土曜の朝はしっかり!じっくり!週刊FU.KA.YO.MI

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NHK総合 毎週土曜 午前8:15〜9:28

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放送内容まるわかり!

2017年03月11日放送

震災・原発事故6年 本音で向き合う"フクシマ"

先月、番組では各地で相次ぐ"原発避難いじめ"を取り上げました。放送後、視聴者から寄せられた声は約2500件。中でも多かったのが、「福島の現状について、何が正しい情報か分からない」と言う声。 事故から6年がたち、避難している人の状況も多様化し問題はますます複雑になる中、私たちは福島の何を知るべきなのか。人々の間に生まれた意識の溝を埋めるためにはどうすればよいのか? 深読みします。

今週の出演者

専門家

今井 照さん(福島大学 教授)
関谷 直也さん(東京大学大学院 特任准教授)
小松 理虔さん(いわき海洋調べ隊 うみラボメンバー)
早川 信夫(NHK 解説委員)

 

ゲスト

綾部 祐二さん(タレント)
山口 もえさん(タレント)


小野 アナウンサー
まずは福島を取り巻く現状からです。徳永アナウンサーのプレゼンからスタートです。


プレゼンテーション①

徳永 アナウンサー
きょうはあえてこの話からします。3月11日なので、震災の話をみんなしてますが、そもそも震災の前の福島県のイメージを思いだしてください。おふたりに書いていただきました。

綾部さんは、「修学旅行」。

綾部 さん
僕、茨城県出身なんですけど、だいたい茨城の小学生はみんな、修学旅行で会津若松に行くのが多いんですよね。白虎隊の墓地を見たりとか、お城見たりとか。あとは飯坂温泉とか、そういう観光地というイメージが多いですよね。

徳永 アナウンサー
もえさんは、「お酒」。

山口 さん
はい。日本酒のおいしいお酒があるイメージがありますね。

徳永 アナウンサー
おふたりおっしゃったとおり、福島といえば、

観光地。私の印象は、手軽にハワイに行った気になれるのが福島県。ありがたい。それから、

やっぱり農産物・海産物。魚も米も。米がうまいから酒がうまいと、こういうことでございます。
私、東京に田舎から出てきた時、テレビ見てびっくりしたんですが、

東京の電気は福島で培われてますみたいなコマーシャルもよく見た覚えがあります。電力の一大供給地。いろんなイメージがあります。
ただ、6年前の震災で、東京電力の福島第一原発の事故が起きてから、この原発事故のイメージがついちゃったんですよね。この時のことをちょっと思いだしてください。
政府は、原発からの距離とか放射線量によって、避難指示区域というのを設定しました。そこにいる皆さんは避難してくださいということで各地を転々とし、福島県内の会津若松のような遠くの場所、中には福島の外に県外避難という方もいらっしゃいます。それから、避難指示区域ではなくても、放射線への不安から自主的に県外などに避難する方もいらっしゃって、多くの方が避難された。
特に首都圏とは関係深かった福島県ですが、あの日いったん、

つながりが離れてしまったのは事実です。これ全部、深読みでかつて取り上げたんですが、観光地は風評被害に悩んだ時期がありましたね。それから、農産物・海産物はいったん出荷が全部止まりました。そして、電力も絶たれた。
ただ、あの日からもう6年。一から整理して、何が変わって何が変わってないかというのを調べ直すと、いろいろ濃淡が見えてまいります。
まず、確実に変わったこと。それは福島が進んでいるということです。まずね、最近のニュースだとこれ。

さっき避難指示区域というのを申し上げましたが、段階的にどんどん解除されていて、この春もかなり解除されます。面積でいうと、ピーク時のだいたい3分の1になります。帰還に向けた動きとして、富岡町のショッピングモール開業とか、ニュースでも取り上げられてましたけど、こういう部分は進んでいます。

それから、米。うまい酒のもとの米。実は先月、関谷さんにもお越しいただいて、いわゆる原発避難いじめというのを取り上げた回の時に、ツイートが来たんです。「福島のお米がきちんと検査されていることを取り上げてください」。なので、調べました。驚きました。
福島県は震災の翌年の2012年から、収穫された福島産のお米は、全部の袋、放射線物質の検査をしてる。サンプルってよくあるじゃないですか。じゃないの、全部。それは、縁故米とかもそうなんですって。近所に配る、親戚に配るのでも、食べるためのお米は全部の袋を放射線検査を行っていて、基準値を超えたものは出ていません、いま。
ちなみに2011年にこの番組でそれを取り上げた時に、全袋検査したらどうですかって小野さんがここで言ったら、当時の専門家やスタジオは、そんなことできるわけないって言ったんです。それをいまやってるんです、ずっと。

小野 アナウンサー
ものすごく手間のかかることをやってらっしゃる。

徳永 アナウンサー
すごいことをやってるということです。ただ、価格でいうと、全国平均より1割下回った状態が続いているということです。
それから、米とくれば、きょうは魚に関わっている小松さんがお越しなので、魚の話をします。

いま試験操業という状態で、漁獲量からいうと、震災前のまだ1割ぐらい。でも、これでも相当増えたそうです。
試験操業どうやっているかっていうと、週に2~4回ぐらい港に水揚げをします。水揚げをすると、魚の種類ごとにサンプルを採って、放射線検査をします。で、基準値を下回ったことを確認できたら、その種類を出荷するっていうのをやっています。出回ってるものは基準値以下です。というのがずっと続いていると。

綾部 さん
なるほど。

徳永 アナウンサー
変わってきてる。
でも、変わってないと言わざるを得ないんじゃないかなとわれわれが思ったのは、ここです。私も含めですが、県外の人が持っている福島の"イメージ"。

実は当番組がNHKのネットクラブでアンケートを採って、福島のイメージをさっきみたいに聞いたんです。中にはこんな声、まだあるんです。「福島は汚染されたままのイメージ」「人が住めない状況な感じ」「何となく福島県産は避けてしまう」。
綾部さん、修学旅行っておっしゃってましたけど、実は修学旅行で福島に行くっていうケースって、震災前のどれぐらいまで回復してるかというと、まだ6割未満。なんでですかって取材すると、親に反対する人がいるからっていう声がありました。

綾部 さん
父兄の方がね、わざわざ福島じゃなくてもいいんじゃないかって言うっていうのはニュースとかで聞きますけど。

徳永 アナウンサー
そう。だから、この離れた状態が戻っているかというと、そうとも言いきれないっていうのもあります。
それから、前回もお伝えしたので、これは忘れちゃいけない。ここですね。つまり、福島から県外に避難してきた人たちと、もともといる人たちの間。

子どものいじめっていう切り口で先月お伝えしました。今週ニュースになりましたが、NHKが行ったアンケートでは、この6年で「いじめを受けた」「偏見を受けたことがある」「差別を受けたことがかつてある」と答えた大人も、かなりいることが改めて浮き彫りになった。

山口 さん
でも、6年前は、日本みんなで、福島の人たちを助けようって動いたのに、どうしてこんなに変わってしまったんですかね。

徳永 アナウンサー
放射線とか、いわゆる賠償金のこととかっていうのが、あんまり知らない状態だっていうことが1つの原因なのかなっていうのは、改めて取材するたびに見えてくることです。

綾部 さん
「頑張ってね」って声かけることができなかったとしても、逆にマイナスに、「来んなよ」とかって言えるっていうの、すごいですよね。そこが、鬼なのかなと思いますよね。せめてゼロ、無関心は分かるけど、マイナスっていうのがすごいなっていう。

徳永 アナウンサー
もう1つお伝えしたい大事なことがあって、実はここにも難しさがあります。これ。避難指示区域の話をしなきゃいけません。
解除されてきているっていうことは、もちろん前へ進んでいることかもしれませんが、一方でこういうことがあります。避難していた方が戻れるってことですよね。そうすると、私は戻るべきか、いや、やっぱり避難したままでいるかを、皆さんが選ばなきゃいけないっていう状態になっているということでもあります。
深読みも何度か福島の方に取材をして、お話伺う機会があったんですが、よく聞いたのはこういうことです。例えば、戻った人、戻ると決めた人。近所はみんな戻っていない。私の選択は正しかったのか悩んじゃうっていう人もいました。
逆に、戻らないと決めた人。みんな戻ってると、自分だけふるさとを捨てたみたいに思われていたらどうしようって悩んでる方もいました。つまり、

ご近所のコミュニケーションがなかなか取りづらくなっているケースもある。

綾部 さん
家族の中でも、意見が分かれることもあるでしょうしね。お父さんは戻る。でも、お子さんとかお母さんは、このままでいいんじゃないかとか、その逆のケースもあるでしょうし。

徳永 アナウンサー
進んでいることがあるのも事実だけど、あちこちに起きた壁の状態が戻ってないのも事実で、6年がたっているっていうのが見えてきたことなんですよね。

視聴者の声

「心の中の差別をどうやってなくせばいいんだろう。それが知りたい」

「放射能のイメージが正しく判断できるようになりたい。そうすればなんとかなるんじゃないか」

小野 アナウンサー
先生方はどっから手をつけたらいいとお考えですか?

今井 さん
僕も、いじめとかね、嫌がらせっていう体験はあるんですね。2011年の震災の直後、11月ぐらいに、とある学会に福島から行って、懇親会の席で、僕が歩いていたら、「ここに放射能をまき散らしてる人いますよ」って言われたの。

小野 アナウンサー
えーっ?

今井 さん
その時は、僕はすごく怒り心頭ですけども、いま振り返ってみると、その人はひょっとしたら善意で言ってたかもしれない。

小野 アナウンサー
善意?

今井 さん
つまり、僕を議論の枠に入れて、そういう話題にしようかなというふうに、ひょっとしたら思っていたかもしれない、といまなら言えるんだけど、その時は僕は頭をがーんって殴られたような、そういう気分で、こいつとは絶対口聞かないぞと。僕ならそれで耐えたかもしれないけど、子どもだったら耐えられないですよね。そういうのは原体験としてありますよね。

綾部 さん
それは、芸人の世界でいう、いわゆる"いじる"っていうこととしては大間違いのいじり方だと思うんですね。善意でやったのかもしれないですけど。

小野 アナウンサー
だけど、そういうことをついしてしまうところに何か原因があるんだったら、そこがちゃんと分かった上で、こんな世の中変えたいですよね。

綾部 さん
マジで、分かんないですよね。こういうニュースを聞くと、実際被害に遭われてる方がいるんですけど、こんなやついるの?っていう。

関谷 さん
最初の映像も、福島第一原発の爆発の映像と、避難をしてる映像から始まったじゃないですか。そのイメージしか私たち持ってなくて、そのまんま6年間来てしまってるんですよね。
いま、もちろん避難されたままで大変な人もいるし、戻れない人もいるし、けど、福島県内の190万人の人、普通に生活を送ってる人もいる。街なかではいろいろにぎわいも少しずつ取り戻してきた。それはなかなかニュースにならないし、情報として出ていかないから、伝わらないっていうのはありますよね。

山口 さん
おっしゃるとおりで、福島のことをやったと思ったら、まだ除染作業していて、その残った土がこんなに積み上がってますみたいな、そういうことはよくニュースになるんですけど、盛り上がってるとか、活気があふれてるっていうプラスの情報がなかなか流れない。

今井 さん
地域性にもいろいろあって、そういうところもあれば、進んでないところもあるんです。先ほど、「進んだ」っていう表現をされたんですけども、進んだと言えるかどうかっていうのは、われわれとしては疑問に思ってるところで、

今回この3月で、あるいは4月で、避難指示の大きなところが解除されて、グレーのところだけが残るんですね。帰還困難区域といって、線量の高いところとされてるところ。ここの、解除されるピンクのところが本当に大丈夫なの?というような意見はたくさんあるわけです。
例えば富岡町とかだと、道路1本隔ててこちらからは、いま国でさえも危険ですよって言ってるところ。道路1本隔ててこちらからは、4月1日からはいいですよ。実態的にも感情的にもありえないですよね。道路1本。空気は動いてるんだから。そういうところが原因となって、いろんなあつれきを生んでしまうということはあると思いますね。

小野 アナウンサー
でも、どっかで線を引かないとだめだっていうのもあるとは思うんですけど。

今井 さん
でも、道路で線引く必要は全然ない。だって、家が並んでるんですよ。

早川 解説委員

私たちは震災直後から継続して、新潟県に避難してる人たちの調査してるんですけども、今回の帰還政策について聞いたところ、「急ぎすぎだ」って声が多いんですね。104人から聞き取り調査したんですけれども、その44%が「急ぎすぎ」だと。「どちらとも言えない」っていう人も加えると、そんなに適度な進み具合だというふうには思ってないってことなんですね。多くの人たちが、住民の意向は無視されていると感じてるっていうふうにも言ってるんですね。

小野 アナウンサー
ご指摘も来てますね。
「関心が薄いと、避難指示区域の解除イコールすべての問題解決と誤解してしまいそうです」。
実際、避難指示解除のニュースを聞いたら、ああよかったねって思いたくなりました。

綾部 さん
クリアになったんだろうなって、そういうイメージを持ちますよね、やっぱり。

早川 解説委員
皆さんね、帰りたくないわけじゃないんですよ。帰りたいんだけれども、いまの状況では帰れる状況にはないっていうふうに感じてるってことなんですね。

今井 さん
楢葉町というところが一昨年に避難指示解除されたんですけども、戻ってる人は1割ぐらいです。これから富岡とか浪江とかが解除されますけど、おそらくそのくらいしか戻らない。戻らない理由は、元の町に戻ったんですかっていわれたら、元の町に戻ってないから戻らないんですよね。

小野 アナウンサー
でも、戻れますよって言われてるのに戻らないっていう状況が、ひょっとしたら、さらなるいじめや、その人たちが感じる居心地の悪さを加速させるっていうか、増長させるっていうか。

今井 さん
だから急ぎすぎなんです。なぜそれが問題になるかというと、先ほど、帰ってもいいよということだっておっしゃったけど、実はそうじゃなくて、帰れという意味でもあるんです。なぜかというと、避難指示を解除された時に、同時に支援が打ち切られるんです。

避難指示の解除とセットで支援が打ち切られるんですね。避難を続けている人たちに対して、あなたは、ここは帰ってもいい地区になったんだから、これ以上の避難を続けてもだめですよという意味が同時にあるわけですね。
だから、帰ってもいいよという単純な話じゃなくて、帰るのか帰らないのかっていう、そういう選択が迫られてるっていうことになりますよね。

綾部 さん
それは、帰った方には支援が打ち切られるってことですか? 個々の家庭で切られるのか、町全体で切られるのか。

今井 さん
それこそ問題で、つまり、一律に扱いがあるわけですね。個々の事情に応じて、例えばこの家庭にはこういう支援が必要ですとかいうことがあればまだいいんですけれども、ここの地域は全部一括してやりますよって話になっている。

早川 解説委員
避難指示が解除されるってことは、戻っていいですよってことなんだけれども、戻れるっていうことになってしまうと、今度は、これまで避難指示を受けて避難してきた人たちは、自主避難っていう形になってしまうんですね。それで、支援が打ち切られちゃうっていうことなんですね。

小松 さん
僕ら福島の中に住んでる人間からすると、戻る、戻らないっていう、ふた通りの回答が生まれてきちゃう時に、戻らないのは、どうしても線量の問題とか、町が復興してない、僕らにとってはすごくネガティブなイメージで語られてしまう。戻らないっていう選択をする人の気持ちは尊重したいんだけれども、僕らが福島に暮らすことを選んだってことが否定されてるような気持ちになってしまうっていうのもあるので、難しいですよね。

早川 解説委員
私も福島の出身者なので、県外の人たちからすると、「福島」っていうとみんなひとくくりに福島ですよね。ところが、県外に避難している人4万人、県内に避難している人4万人、現に暮らしている人が、それよりはるかに多い194万人いるんですね。避難せざるを得ないっていう人たちも大勢いるんだけれども、その一方で、当たり前に日常の生活を送っている人たち、そっちのほうがはるかに多いということなんですね。
おそらく避難指示の地域のイメージでみんな語られるんだけども、そのほかの地域はかなり安全な地域ですよね。そこもいっしょくたにして福島っていうふうに捉えられてしまうところに、この問題の難しさがあるんじゃないかなという気がしますね。

小野 アナウンサー
なるほど。福島の食材について、お米やお魚について、たくさんツイートが来ています。

視聴者の声

「食材の放射能の検査の仕事をしています。福島の食べ物は安全です」

「全袋検査してたの?」

「福島県産は優先利用してますよ、私」

「うちのお米にもちゃんと検査済のシール貼ってあるよ。母の実家が毎年くれる新米にも貼ってあるよ」

関谷 さん

毎年1000万袋、2012年から調査をしていて、おととしから基準値超えのものはゼロなんですよ。それを、福島県内では常にニュースになってるし、みんな知ってるんですよね。79%の人は知っている。けど、福島県外の人はそのうちの半分ですね。あまり知らないんですよ。福島県内ではいろんなニュースがあるから、県内のさまざまな状況があるっていうのは知ってるけれども、県外ではなかなかそれが伝わってない。

小野 アナウンサー
そのあたりはですね、実はとても悩みながら歩んでこられているのが、小松さん。きょうまでの日々を簡単なプレゼンにまとめました。次は田中アナウンサーです。


プレゼンテーション②

田中 アナウンサー
小松さんですが、これまで地元のテレビ局の記者や、震災後は水産加工会社の広報を経験してきました。つまり、ずっと福島の情報を伝えてきたが故に、いかに震災後の福島のイメージを払拭するのが大変なのか、身をもって体験されてきたんですね。
私も行きましたけども、

本当にいまたくさんの魚が、おいしい魚が捕れます。でも、やっぱり消費者はこの声があるそうです。

福島産と聞いただけで、「大丈夫なのかな」。小松さんが水産加工で働いていた時も、お客さんから直接こういう声があったということなんですが、小松さん、そこで、こういう声にはどうすればいいのか。自分で安全をしっかりとPRしようと。
先ほど、試験操業というのがありました。あれはいま原発沖から10キロより外側の海で行われているんですが、小松さんは10キロよりもさらに近づいて、みずから船を出して、魚を釣って、自分で測ると。線量を。そこでも基準値は超えないということを自分のSNSで皆さんにお伝えしていたんです。
で、この皆さんがどういう反応だったか。

小野 アナウンサー
大炎上。

田中 アナウンサー
基準値を下回っているという情報を出しても、「信じられない!」とか、「毒を売るな!」という声があると。何度も何度もデータを出しても、この声が消えることがなかった。小松さんはついつい、ちょっと感情的になって、「なんで分かってくれないんですか」。それにまた批判が来るという、繰り返しだったんですよね。

小松 さん
そうですね。水産加工会社、かまぼこ屋さんだったんですけど、毒を売るなんて信じられないっていうところから始まり、こうやって自分たちで検査していても、どこからかお金もらって、安全だっていうことを言いたいだけでしょとか、皆さんのデータなんて信じられませんとか。僕たちは、できるだけ検査してるところとかも全部オープンに出そうとしてるんですけど。

綾部 さん
売る側の人間だから、よく言ってるんだろっていうふうに思われるってことですね。

山口 さん
消費者側からすると、逆に聞きたいんですけど、分析してる量を超えてしまうものって、いま捕れたりするんですか?逆にもう捕れないんですか?

小松 さん
(1kgあたり)100ベクレルっていうのが国の基準ですけど、昨年2016年の1年間、福島県が数千匹っていう魚を捕ったけれども、100を超えるのはゼロだったわけですよ。

山口 さん
それをもっと伝えるべきだと思います。どっかでは超えてるの出てるんじゃないのって思っちゃってる人が、たくさんいると思うので。安全なんだよっていうことを、県外の人たちもちゃんと認識をしないとだめなんだな。

関谷 さん
安全なんだよって言うと、小松さんのように大変な目に遭うから、みんなこの問題を面倒くさいと思って、いつの間にか言わなくなってしまってたんですよね。それがもう6年経過して、何となくあいまいなイメージのまんま不安に思ってる人もいる。片方では安全だっていうふうに言ってる人もいるっていうので、このまんま来ちゃって、上書きがされてないんですよね。

小野 アナウンサー
イメージっていうものについてなんですけど、実はきょう、あえて番組のタイトルで福島っていうのをカタカナで書いてるんです。「本音で向き合う"フクシマ"」。これについて、こんなツイートが来ています。
「番組は福島をなぜカタカナ表記にするのか。それが、番組が問題として考え、風評被害やいじめにつながるのに、さり気なく加担しているのは確かでしょう」
この方にお伝えしたいのです。
あの日から、世界中が「フクシマ」っていう言葉を、ある1つの意味を持った単語として使うようになりましたよね。でも、いつまでもそのイメージのままでいいのだろうか。もう1回漢字の「福島」に戻りたい。それをイメージしたいっていうことを帰着点にしたくて、あえて番組スタートはカタカナで始めてるという狙いなんです。先に狙いを言ってしまったら、なんかぶち壊しのような気もしますが、言っておきます。

田中 アナウンサー
情報で説得っていうのがいかに難しいのかと、小松さんは思った。次の一手を考えました。もう説得はしません。とにかく1回福島に来てください。釣りしましょう、楽しみましょうということを企画したんですね。
実際の写真です。

山口 さん
わあ、大きい。立派。

田中 アナウンサー
いま漁がある程度規制されてますので、こうやって結構大きなものが捕れると。こういう経験した人っていうのは、すごくうれしいと言うんだそうです。釣った魚は、一緒に小松さんたちと参加者が検査もするんです。で、やっぱり基準値以下なんだねって、釣りで楽しいという思いのあと、安全なんだっていうふうに納得してくれる人もいると。
そういう人たちっていまSNS、それぞれ皆さんやってますから、自分で、楽しいとか、安全だってよっていうようなことを発信する。小松さんがお願いしたわけじゃないんだけど、みんなが自主的に、情報が伝わるようになったというのは、少しずつ手応えを感じている。
でも、この活動に対しても、地元の人からは、福島の人は、むしろ被害を受けたほうなのに、そこまでやる必要があるのかという声もあるのは事実。この試行錯誤の中で6年間来てるんですよね。

小松 さん
そうですね。僕、最初に食の世界に携わってたんで、データを出すわけですよね。そうすると、他県の人たち、初めて見る数値だからよう分からんと。なんで伝わんないんだろうとずっと思っていたんですけど、たぶん僕らって、出てきたデータが、科学者の人が言ってるから正しいんだじゃなくて、誰が言ってるから信じられるみたいな方向で、感じちゃうところってあると思うんです。例えばこの女子大生なんですけど、自分のチャンネルで、フェイスブックとか、ツイッターとか、SNSを使って発信してくれると、彼女が実際行ってきたんだからそうなんだねっていうことで伝わっていくので、そういう小さい活動をどんどん続けるしかないんじゃないかなっていうのが僕の問題意識になりましたね。

小野 アナウンサー
でも、同じようにテレビ局に勤めていらしたお立場だったからあえてお聞きしますけど、なんで俺の言うことは信じないのに、友だちの言うことは信じるの?みたいな感じはしませんでしたか?

小松 さん
でも、人間ってそういうもんだよなって思わないとやってられない。どうして伝わらないんだろう、なんでだろうっていうふうに考えるよりは、伝わるように伝えるしかない。

綾部 さん
強く主張すると、ふんってなるけど、ナチュラルに主張されると、何?ってなる。もっと言えば、毒を売るなとか言ってる人たちは、逆にまだよくて、いちばん怖いのは、その騒動すらも見ずに、福島産は別にいいからっていう人たちもたくさんいるわけじゃないですか。ゼロ。無関心。

小松 さん
まさにそこだと思うんですよ。どうしても、毒を売るなとか言われちゃうと、その人に、そうじゃないっていうことを、すべてのエネルギーを費やして言っちゃうんだけど、実はそれ以外に、そもそも知らないという人たちがたくさんいるので、同じエネルギー使うんだったら、新しいお客さんをつかまえられるようにしたほうがいいんじゃないかなと、僕個人は思います。

関谷 さん
福島県産拒否してるの、2割ぐらいなんですよ。8割ぐらいの人はある程度気にしないで消費してるのに、なかなかそこが戻らないっていうのは、上書きができてないってことがあると思うんですよね。

小野 アナウンサー
今井先生はこういう取り組みはどう見てらっしゃるんですか?

今井 さん
もちろん、それ自身の取り組みはすごいと思ってますけども、いまお話しになってる、「福島」って一律に語ってるところでいろいろなギャップが出てきてるとこがあって、私が最初に話した話と、いまの福島の話は、同じ福島って言葉だけど違うんですよ。それがいろいろずれを生んでるような気がします。じゃあここ(帰還困難区域)の産物はどうなんですかっていったら、それはみんな警戒しますよね。警戒するし、しなきゃいけない話ですよ、むしろ。そこのギャップなんですよね。どうしていったらいいかは回答ないんですけども。

小野 アナウンサー
難しい問題ですもんね。

関谷 さん
もちろん、帰れない、線量が高いっていう問題あるんですけど、大熊とか双葉でも、試験栽培っていって、これからそこで農業できるのかどうかっていう取り組みがいま少しずつ始まってますし、浪江はことし米植えますし、そういう取り組みは進んでるんですよ。
それと避難の問題っていうのが同時並行で進んでるっていうのがいまの問題で、安全なとこは安全になってるところもあるし、そうじゃなくて、帰れない、困ってるところもあるし、それを一緒に考えていかなければいけないんですよ。

小野 アナウンサー
でも、農業を再開するにしたって、そこで働く人がいなかったらできないんだから、避難指示が解除されて人が戻ってくるようになることは、いいことのように思えます。でも、それが同時に起きていることが問題だとおっしゃるのはなぜでしたっけ?

今井 さん
それが、急ぎすぎなんですよ。いま急がなきゃいけないのは、被災者の生活再建なんですよ。実際に避難してる人とか、避難してなくても、不安を抱えながら生活してる人に対する支援。これは、急がなきゃいけない話。
でも、空間の復興ね。地域の復興というのは、時間をかけなきゃいけないんですよ。それはなぜかっていうと、相手は放射性物質だからです。それは普通の自然災害と違う特色がそこにあって、時間をかけなければ解決できないことがたくさんある。それを急ぎすぎる。
例えば、試験栽培をするのはいいと思いますよ。でも、それだから戻っていいですよって話とはまた別の話なんですよ。

関谷 さん

けど、戻れないから、もう農業やらなくていいとか、そういう話とも私は違うと思いますね。同時並行で進んでる話だから。農業をやってる人は農業をやりたい。漁業をやってる人は漁業をやりたい。けど、戻りたくないっていう人もいる。それが複雑に絡み合ってるのがこの問題。
原子力災害って、普通の自然災害のように、津波が来て、徐々に徐々に復興していくって話じゃない。線量がだんだんと下がってく、変わってく。問題の構造も変化してるんですよね。直後は健康の不安だったり、メルトダウンの問題だった。けれども、それがだんだん変わってきて、どうやって除染をしようかとか、除染をした廃棄物をどこに持ってこうかって話。
いまは、少しずつ解除されていって、本当に戻れるのか、戻れないのか。生活ができるような状態なのか。少しずつ原子力災害の中身というのが変化してるんですよね。これをきちんと、私たち、知って、考えていかないといけない。それを知らないまんま、福島怖いんだって、安全だ、危険だって、それだけ言ってていいんですかっていうふうに思うんですよね。

小松 さん
ここまで詳しく説明されると、例えばおふたりとかは、なんかすげえ大変すぎて、何も言えねえよっていうふうになっちゃいますよね。

綾部 さん
そうなんですよ。だから、ニュースとか見ても、原発で大変です。それが、すごいマスクして、防護服着て、その取材をしてれば、ぱっと見、やっぱ大変なんだとしか思わない。いわゆるどんぶり勘定じゃないですけど、ぱっと見た感じのイメージで、こんだけ大変なんだで終わると思うんですよね。これをどういうふうにしていくかですよね。県外の人たちが。

関谷 さん
先月ニューヨーク行ってきたんですけど、ニューヨークの人、福島県内の水飲めないと思ってるんですよ。あと、木もなくなってるんだろうとか、そういうふうに語る人もいる。テレビ、新聞だけで見てると、そういうふうに間違って認識してしまうから、少しずつちゃんと分かってかないと。

早川 解説委員
私は、福島県外の人たちに言いたいのは、自分の目で見て体験することが必要なんじゃないかっていうことなんですね。いま被災地の多くは復興してます。復興してるところには、どんどん足を運んでほしいんですね。観光旅行をしてもいいし。そして、そうすることによって、その地域にはお金も回りますし、その地域復興の支えにもなるわけですね。だから、全然遠慮せずに被災地に足を運んでもらって、何かを感じてほしいんですね。そうすることによって、誤解って少しずつ解けていくんじゃないかなっていうふうに思いますけどね。

山口 さん
私は県外ですけど、6年たったいま、何かをしたいっていう気持ちはずっとあるんですよ。でも、なかなか子育てだったり仕事だったりで、できない人もたくさんいて。私は、福島物産展とかあったりすると、何か自分が買ったことによって、福島の方たちの力になれるんだったらと思ってるんですけど。でも、結局、それ以上にもっと違う情報がいっぱい来てしまっているっていう現実が、すごい悲しいなって思います。それをどうしていったら、県外の人たちが力になれるのかなって思うんですね。

小松 さん
こういう難しい話を、難しく考えてしまうとよくないと思うんですね。関心があれば、そういう大変な人がいるんだ、こういうのがこう進んだらいいね、多様な選択が尊重されるといいね。でも、そこのレベルにたぶん至ってない。
本当にまだ全然基本的な情報が知られてないっていう時に、いちばんの入り口は、もえさんが最初に、日本酒っていうのがありましたけど、福島のお酒はたぶん風評被害とかないんですよ。売れてるから。酒を飲んだ時に、初めて福島で米を作ってる人のことを考えたりとか、避難してるし、いろんな選択がある中で大変な思いされてるんだなと思うことも関心なので、どうやったら無関心の人に関心を持ってもらうかっていうのが、最初の議論のたたき台にしないといけないのかなという気は、僕はしますね。

綾部 さん
僕も、この時期は、いっぱいテレビでやるんで、何となく目にとめますけど、じゃあこれが夏とか秋ぐらいになって、自分でネットで検索して、福島の方いまどうなってんだってやるかっていったら、僕、やれないですもん、やっぱり。

今井 さん
メディアに対して僕も不満があるのは、いま流れてる放送も、福島かわいそうだね、不運だね、大変だねって、そういうことなんです。そういうイメージで語られる。つまり、被害者のイメージでずっと語られてくるんだけど、これは事故なんですよね。事故っていうのは加害者がいるんです。この事故の全体の検証とか責任っていうことが、ちょっと足りてないんじゃないか。それはわれわれも含めてだけども、どうしてこんなことになっちゃったのっていう、そこの根本的な構造、追求っていうのが、僕はもうちょっと、メディアを含めて、われわれも含めて、やらなきゃいけないんじゃないかなと思います。

小松 さん
本来は、県外に避難した人も、県内で農業を再開しようとしてる人も、もしかしたら同じ被害者なのかもしれないのに、被害者どうしが自分の選択をそうじゃない、ああじゃないってなってると、外側にいる人ってよけいに、福島の問題は福島の皆さんで解決してくださいよってなってしまう。伝え方っていう意味では、僕もまだまだ、今回の総括もたぶん足りてないし、もっと福島の現実っていうところも、メディアに取り上げてほしいなっていうのは思いますよね。

今井 さん
ひとごとになっちゃってるんですよね。

関谷 さん
危ない、安全とか、簡単に語っちゃいけないんですよ。いろんな思いの人がいて、それで必死になって向かい合ってんだから、それをちゃんと分からないとだめなんですよね。単純にあそこの区域は帰れないから危ないっていうだけじゃなくて、きちんとこういうふうに議論できる場面が少しずつ必要なんだろうと思いますけどね。

綾部 さん
年に1回、みんな大変ですねっていうふうに思う時期になってしまってるっていうことですよね。

小松 さん
そこじゃ変わんないんです。

関谷 さん
6年たってるんで、アップデートしてきたいですよね。少しずつ変わってるんですから、それをちゃんと認識してかないと。

視聴者の声

「最も影響力のあるマスコミの責任を問いたい。新しい情報を発信していません。思考停止のこの6年」

「やはり無知と無関係が問題だと思う。修学旅行は福島に行くべきだと思う。現地を見ればいじめる気なんて起きないと思う。胸が痛くなる景色でした」

「いじめや差別は言語道断だが、その背景にある不安な気持ちは悪いことですか? みんな不安や無知を解消する努力をしてますか?」

「事実と向き合っていかなければいけないのは、意外と被災者以外の人たちかもしれませんね」

小野 アナウンサー
メディアに対する批判はもちろんちゃんと受け止めないといけないと思います。
3月11日だからやるんでしょという批判もたくさん来ていますが、それでも、きょう、これをやれてよかったです。皆さん、ありがとうございました。

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