうにトランプさんにきちんと原稿を読んでもらった時に、日本人はどうしていいか分からない。とりあえずなんとかなった、でも、次はどうなるのってなるじゃないですか。 例えば本当に平和とか自由が大事だと思ってたんだったら何をするの、っていう議論が、日本にはとても欠けている。アメリカがまともに戻ってくれればいいなと思っても、世界的に移民に対する反発って広がっているし、難民受け入れも停滞してるんですよね。だから、イニシアチブが自分から出てこないなって、日本見てて思いましたね。

小野 アナウンサー
この手を引っ込められてどうしようって思っているんじゃなくて、じゃあ自分は何をするか?

香坂 さん
お父さんが生活費入れてくれなくなった時、自分でちゃんと働こうっていう。

綾部 さん
世界でいうと、日本っていうのは、立派な長男的存在なのか、甘い末っ子なのか。

三浦 さん
末っ子じゃないですか?

横江 さん
だだをこねていますよね。

久保 さん
こういうタイプの大統領が当選してきたということは、アメリカ全体が変わりつつあるかもしれないという懸念は持っておく必要があると思いますね。やはりそれは、日本が自分でやるべきことは、もう少しやんなきゃいけないということを考えていくことかなという気がしますね。

横江 さん
実はトランプ大統領がやってることは、アメリカに変化が起きていて望んでることなのか、トランプ大統領だけのものなのか、っていうのを見極めていく必要はありますよね。だから、怖いよね、よく分かんないよねっていうとこで止めてしまうんではなくて、いまアメリカの中にどういう変化が起きてるのかっていうのを見ていくことが必要になると思います。

三浦 さん
じゃあ日本何するんだって話じゃないですか。アメリカの自由が揺らいでる、アメリカの人権も揺らいでるとなると、私たち、何支えられるんですかって。
これは、基本的には私、経済しかないと思っていて。アメリカが、自分たちの中で所得をちゃんと再分配してから、もう1回、世界に貢献しますよってことなんだとすると、われわれはアメリカを支えなければいけない。そういう意味では、自由貿易も、日本がどれだけアメリカを引き戻せるかで、世界経済の行方が違っちゃうっていう、重要なポジションにいることは間違いないんですよ。
だからこそ、共同会見で、相互利益っていう話がトランプさんから打ち出された。相互利益って、別に信頼でも友情でもない、相互利益なんですよ。だから、アメリカの利益になるように日本がきちんと制度設計をしていく、お互いの利益のためにやるっていうのがすごく大事なんですね。

久保 さん
同時に、日本があえて損する必要もない。日本にとっても、インフラ投資なんかもそうだと思いますけどね。

綾部 さん
ウィンウィンってことですよね。

横江 さん
あと、今回よかった、成功したよねって、そこで止まるんじゃなくて、彼は経営者ですから、次は厳しいことを言ってくるかもしれない。

久保 さん
また1980年代のようなモードに戻るかもしれないですね。特に原稿がない時。

髙橋 解説委員
っていうか、結論を言うにはちょっと早すぎませんかね。まだ政権が発足してから3週間ですから。

久保 さん
今回は、特に普通の政権交代にはない不確実性と不安が日本側にあったということは言えるかなと思います。それで、なるべく早く最低限のところを確認したいというのがあったと思いますね。

横江 さん
ただ、200日間はね、共和党の議員は、トランプ大統領を支えるって決めている。ですので、当面は壊れることはそんなにない。
彼は一応、話は聞く人であるらしいんです。2時間でも聞くんです。ただ、その決定は誰にも分からない、ブラックボックスだと言われています。しゃべりすぎると、つっついてくるとこを探すのがうまいらしいんですね。ですので、上手にそこはつきあっていかなきゃいけない。

綾部 さん
僕がもしトランプさんに会ったら、話短めにしとかなきゃだめってことですね。

三浦 さん
トランプさんは、安全だと思いすぎても、危険だと思いすぎてもいけない。移民に対する強い憎しみをあおってることも確かだし、そういう悪の部分と、それから、アメリカ経済をよくして再分配をしようっていう善の部分っていうのをきちんと、強み、弱み、見定めていかないと、本当失敗しますね。

香坂 さん
緊張しますね。

小野 アナウンサー
ゴルフもまだ始まってないことですし、少し時間をかけて見たほうがいいっていう、いつもどおりの結論で。

髙橋 解説委員
長い目で見てください。

小野 アナウンサー
どうもありがとうございました。

寄せられたご意見・ご感想はこちら

■番組では随時ご意見を受け付けています。現在募集中のテーマはこちらから。

「放送内容まるわかり!」へ戻る

―――