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放送内容まるわかり!

2017年03月04日放送

ニッポンの未来は? 子どもの"学び"が変わる

2月14日、国は新しい学習指導要領案を公表。グローバル化や"AI時代"の到来に備え、子どもたちの主体性や対話を重視した学びによる「質の向上」が掲げられています。 一方で小学校での英語の教科化など、「学ぶ量の増加」も打ち出されており、現場の先生たちからは「忙しすぎて準備が出来ない」「本当に上手くいくのか」という不安の声も。学校現場にはどんな影響があるのか?これからの時代、どんな教育が必要なのか?深読みします。

今週の出演者

専門家

汐見 稔幸さん(白梅学園大学 学長)
齋藤 孝さん(明治大学 教授)
平川 理恵さん(横浜市立中川西中学校 校長)
早川 信夫(NHK 解説委員)

 

ゲスト

厚切りジェイソンさん(IT企業役員・お笑い芸人)
大林 素子さん(タレント)


プレゼンテーション①

徳永 アナウンサー
3年後には教室ががらっと変わっていそうなんです。未来の授業、実際にやってみましょう。小学6年生社会の問題。おふたりにも考えていただきます。こんな問題です。

「あなたはバスの運転手です。朝の通勤ラッシュ帯です。バスは満員です。ふと見ると、後ろからバスに乗ろうとしているお年寄りが1人こちらに歩いてきています。もうちょっと時間かかりそうですが、もう出発の時間です。待つべきか、出るべきか、悩ましいタイミングです。あなたならどうしますか?」。
これ、実際3年後に授業がこんなふうになるんじゃないかと研究をされている、東京学芸大学の准教授の鈴木聡さんに監修してもらって作った問題です。じゃあ、大林さんの答え。

大林 さん
これは、待ちます。人として、やっぱりそこは待つべきじゃないでしょうか。いまも、運転手さんとか待ってくれたりするので。たまに非情にバンと閉められる時もありますけど。

徳永 アナウンサー
人として待つべきだ、と。厚切りジェイソンさんの答えは?

厚切りジェイソン さん
僕も待ちますね。定刻通りというルールよりも、実際に入ろうとしてるから、その人の思いのほうが大事かなと思うところで。

徳永 アナウンサー
にやにやしてる小野君の答え。

小野 アナウンサー
社内のお客さんのほうが怖かったら、出発しちゃうかも(笑)。

徳永 アナウンサー
というように、最初は1巡すると、子どもたち、やっぱりいまの3人のように、待つか出るかの2択として考えます。でも答えは2択とは限らないですよね。いろんな意見がある。

小野 アナウンサー
はい。はい。はい。選ばなくていいんですね、どっちか。だったら、実況する。「いま30メートル後ろからおばあさんが近づいています。えー、皆様、皆様、おばあさまが近づいています。あと28メートル。20」。中の人がカッカしないように、実況中継してつなぐ。

徳永 アナウンサー
なるほどね。つまりですね、こうやって先生が聞いていくと、こういうことを考える人もいますね。「運転手だけで判断せずに、周りの人と相談したり、様子見ながら判断していく」っていうアイデアを出す子が出てきます。ほかに何かあります?

「運転手だけで判断せずに、周りの人と相談したり、様子見ながら判断していく」っていうアイデアを出す子が出てきます。ほかに何かあります?

大林 さん
でも、説明とか言うと、しゃべれる人はやじとか言うけど、でも、本当は「早く出発してよ」って思ってても言えない人もいるじゃないですか。

徳永 アナウンサー
というふうに想像していく子が出てきます。こんなユニークなことを言う子も出てきます。

「そもそもバス停は1つとは限らなくていいんじゃないですか。お年寄りがこんなに増えた時代だから、お年寄り専用のバス停をもっと増やすとかしたらどうですか」「バックしてもいいんじゃないか」と言う子もいます。さらには、実際研究授業であったそうですけど、

「最初僕は通勤客のことを思って先に出発すべきだと思った。でも、みんなの意見を聞いていくと、このお客さんの中にも、おばあちゃんにも、深刻な事情を抱えている人がいるかもしれないと考えを改めた」という人なども出てきます。
文部科学省の学習指導要領には、こういうことが大事だっていうことが書いてあるんです。

答えを探すんじゃなくて、自分で問いを作って、解決策を考える子になってほしいと。再三出てくる言葉が、「主体的・対話的」そして、「深い学び」。

小野 アナウンサー
いまの問題は、確かにこういう授業は受けたことがないなって思いましたよ。でも、「主体的」とか「対話的」とか「深い学び」って、学校の講堂に書道で書いてあった気がする。昔から言われてるような気がする。

徳永 アナウンサー
確かに、なんかあるような言葉だと思って、もう1回スタッフみんなで、

新しい学習指導要領の改定案を読んでみました。そうすると、こんな力やあんな力欲しいっていう、子どもへの期待が書いてます。それ全部叶えたらどんな子どもになるかをここに作ってみました。 題しまして、子どもは子どもでも、これだ。全部かなったらすごい。

「スーパー子ども」。社会科で伸ばしたい力を貼っていきます。

まず、理由も含めてみんなに伝える力が欲しい。さっきの授業ね。それから、こちら。2択にとらわれず、問題の本質を自分で考えて、解を自分で作り出す想像力が欲しい。それから、周りのお客さんと話し合いながら決めるというように、人間関係を大事にする力が欲しい。それから、自分の意見を絶対と思わず、相手の意見を聞いて自分を批判的に捉え、考える力が欲しい。さらにさらに、身近なことを見て、社会をいかに変えていくか。バス停の数を増やすとか。そういったことを考える力をみずから発してほしい。
まあいろいろあります。これ、社会科ね。暗記とはだいぶ変わると。
さらに、社会だけではございません。学習指導要領、こんなことも書いてます。英語。いま小学5年生から英語をやっています。それが3年生からになります。授業増えます。
こんなものも始まります。実は厚切りジェイソンさんにはEテレの番組でもお世話になってますが、プログラミング。つまり、機械を使いこなす側になってくださいと。

小野 アナウンサー
完成するまでいかなくても、そういう力をつけることができる学習をしましょうってこと。

徳永 アナウンサー
つまり、実は学習指導要領を読むと、国の危機感っていうのがあって、2030年代はもっとグローバルだ。AIの時代でいろんな仕事なくなっちゃう。そんな時代を切り開く能力を育てたいから、こうしてるんですっていうことが書いてある。

小野 アナウンサー
でも、そういう運転手さんたちがいっぱいいるような社会っていいなあ。ちゃんと考えて、2択じゃないこと考えられるような人がいっぱいいる社会って。なんか、世の中スーパー子どもばっかりだったら、とてもいい世の中なんじゃないですか

厚切りジェイソン さん
考えられる人がいっぱいいると、いろいろ生活しやすくなるかもしれないですね。まさにいま必要としてるものばかりじゃないですか。

汐見 さん
これまでの学力っていうのは、それなりに身にはついてるんですよね。だけど、冷静に考えたら、21世紀は7、ますます答えが見つかってない問題だらけの社会になってくるし、人工知能だとか、コンピューターだとかが、仕事をかなり代替するならば、人間はその中でどういうことをやれば、コンピューターに使われないで、コンピューターを上手に使えるような社会を作れるのかってことが新たな問いになってきている。コンピューターにはできないこと、例えば美しさや居心地の良さなどを判断できる力を人間が持ってなければ、コンピューターに使われてしまう。だけど、いままでそういう教育をあんまりやってなかったのでどんどんやり方変えなきゃいけないっていうことがいまテーマになってきた。

齋藤 さん
これはもちろん全部いいことなんですけれども、昭和の小学校っていうのは基本的にはやってるんですよね。別に詰め込みでもないですし、話し合いを中心にして、戦後ずっとやってきたんですね。ですから、ものすごく大きく変える必要というのを、圧力として感じる必要はないんじゃないのかなっていうふうには思いますけどね。
変えなきゃいけない。でも、先の見えない時代は幕末・明治維新から戦前・戦後、ずっと先見えなかったですからね。いまだけ先が見えないわけではないと思いますけどね。

小野 アナウンサー
なるほど。でも、何か答え出すいままでのやり方っていうものも、あったっていうことでいいんですよね。それはそれで。

汐見 さん
それはあったんですが、日本の教育は特に受験が背景にすごく強くあるためだと思うんです。例えば環境問題については勉強しますよね。あるドイツの教師が日本に来て同じ授業をやったらね、ドイツでは次の日から、「先生、缶集めてきた」とかね、「生ゴミ、これどうしよう」って来る。どうしようかっていう行動につながっていくのに、日本ではそれだけいい授業しても、生活が全く変わらない。どうしてですかって疑問を呈されたことあるんですよ。せっかくの学力身につけても、それが社会的な実践力に直でつながらない学び方っていうのは何なんだって、突きつけられたことがあった。同じ問題を社会全体で考えなきゃいけない時代にはなってると思いますけどね。

早川 解説委員

日本の教育って、これまでは知識・技能が中心で、これが「詰め込み」だってよく言われたことなんですね。それに今度は、思考力・判断力・表現力。自分で考えて、自分で判断して、人に伝えるっていうことまでやりましょう、ということになった。その上で、学びに向かう力って言ってますから、自分でみずから学んで、人間性として、社会と関わっていくような力をつけましょうというのが、今回新しい時代に必要な力だと整理できるんです。

視聴者の声

「問題解決力とか社会企画力、本来は日々の暮らしとか遊びの中で身につけてほしいものだと思う。でも、その力を手に入れるまでの負担を、子どもたちや教師に強いるのは何だかね。先生には大変だね」

小野 アナウンサー
っていう声も来ていますよ。

徳永 アナウンサー
これ、実は続きがございまして、番組でアンケートを先生方に、現役の教師の皆さんに、どうですかって聞いたんですね。理念はいいんだろうけど、こういう声が多かった。
その声の根拠にこんな話が。

英語が増えますから、純粋に授業時間が増えかねない状況。年間35コマ、35時間分増やさなきゃいけない。そうなると、どう考えても土曜日とか夏休みとかを使っていかざるを得ないんじゃないのという意見もあります。
先生方に実際番組でアンケートを採ると、こんな声が次々と来ました。

「英語にしろ、プログラミング教育にしろ、自分に教えるだけの知識と技術があるのかと問われると不安がある」

「部活動やいじめや保護者の無理な要求への対応で忙しいのに、さらに拍車がかかる。理想ばかりで、教師と生徒が人間であることを忘れている」

「カリキュラムを減らさなければ、子どもたちに余裕のない生活をさせ、結局生活力のない子どもたちにしてしまう」

「教員の増加を切に望みます」って言う人もいます。
実はですね、小学校の授業枠って、6時間目までびっちり埋まってるっていう学校も少なくなくて、データを見ると週60時間ですよ。週60時間以上働いている小学校の先生、7割超えてるというデータがあります。 じゃあこの指導要領で、文部科学省はそういう先生たちにどうしろと言っているのか。ひと言で言うと、こうです。

「各学校で頑張ってください。創意工夫してください」。例えば、朝早くやるとかって、そういうふうに書いてます。

大林 さん
先生、大変すぎる。部活とか、バレーボールとかも、校長先生が部活の顧問をされてるとか、副校長が野球部とか、先生方が足りなくて、私たちがたまに教えに行くと、お気の毒にみたいな。回らない。

平川 さん
いまは現場には環境教育だとか、キャリア教育だとか、200~250ぐらい降ってきてますので、昔のようにおうような時代ではない。教科書も初めから終わりまで全部教えるのは当然のことなので、いっぱいいっぱいと言えばそうだし、でも、やらなきゃいけないしというジレンマがあります。

厚切りジェイソン さん
保護者が求めすぎてると思いますね、先生方に。保護者対応といじめ対応とかは、分ければいい。別の役割がそれを対応して、先生は勉強を教える、というやり方でいいと思う。

小野 アナウンサー
いろいろ工夫も、もしかしたら考えられるかもしれませんが、何となくここから見えてくるのは、教えるマンパワー、人のマンパワーと、教える力のマンパワーっていうか、この「英語・プログラミング教える知識・技術ない」というお悩みなんかはそうですよね。こういうものって、やっぱり国の予算ですか?

齋藤 さん
それもあります。僕は毎日教員養成をやっていますが、授業をする力っていうのは明確にはっきりした技術としてあるんです。でも、そこに英語とかプログラミングを教えられる小学校の先生がどれだけいるのかっていうと、それを育てるよりも、そういうことができる人を採用するほうが大事なんですよね。そうしないと、小学校の先生は全部の教科できるわけじゃないので、そういう人的な保証っていうのは必要だと思いますね。

早川 解説委員
国際調査をやると、日本の先生って世界一働いているんです。なのに、自分の指導には自信が持てないっていうふうに答えている先生が多いんですよね。「生徒に勉強ができると自信を持たせることができる」と答えた割合が18%なんですけど、これ、世界最低なんですね。各国の平均って86%ですから。

齋藤 さん
現実問題、日本の学力っていうのは、測ってみると、伝統的な記憶再生の学力は高いんですよ。だけど、早川さんが言われた、思考力や判断力って、いままで比較的足りてないと思われてたものも、

問題解決力も世界第3位で結構高い。だから、日本の教育が、いま問題解決力が足りないからこれをやるんだっていう前提が必ずしも正しくない。いままでの教育をやっていても、これぐらいの高さが表れている。日本の教育の成果というものはちゃんと見極めてから、手を打つというのが必要かなと思いますね。

汐見 さん
ただ、例えばこれはいろんなところでやっている調査の1つなんですが、

日本の子どもは世界の中でも、学校の勉強は楽しくないっていうのはすごく多い。結果としてそれなりの学力は身についてるんだけど、勉強そのものは苦痛だというのを、どう克服するか。

小野 アナウンサー
もし子どもがもっと楽しいと思って勉強できて、先生もそこにやりがいが感じられて、自信が持てるっていうふうになったら、とてもいいですけど。

汐見 さん
そのためにはね、「カリキュラム減らさないと」ということがある。これからは、思考力だとか判断力だとかっていうことが大事だ、となってくると、授業のやり方を少し変えなきゃいけない。例えば先生がまとまったものを教えるよりは、自分たちで調べておいで、そして、上手に発表してごらんって言ったら、時間かかりますよね。でも、学力下がっちゃいけないからって従来と同じだけの内容を全部教えた上で、そういう授業もやりなさいとなったら、当然時間が足りなくなる。だから、もし思考力だとか判断力だとか表現力とかプレゼンテーション力を高めようとするのであれば、内容の中で、これだけは絶対やらなきゃいけないけども、あとは学校の裁量で、その中でどうやるかはもう少し選んでくださいと、ある種の大綱化というか、選んで少なくするってことをやらないと、ちょっと無理がある。例えば、イギリスはそうやって減らしたんですね。

小野 アナウンサー
まだ、いまのところ国は、何かを減らしましょうとは言ってないんですか?

汐見 さん
それは学力低下に対する批判が強くて、減らさないで、かつ新しいのもやりなさいってなってるから、たぶん先生方は大変になるんです。

小野 アナウンサー
あと、先生をもっと増やせないのか。役割分担するにしたって、人数が必要ですよね。そこは、予算は増やせない? 国の予算の問題っていうのはどうなんですか?

齋藤 さん

国の予算っていうのはこれですよね。こういうように、OECDの中ではワースト2ということになるんですね。ちなみにワースト1はハンガリー。

汐見 さん
先生が1人あたりで担当する子どもの数は、たぶん世界で最も多いですよね。

厚切りジェイソン さん
だったら、もっと、予算を与えればいいんじゃないですか。簡単な話じゃないですか。

平川 さん
もちろんそうなんです。現場としては人も欲しいですし、例えば1人1台のAI搭載したタブレットだって、授業をやっていくためには必要だと思います。でも、この議論をしてもなかなか、一気に増えるかっていうと絶対に難しい。

小野 アナウンサー
先生たちが予算の話にあまり顔色が変わらないし、そうすると今度は高齢者の予算を削らなきゃいけなくなるというようなことが、ずっとあるということですね。

平川 さん
そうですね。予算の再配分化は必要だと思います。例えば1年間に、教育委員会の予算は9000億っていう形で使っていて、それを現場に少しでも配当して、再配分してくださると、もっと子どものためになるんじゃないかなと思うことも多いですし、制度や、構造そのものをちょっと見直す必要があるかなと思います。

大林 さん
いまオリンピック・パラリンピックが近づいてきて、そのための予算ってちょっと出てるらしくて、そこでオリ・パラ教室とか、選手に触れ合うとか、そういうふうに、あるものをうまく活用できないんでしょうか。

汐見 さん
先生の数を急には増やせないですが小学校の先生がいまの仕事を全部1人でやれって言われてるあたりに無理があると思うんですよ。中学校は専科で、社会の先生だとか国語の先生、分かれてます。小学校は全部やるわけです。いまみたいにネットでいろんな情報が手に入る時代に、それよりもっとおもしろく、すべての教科でやりなさいって言われたら、先生、たまらないですよね。だから、ある程度専科性に変えるとか、学校への不満だとか親に対する対応は、ソーシャルワーカーをちゃんと学校に置くっていうのをやるとかですね。

齋藤 さん
教師のOBもいますよね。いま団塊の世代がどんどん退職されてますけど、その方たち、やる気も経験値も高いんですよね。そういう方たちに来てもらうっていうのは。

小野 アナウンサー
結構そういうアイデアも来てますよ。「専門家の力を借りたらどうなんだ」とか、「元学校の先生を、もっと来てもらったらどうなんだ」っていうアイデア、たくさん来てます。
これからどうするかを考える上で、ちょっと1つヒントを取材してきたんで、その話をお聞きいただいてから続きをお話しいただきたいと思います。


プレゼンテーション②

徳永 アナウンサー
大変な中で現場でどんなことが行われているのか、ということを、きょうお越しの平川さんは現役の民間から来た校長先生なので、教えていただきながら作りました。

ちょっと出てますけども、先生が全部負うんじゃなくて、いろんな企業の専門の人も最近入ってきてます。最近だいぶ進化してきているようなので、1つご紹介します。
平川さんの学校もお願いしている学校の1つだそうですが、

掃除機で国際的に有名な、大手の家電メーカーのエンジニアの人がよく来る授業のお話です。授業といえば、企業の人が来ると、「私たち、こういう仕事をしてますよ」って講演をするっていうケースが多いですが、もう1歩、2歩、3歩踏み込むんだそうです。

これ、実際の写真ですけどね、子どもたちに家電の部品を見てもらって説明するそうです。僕たちは、暮らしをどう豊かにするために、どんなものを作ったらいいかをゼロベースで考えて、新しい商品作って、みんなに買ってもらって利益を上げる。ゼロからものを生み出すのがお仕事なので、みんなもそれをやってほしいと、こんな課題を出します。

「君たちの学校の暮らしをよりよくするために、何か商品を作って開発してください」ヒントなし。
これで、びっくりするような、灯台もと暗しみたいなのが出てきます。実際に、平川さんの学校の生徒の皆さんが出した答えをいくつかお見せします。実際試作品を作ったんです、段ボールで。これ。こっちからいきましょうか。

手作りだから段ボールですよ。学校の机。ただ、1個工夫したのがここ。四隅の1つに穴開けて、ここに消しゴムのカスを入れれば掃除が手間かからなくて便利になる。掃除機のメーカーだからか、掃除のことにリンクしたことが多いみたいですけど、これ。

靴箱って2段になってて、この真ん中のとこ、ざらざらになって、掃除の時に雑巾が真っ黒になる。これがなくて済むようにと、このチームが考えたのは、メッシュ素材にして、ぽろぽろほこりは下に落ち、下の段に引き出しをつければ、掃除の時に出して、ぴって捨てればいいだけ。などなど、びっくりするようなことを考えて、実際に作るんだそうです。平川先生、どうですか? みんな、びっくりするようなこと考えるんですか?

平川 さん
子どものしなやかな発想で、いろんなアイデアが出て、すばらしい。実際これ商品化したらいいねっていうようなアイデアも出てきます。

徳永 アナウンサー
まだ終わらないです。もう1個あります。会社と一緒です。

商品化するにあたっては、上層部を説得するプレゼンというのがある。これをしてもらおうと。ただ僕たちはこれを作りましたっていう発表会ではなくて、これで社会がどう変わるかっていうことをアピールしてください。ただし、2分までっていうのを、チームに課すんだそうです。
そうしていくことで人気が出てる。なぜかっていうと、さっきのスーパー子どもを思いだしてほしいんですけど、こういうのがほとんどつきますね。だって、他人と協力して製品作るし、自分で問題を発見するし、それをプレゼンで伝えますし、先ほどの新たに求められている力と同じようなことが培えると、いま大変評判がいいんだそうです。

早川 解説委員
企業の側も実は、社員のモチベーションが上がったりするんですよね。子どもたちから「すごいね」って言われるので、出前に行った企業の人たちが、自分のやってることって日常的なことなのに、子どもたちから褒められて、そんなすごいことをやってるんだっていうことに気付かされて、また行きたいみたいなことがよくあるそうなんですね。

平川 さん
そうです。実際この出前授業でも、営業の方とか、それこそ企画の方とか、いろんな職種の方が来てくださって、生徒の中に入って、アイデア出しの時にお手伝いいただいたりしました。そうすると、生徒にとっても、実際社会で活躍されてる方からプレゼンのやり方とか聞くことができるので、一石二鳥という。

齋藤 さん
アイデアを出すっていうのをもっと積極的に評価するようになると思うんですね、これから。ですから、僕は、学習指導要領でも、もっとアイデアを出す力っていうのを前面に出したほうがよかったんじゃないかと思うんです。アイデアが価値を生み、アイデアが現実を変えていく。自分の考えをアウトプットしていく、というのはいままでの教育にはちょっと手薄だったので、そういうのを目標にするといいかなと思いますね。

小野 アナウンサー
へそ曲がりな私、2つほど気になることがあったんですけど、これやっても、受験に役に立たないんじゃないかっていう。

厚切りジェイソン さん
受験自体はもう古いから、受験捨てればいいんだよ。受験はいらないから、こういうようなことをやってたらいいんじゃないですか。受験ベースで考えるからそうなるんだ。

汐見 さん
受験はね、そう簡単にはなくせないんですけどね。こういう能力ある人を上手に見つけだすような受験に切り替えないと、そこが変わんなかったら、どうしても受験の準備になってたんで、学校は変わらないですね、簡単には。

齋藤 さん
いま私立の大学では、一般入試っていういままでの入試が5割切ってるんです。だから、大学入試も、例えばAO入試とか、自己推薦とか、そういう形で、いろんな形の力を測っているっていうのはあるんですけどもね。

汐見 さん
ただね、大学でもね、本当にそういう人を採るのは勇気が必要なんですよ。それだけの体制をちゃんと作らないと、その準備、ぱぱっとやってというわけにもいかなくて、高校だとか中学校でこんなことをやってきたっていうことをしっかり出してくださって、それを見て判断するような入試に変えないと無理ですね。

小野 アナウンサー
あともう1つへそ曲がり言っていいですか。これ、余裕がある企業しかできないですよね。

平川 さん
ただ、企業だけではなくて、NPOですとか、地域のおじさん、おばさんとか、もちろんちゃんと授業の導入から指導案を作らなければいけませんけれども、それでも、いろんな方に関与してもらえばできると思います。
もちろん、売ることにいっぱいいっぱいで、社会貢献はできないっていう会社も中にはあるかもしれませんけど、私、校長やってて、どちらかというと、皆さん未来の子どもを育てるためになんとか力を尽くしたいっていう方がすごく多いなと思います。それを学校として受け入れるかどうか。あと、選別していかないといけないと思います。全部受け入れても、授業時数も足りなくなってしまいますので。

大林 さん
力尽くしたい人いっぱいいると思う。地元の出身のアスリートだっていいし、オリンピック選手、パラリンピックでもいいし、地元の企業で、そこでその地域を盛んにさせるとか、いろんなものの勉強になるから、たぶん、使い方。

汐見 さん
いまね、愛知で、派遣するためのNPOを作ったんですよ。50社ぐらいが参加したかな。でもね、学校ごとにハードルの差があって、入りやすい、にくいがやっぱりあるということと、一定のお金必要なんです。交通費とか。それが出ないと続かないんですね。

小野 アナウンサー
そういう声、来てますね。「協力したくても、どうやって協力したらいいか分からない」という声や、「以前は協力していたが、学校側が本当は迷惑なのではないかと自分の行動に自信が持てなかった」っていう声も来ています。

平川 さん
そうですね。そういう問題が時々あるので、地域コーディネーターということで、学校と地域をつなぐような方々が必要なんです。学校が言いづらいことを言ってくださったり、コーディネーションしてくださったり、地域の資源をきちんと活用する方々が。

早川 解説委員

そうした子どもたちの学習環境を整えるため国も法律を改正しようとしていて、地域の人たちが学校運営に参加する「コミュニティー・スクール」という仕組みがあります。これ、いまは作ってもいいですよっていうぐらいの法律。それを、教育委員会が作るように努力しましょう、努力するってことを義務づけるっていう法律に変えようとしている。
つまり、これから学習指導要領の中身を変えるんで、学習環境を整えるために、教育委員会も地域の人たちが学校に参加しやすいような仕組みにしてくださいということなんです。

小野 アナウンサー
ここで、1つ厳しいご意見が来ているのでご紹介させていただきます。奈良県50代男性から。

視聴者の声

奈良県・50代・男性
「詰め込み教育の反省はどうなった。ゆとり世代を人間的に劣るかのように批判して、またやるべきこと満載で押しつけるのか。子どもに学ばせる前に大人が復習せよ」。

小野 アナウンサー
そう言われてみれば、ゆとり教育が導入された時も、こんなことではいけないんじゃないかっていってそうなったのに、気が付いてみると、いま会社で、ちょっと漢字が読めない子がいると、「ゆとり?」ってからかわれたりしているという。

厚切りジェイソン さん
ゆとり教育はいいアイデアだったんですけど、途中でやめちゃったのよね。これはだめだと全部捨てちゃって、少しずつ改善していけば、いまはだいぶいいことになってるはずなのに、全部捨ててやり直しになったから、もったいなかったですね。

視聴者の声

20代・男性
「私は1995年生まれで、完全なゆとり教育を受けた世代です。そもそも試験の点数にとらわれずに、よりよい人材を育成することを目指して始まったと聞いています」

小野 アナウンサー
っていう声。これはつまり、いままた同じことしようとしてんじゃないのかと言われているんだと思うんですが。

齋藤 さん
教科の教育を軽視すると、学校っていうのが、構造が崩れてきちゃうんですね。例えば、中学・高校ですと教科に分かれてますよね。物理っていう教科は学校に行かないとなかなか習わない教科なんです。1970年には物理の履修者は9割だったんです。必修でした。いまは2割切っている。物理っていう学問をやる人が2割切った国に未来があるかっていうと、微妙ですね。それは、選択の自由を取り入れたから。自由だけども、自由のせいで、学ぶ権利っていうのが、言わば剥奪されてるみたいなもんですね。教科をあんまり軽視しすぎると、土砂崩れじゃないですけどね、地盤沈下を起こしちゃう。

小野 アナウンサー
結局、本当に学校で教わるべきことって何なんですか?

齋藤 さん
僕は物理や化学とか、そういうものは学校でやらなければ学ばないし、重要な学問だからしっかり教えるべきだと思いますね。

平川 さん
私は、もちろん知識もそうなんですけれども、いま一人っ子も増えてるっていう中で、なかなか人間関係性っていうところが、いまのお子さんはうまく育めない。それを、学校で少し嫌な思いもしながら、少しずつっていうようなところは感じるところがあります。

大林 さん
逆に、その流れでいうと、競争をしないとか、コミュニケーション能力がないし、戦わせないとか、運動会の1番決めないとか、ああいうことは、今後どうなっちゃうのか。

平川 さん
私は、地域によってもっと自由裁量性が採られてもいいんじゃないかと思ってるんです。全国、津々浦々全部一緒というのは、方法も1つしかないというのはおかしい。日本は着るものも食べるものも選べるのに、どうして教育だけがこんなに選べないのか。ここの地域に住んでるから、この学校で嫌だったら私立に行きなさいと言いますが、私立でも学習指導要領で学齢によってすごく内容規定されてるので、なかなか飛び越えられない。そこを選べるようにすることが、もっとできないかなって思うんです。これについては、先ほどの学校運営協議会で話をすればよくて、この地域にはどういう子どもが必要なのかとか、こういうことを育んでいこうって、これは、答えは実は先生が持ってるんです。きちんと。
日本の先生方、優秀で、目の前の子どもたちを21世紀に困らせないようにするためにはって先生が答えを持っているのに、がちゃがちゃ外野が言うから、これもやんなきゃいけない、あれもやんなきゃいけない、教科書もって、いっぱいいっぱいになっちゃう。そんな、スーパー子どもじゃないですけど、スーパー先生なんか、私も含めていません。

早川 解説委員
今回の学習指導要領の問題点というのは、創意工夫を求めているわりには、あれこれと細かく書いてあるっていうことなんですよね。学習指導要領っていうのは学校が授業でやる最低基準なんですけども、それがまるで解説書のようにマニュアルチックに書いてある。だから、現場の手足が縛られてる中で創意工夫をって言われても、なかなか現場の先生たち、創意工夫はしたいんだけど、やれないっていうような。

平川 さん
あと、していいのかっていうこともありますね。先ほどの本校の授業なんかでも、山田先生っていうことし異動してきたばっかりの技術科の先生がやったんですけど、やってみようよって話すと「やっていいんですか?」って。「どうしてだめなの?」と。主体的な子どもを作るためには、主体的に先生たちが考えて、もっといろんなトライ&エラーができるようにしていかないといけないんですけど、いかんせん失敗しないように。そしたら、普通の一斉授業でただ教えてりゃいいや。楽ですね、そのほうが。

小野 アナウンサー
なるほど。そんなふうに現場の先生の自由度を奪っているなんて思わず、未来の社会にこんな人材が必要だろうなと思って、子どもをスーパー子どもにしたいと思い、そのためにはこういうのが必要なんじゃないかって考えちゃいますけど、違うのかもしれない。

汐見 さん
いま出てきたようなことをやってる学校、すでにかなりあるんです。でも、それができてる学校と、必ずしもそうじゃない学校を見てみると、校長先生だとか、上に立つ人の違い。彼らがどんどんやりなさいよとやってくれると、だいぶ自信ができて変わるんです。新しいことに対して抵抗のある校長先生がいらっしゃると、先生がどんどんやれないんです。
今回の学習指導要領、僕は、基本的な方向は間違ってないとは思うんですけども、やるためには、それを具体化するための学校の裁量と、校長だとか教頭先生のイニシアチブっていうかな。それがないと、なかなかいかないんじゃないかって気がしますね。

齋藤 さん
そういう実践があれば、みんなで見に行って、アクティブ・ラーニング的ないい手法があれば、それをその地域でシェアするというかね、そういうのが必要ですよね。そういうふうに学ぶ余裕もね、先生が学ぶ余裕というか、そういうのが必要かなと思いますね。

平川 さん
実際子どもって、池があって、いろんなものをこちらが投げかけて、どんな波が立つか、どこに琴線が触れるか分かりませんし、どこに未来の種があるかっていうのは分からないので、各教科でいいと思ったものをそれぞれ持ってきて、そうすると、どっかで花が開くんじゃないかなって思うんです。だから、怖がらずにどんどん投げ込んでみる。

厚切りジェイソン さん
保護者もそれを理解しないといけないですよね。それで文句を言いつけると、なかなかできないけど、保護者もぜひ分かってほしいね。

小野 アナウンサー
そうですね。何かしてほしい、してほしいって言うだけじゃなくて、してほしいことが実現できるために、手助けできることはないかみたいなふうに考えればいいんですかね。

平川 さん
学校運営協議会もそうなんですけれども、例えば本校であればPTAの茶話会って、お茶飲みながらざっくばらんに、どっちが上とかどっちが下とかじゃなくて、話し合うっていう場面を作ってるんです。そこで私もこんな調子で話しますし、保護者の方からも、こういうふうに協力できるんだっていう、そういうラウンドテーブルな場面をもっともっと学校も怖がらずに作っていくべきなんじゃないかと思います。

齋藤 さん
民主主義的ですけどね。学校、何のためにあるかって先ほど言われましたけども、民主主義の主体を育てるっていうとこがあると思いますね。

小野 アナウンサー
自分で考えて、決められる人間を作るっていうことですか。

汐見 さん
あまり言われてないんですけど、主体的でなんとかっていう学びって、実は幼児教育はみんなやってるんです。だから、幼児教育ともっと交流して、これをもうちょっと洗練すればいいんだっていうようになったら、だいぶ変わると思いますね。

小野 アナウンサー
きょうはここまでです。どうもありがとうございました。

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