土曜の朝はしっかり!じっくり!週刊FU.KA.YO.MI

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NHK総合 毎週土曜 午前8:15〜9:28

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放送内容まるわかり!

2017年05月13日放送

近くて遠いとなりの国 韓国はどこへ行く?

今月10日、韓国の新しい大統領にムン・ジェイン氏が就任しました。北朝鮮への対応など、様々なニュースが相次いでいますが、私たちはそもそも隣国・韓国のことをどのくらい知っているでしょうか。 今も北朝鮮とは休戦状態にあり、巨大なビルとバラックが同居する様な格差が広がり、過酷な学歴社会の中で若者の失業率が高い状態が続く韓国。大統領選を入り口に「近くて遠いとなりの国」韓国のいまとアジアのこれからを深読みします。

今週の出演者

専門家

木村 幹さん(神戸大学 教授)
李泳采さん(恵泉女学園大学 准教授)
出石 直(NHK 解説委員)

ゲスト

チャンカワイさん(お笑い芸人)
宮崎 美子さん(タレント)

今週のグラフィックレコーディング

グラフィックレコーダー
山田 夏子さん


首藤 アナウンサー
「韓国ってどんな国?」という質問、実は私も正直、なんか聞きづらい部分があったんです。街の人も、近くて遠い、近い部分はすらすら言ってくださるんですけれど、遠いことに関しては口ごもるといいますか、そういう雰囲気がありました。おふたり、どうですか?

チャンカワイ さん
どうしてもことばを選んでしまうというか、それが正直な意見ですね。

宮崎 さん
そうですね。親しみやすいんですよ、姿形も一緒だしっていうか。だけど、でも、どこかで日本人って何か意識しなきゃいけないことが重くあるから。ほら、言いにくいんですよ。

首藤 アナウンサー
そういう空気になるんですよね。お隣の国なんだけど、何だか分からないということなんですけれども、近くて遠い国でいま何が起きているのか、きょうは専門家の方と一緒に考えていきたいと思います。
さあ、まずは韓国といえば、この方からプレゼンしてもらいます。


プレゼンテーション

宮崎 さん
えっ?

首藤 アナウンサー
大丈夫かな。あら、ちょっと、ちょっと。

徳永 アナウンサー
すいません、ほんと。しゃべりやすい空気を作ろうと思ってよかれと思ってやってみたら、何の意味もなかったという。

宮崎 さん
いやいや、勇気あります(笑)。

チャンカワイ さん
勇気は買います。

徳永 アナウンサー
何の意味もない、勇気だけで。なんでかって言いますとね、私も首藤さんも打ち合わせで、韓国といえばと言ったら、すぐ「冬のソナタ」って言ったら、こうなっちゃった。私たちにとっては、韓国と言えば韓流ドラマなんですね。冬ソナブームって13年前なんです。
あれからいろんなものが日本でブームにもなりましたけど、実は13年前より、いまの韓国のほうが、言ってしまえば冬と言えるぐらい、いま大変な状態だという話なんですね。きょうは素朴な疑問に答える形で、知ってそうで知らない韓国の話をしようと思います。
まず、これですよ。さっきもあったこれ。

土曜夜のニュースは毎週これ。一番多い時で30万人近い方がソウルの広場に集まった。
本当に正直に当時の僕の思いを言うと、「怒るのは分かるけど、何もそこまで」。
怒るのは分かるけど、大統領を結果的に代えることになるくらいまで怒るのは何なんだろうというのが正直なところでした。それを知りたくていろいろ調べると、その謎を解く写真を見つけました。

これです。夜、デモしてました。昼間どうなってるんだろうと思って、ことし2月に撮った写真です。会場にこんなのがあります。縄に縛られたパク・クネさん。怒りの対象になってるんですが。実はそれ以外にもたくさん人形がある。政治家の人ももちろんいます。でも、それだけじゃないです。これがキーです。

財閥って聞きません? よくドラマにも出てくる。いろんな有名な会社があります。韓国における財閥の存在感って絶大。こんな数字があります。

株式の時価総額という、会社の規模を表す数字を見ると、韓国の10大財閥だけで全体の5割以上を占めてる。韓国の経済は、財閥なくしては回らないぐらい。でも、ここに勤めてる人の数は全体のたった6%です。
つまり、この話。

「格差」。 韓国といえば受験競争。でも、いい大学に頑張って入ったとしても、いま就職できないっていう人も多くなってるそうです。一生懸命やってもね。
実は格差は若い方だけではないそうです。お年寄りです。日本で当たり前の皆年金。つまり、どんな職業であっても、基本、原則加盟してればあとで年金がもらえるって仕組み、当たり前ですが、韓国で導入されたのって、実は1999年だそうです。平成11年。いまでも6割近いお年寄りは年金をもらえてない。

本当深刻だなと思う写真があります。これです。
これは韓国ソウルの中心部、広いハンガンという川が流れていて、橋が何本かかかっています。そのうちの1つに、手すりにこんな文字がいくつか書いてあるんです。
これ、「サランハンダ」っていうんですけど、「愛してる」って書いてあるんですね。これ、何かというと、ここから身を投げる人が後を絶たないので、思いとどまってもらいたくて書いたと言われている。
ここまで格差というのは深刻だと言われている。これが怒りの原点でもあるし、本来ならば格差を是正してくれる人は、政治家なはずですよね。
その政治家がパク・クネさんだけじゃなくて、

歴代の大統領が、疑われて起訴されたり、疑われてみずから命を絶ったりっていう最後を遂げている話って、よく聞くと思います。
本人やその家族が何をして疑われたかっていうのを見てみると、同じ字が書いてあります。「収賄」「収賄」「収賄」「収賄」。賄賂をもらってたんじゃないの? っていう話です。つまり、ひいきする代わりに、ズルしてお金をもらってたんだっていうのが分かってもめる。これを繰り返してきた。
実はパク・クネさんが当選したのが2012年。選挙の時にパク・クネさんのイメージは、クリーンで売ってたんです。私こそ経済をあなたたちの手に取り戻します。財閥との関係、私が見直しますと言って当選した。そのパク・クネさんにスキャンダルが出たから、裏切られたとあれだけ怒ったと言われたら、ちょっと分かりますよね。

それで、この方が新しい青瓦台のあるじになったムン・ジェインさん。当然就任後

「今度こそ私が財閥改革の先頭に立ちます」とアピールしたんです。こんなに大変だって知ってました? ムン・ジェインさんの宿題っていうのは、これだけでない重い宿題がいっぱいある。さっき前半のニュースで、北朝鮮のこと、日本のことだったり、おつきあいが大変です。
こんなことも言ってます。

「朝鮮半島の平和のためならできることはすべてする」。さっきも解説でありましたよね。これは言わずもがなでこのお話です。

北朝鮮の核ミサイルの話はご存じのとおり、おつきあいが大変です。1個、このお話をしておきたい。ここの線、なんていうか知ってます?38度線。
そもそも、国境じゃないんです。

軍事境界線です。つまり、朝鮮戦争は正式にはまだ終わっていない。

いったん停戦の状態なんです。
私、仕事で2月に仕事でソウルに行って、通訳の方としばらく話す機会があって言われてハッとしたことがありました。「徳永さんね、この国はまだ戦争を終えることができていないんです。あなたや日本の方に、それだけは忘れてほしくないんですよ」って言われた時、この格好で言うのも何ですが、しばらくショックで、ことば出せなくなったのを覚えています。いまでも徴兵制度があって、今日お越しの李さんは行かれたそうです。実際。この状態です。北朝鮮との向き合い方ですらこんなに大変。つきあうのは、ほかもいっぱいあるんです。
その大変さを物語る最近のニュースがこれです。

このTHAADの話というのはよく出てきますが、

最近、韓国に配備されたものです。1000キロ以上の非常に広い範囲、辺りをレーダーでずっと高性能で監視し続けていて、仮にミサイルが撃たれた場合、高い高度の状態でも打ち落とせるっていう超ハイテクシステム。
これを置かせてくださいと言った国がここです。

韓国には、約2万5000人アメリカ軍の人が常駐している、安全保障の大事なパートナー。でも、このTHAADを置くことについては、全く逆のことを言う国が近くにあります。

「やだ。置かないで、頼むから」って言い続けてきたんです。なぜかというと、もうお分かりで、これ。北京もそのレーダーの範囲に入ってます。
つまり、アメリカ軍にずっと見られてるようなもの。それはまっぴらです。頼むから韓国さん、置かないでください。もし置くんだったら、やることやってもいいんですよ。
実は韓国というのは、いろんな国にものを売ってもうけるスタイルなんです。いちばんのお得意様が中国で、外国からの売り上げの4分の1以上を占める。最近起きているのが、中国から韓国に来るツアーのキャンセル。そして、中国国内にある韓国のお店で、不買運動が起きることもあるそうです。
つまり、安全保障の大切なパートナー、アメリカと、経済の大切なお得意様、中国の間でどうしていいかっていうのをずっと選択、迫られているのがいまの韓国というわけです。
ムン・ジェインさんは、これもどうしていくかを考えなきゃいけない。宿題、重いんです。
韓国といったら、「冬のソナタ」ぐらいかな。とか言ってる場合じゃないぐらい。

首藤 アナウンサー
大変なことが降りかかっているというのはよく分かったんですが、どの問題からいきましょうか。いちばんの問題、どうですかね。
格差は、日本でも言うじゃないですか。日本の中にも格差って言いますけど、どれほど大変なんですか。李さん、韓国の若者の事情にお詳しい専門家でいらっしゃいます。

李 さん
いま現在、韓国でいちばんエリート大学のソウル大学でも、それの正規職、就職率は6割しかないんですね。地方大学出身であれば100人の中で1人しか正規職がないんです。
それほど大手企業は成長してきたのに、実は韓国はいま不景気の中で、若い人々の働き口がない状態ですね。だから、もっともっといい大学に入らないと選ばれない。
いい大学に入ったとしても、成績だけではなくて、英語を勉強しなきゃいけないし、海外留学、あるいは場合によっては資格証、いわゆる自分のスペックを高めないといけないわけですね。そうすると、授業料以外のお金がまだまだたくさんかかるんですね。授業料もまだ上がってますし、非常に仕事がない。両親も仕事がもっと大変な状況で、格差はもっと広がってるのに、若者が大学を卒業して社会に出る間の費用が膨大にかかっちゃうわけなんです。
いまの韓国社会でここまでやっていても、私は未来を作っていくことができるだろうか。こういうような気持ちに置かれているのが、韓国の若者のいまだと思いますね。

宮崎 さん
それが、ろうそくデモとか、あれだけみんな若者が集まったり。いま、自分たちの力で政治を動かしてるんだっていう、熱狂の中に皆さんいらっしゃる感じがします。

李 さん
そうですね。だから、新しい大統領になると期待が高かったわけなんですが、今回、ムン・ジェイン大統領が当選したのは、大きく言って2つの理由があります。
1つは、パク・クネ大統領の今回の腐敗問題。政治と経済が癒着して大手財閥が成長してきたのが、韓国の戦後の歴史です。ただ、政経癒着は、民主化されたといわれる、軍事政権ではないいまの時代にもあろうと。
しかし、これだけじゃなくて、今回パク・クネ大統領の件を見ると、検察とか言論がこれを監視すればいいのに、その問題をまた庇護してしまってるわけですね。権力を守ってる側のように見えてしまった。若者から見れば、この国には正義が立っていない。彼らをいちばん大きく動かしたのは、社会の正義が崩れてることに関しての怒りなんですね。
もう1つ、実は今回若者がムン・ジェインさんを支持した理由は、

2014年にあったセウォル号の事件の問題が大きいです。皆さんもよく覚えていらっしゃると思うんですが、2014年、修学旅行に行った高校生たちが、事故で沈没する船の中にいたわけですね。約300名の若者が、「動くな」ということで救助を待っていたわけなんですが、なんと、国家権力も警察も、場合によっては大人も、誰も救ってくれなかった。実はこの高校生たち、2年生たちは、いま大学2、3年生たちなんです。まさにその時代に、捨てられたという思いがあるわけなんです。だから、この人々は、国に対しても、大人の世代に対しても、非常に絶望感を感じているわけですね。だから、若者たちが広場で集まって言ってたのが、これが国なのか。要するに、国家が国家らしく動いてないことを、いま指摘しているわけです。
しかし、絶望の中でも若い人々が選挙に参加し、新しい社会を作りたいと。ちょうどいま、総選挙の中でも若い人々の投票率が、なんと80%。

チャンカワイ さん
うわぁ、すばらしい。

宮崎 さん
すごいね。

李 さん
今回、ムン・ジェインさんの支持のほとんどは、20代、30代がムン・ジェインさんを支持していることになるわけですね。

視聴者の声

愛媛県・40代・女性
「なぜそんなに大卒の若者の失業率が高いのか?」。

50代・男性
「日本以上に学歴社会で、いい学校に行けなかった若者にはつらい将来が待っていると聞きます。コリアンドリームはないのでしょうか」。

首藤 アナウンサー
木村さん、そのへんどうでしょうか。

木村 さん
まず、就職先がないっていうのは、日本でももちろんそうなんですけれども、企業は経営を効率化していくと、安い労働力のほうがいいですよね。したがって、正規ではなくて非正規で安い人を雇いたい。もっと言えば、国際的に競争するためにも規制緩和をつど行っていきますから、安くなるというのが1つなんですね。
もう1つは、先ほど李先生のほうから、若者はムン・ジェインさんを支持したっていう話がありましたが、逆に高齢者の人たちは全く違う、保守側の候補者を支持したんです。若者と高齢者の間の対立があるってことです。1つには、韓国は実はつい最近まで、企業に就職して、50代で退職だったんですね。当然それだと生きていけないので、いま、退職の期間を法律で60ぐらいまで延ばそうとしてる。

宮崎 さん
でも、そうするとね、ますます若い人が入ってこれない。

木村 さん
そのとおりです。だから、職は増えていない。韓国も経済成長、止まりつつある。少子高齢化の問題もありますし、世界経済の減速もありますから、職は増えないわけですよね。で、非正規職ばかりになっていく。それを高齢者が取っちゃうわけですね。
高齢者も就職してるから、首にならないかぎりずっと居座りますよね。そうすると、若者としては、どうなってるんだと。明るい未来があるはずだったのにということになってるわけですよね。ですから、「ヘル朝鮮」ということばがあるんですが、この国は地獄だと。こんなことばが、若者の間でもてはやされたりもすることになるんですね。

出石 解説委員
結局、格差だとか、幸せになれないとか、夢を持てないとか、そういう不満がたまってるんですね。それがパク・クネ前大統領に対する怒りにつながって、今回の大統領選挙になっていったんですけど、

「恨」ってことば、聞いたことありません?韓国人のメンタリティーをよく表すことばで、「恨」ということばがあるんです。

首藤 アナウンサー
恨みって書くんですか?

出石 解説委員
漢字で書くと「恨み」で、ちょっと誤解を受けるんですけど、説明は難しいんですけどね、自分はこうなりたい、こうしたい、こうあるべきなんだけれども、それができないっていうもどかしさ。

首藤 アナウンサー
日本語の「恨み」とはちょっと違いますね。

出石 解説委員
そう。やりたい、こうなりたいんだけれども、なれないんだっていう、そういう思いがいまの韓国にまん延してるんじゃないかと思うんですね。

宮崎 さん
じゃあ、今回のも「恨」のエネルギーが大統領を交代させたんですか。

木村 さん
そうなんですよね。だから、先ほど言った「恨」という言い方になるわけですけど、本来は、例えばソウル大学を卒業した、高麗大学、延世大学という有力大学を卒業した。すごく努力したわけですね。ですから、いろんなものが手に入るはずだったわけじゃないですか。
だけども、手に入らないわけですよね。

そもそも就職なんかできないですからね。例えば、うちに来た韓国の大学院生でも、「何勉強するの?」って言ったら、「若者の家探しの問題について研究したい」って言うんですよ。
高麗大学って、韓国の早稲田大学って言われる大学から来ている学生だったんですけど、なんでそんなことするのって言ったら、田舎から来た学生は、就職できないとソウルで家がなくなっちゃいますと。大学の時には寮がありますからね。だけど、就職、韓国ってソウルに全部集中していますから、就職活動、ソウルにいないとできないんですよ。
そうすると、そもそも家を確保しないと生きていけない。マイホームなんてレベルじゃないですよね。恋愛とか夢とか、そんなレベルじゃ、もうないわけですよ。住むのが精いっぱい。それが超一流大学の学生たちが置かれていて、っていうのが状況なんです。

李 さん

さっきの2つの「恨」と、この「金のスプーン」「泥のスプーン」といういまの新しい時代の用語、よく似てると思います。
なぜいまの若い人々の失業率がそこまで高いのか。1つ大きな原因は、韓国は分断国家で、多くの財政が国防費に使われてしまうんですね。だから、福祉と教育費がカットされてしまう。それを、いままでは大手財閥が全部担ってくれてたわけですが、財閥ができないと、個人個人が責任を取らないといけない。だから家が崩壊すると福祉問題が出てしまうんです。
もう1つは、韓国では朝鮮戦争に匹敵する、もう1つ大きな影響が、まさに97年にあった経済危機です。経済危機で正規職がほとんど首になっていくと、非正規雇用の人が増えてしまうんですね。そうすると、非正規雇用を大手企業は増やしちゃうので、正規雇用が増えないと若い人々は入るところがないんです。
朝鮮戦争による国家の分断、そして、97年の世界的な、構造的な矛盾。これがもっと遡れば、朝鮮の儒教の時代には、朝鮮に対する抑圧とか、身分制度とか。また、日本植民地の時代がもたらした矛盾。こういうことを人々がいくら1人で頑張っても変えられない。だから、「恨」が気持ちの中に非常にあるわけです。もどかしい気持ちです。
これが1つ、大事な、韓国社会の文化。日本だったらこれを外に発散するとかじゃなくて、遠慮しちゃうこともあるかもしれません。それが美徳かもしれません。しかし、韓国人はこれをどこか発散したいわけですね。
例えば、植民時代は三・一万歳運動とか、あるいは87年、民主化運動とか。今回のキャンドルデモも、そういうことを発散する場です。しかし、これは暴力を意味してるわけではなくて、自分の気持ちを隣の人と一緒に共有する、広場でそれを共有することで、1つの社会をつなげていくエネルギーにもなるわけなんです。
だから、いま韓国社会を変えていくのは、国家の仕組みとかそうじゃなくて、国民の、自分がいま置かれている社会構造的な矛盾。それを隣の人々と一緒に、この国を考えたいというエネルギーが、いま、大きな1つの韓国社会の矛盾ですね。

徳永 アナウンサー
視聴者の方の声で、「恨」の話をしてから増えましたね、ツイートも。いっぱい来てます。「恨の文化、鬱屈のイメージなんですかね」という受け止めと、こんなのも来てますね。「恨のはけ口が日本なのかな?」。このへんは、どうなのか知りたい人、多いですね。

李 さん
それは、時代ごとに一般の庶民たちに置かれてる矛盾があるわけです。もちろん韓国は、いわゆる朝鮮分断の問題もあれば、まだ清算されていない植民地問題も国の中にまだまだ残っています。若い人々にとっては、「金のスプーン」と「泥のスプーン」の問題、昔は、例えばソウル大学に自分が努力して入って、自分の地位を向上することができたんです。しかし、いまは金持ちの息子で生まれないと、一生自分の身分が変わらないんです。スタートが平等じゃないというわけですね。

宮崎 さん
新しい身分制度みたいなのができてる感じしますね。

李 さん
そうすると、まさにこういうような、いま若い人々、これが改善できなくて、持続的な矛盾になってしまう。こういうことが、いまの時代の若い人々の「恨」になってしまうわけです。

宮崎 さん
でもね、その共有した気持ちで若者たちのエネルギーが押し上げた大統領が、すべてを解決してくれるわけはないじゃないですか。この熱狂が冷めた時、また同じことが起こるのかな。

出石 解説委員
まさにそこなんですよね。いま、ムン・ジェインさん、当選した時に「国民が幸せになる社会を作る」と言ってるんです。実はパク・クネさんも同じことを言ってた。やっぱり国民は幸せになりたい。だから、それが実現できないと、パク・クネさんに対するデモのように、今度はまた政府批判が起こるわけです。でも、幸せになるっていうのは、いまの先生のお話のように、いろんな矛盾があるから簡単じゃないんです。

李 さん
1つ大事なのは、今回なぜムン・ジェインさんを若い人々、あるいは韓国の人々が支持したのか。さっきの表の中でも、歴代大統領辞任、拘束、あるいは腐敗問題など、さまざまな問題が出てますね。
5年の間、大統領は帝王的な権力を持ってます。だから、大統領とか親族などに、いろんな賄賂とかが集中してしまう。これを何とかして変えたい。しかし、歴代大統領個人がいくら努力しても、構造がそうなってないわけですね。だから、ムン・ジェイン氏になって、唯一、いま韓国の国民は、5年間腐敗なしで成功できる大統領を1回は作ってみたい。そういうような、特徴がある人じゃないかということですね。

チャンカワイ さん
じゃあ、「恨」を持ってる若者たちが納得できるものを、ムンさんが何か言ってくれてたりするんですか、具体的に。

李 さん
具体的には、就任してからまず1つ、秘書を任命する時から、1人1人を大統領が全部、なぜこの人を任命したのか説明してるんですね。そしてもう一つ、昔は大手財閥にみんな入りたいという希望があったんですが、いま、大手財閥も不景気になると就職先がないので、みんな公務員になりたいんです。だから、公務員を増やすことで、雇用を81万増やして、若者の希望を作っていったり。

宮崎 さん
でも、それ、どうなんだろう。公務員が増えるって、どうなのかな。

木村 さん
だから、難しいんですよね。若者の大半がすぐ就職できないという状態で、全員が公務員になれませんからね。ですから、1つの答えにはなるんでしょうけども、そう簡単には解決できないですね。ですから、ムン・ジェインさんも、雇用を増やすということは言ったけども、それをどうやって増やすのか。
もっと言えば、例えば公共事業をやるんですかって話になった場合には、今度は財政の裏付けがいりますよね。韓国では、先ほど出た、昔の通貨危機の経験もありますから、あんまり財政赤字を増やすと、経済がだめになっちゃうんじゃないかという危惧もあるんですね。

首藤 アナウンサー
北朝鮮との関係で、結構お便りが来ているんです。
「ムンさんは親・北朝鮮のようですが、来たからミサイルが飛んでくるのが怖いから? それとも、本当に仲よくしたいからなの?」。また、「兵役のことは全く知らないので知りたい。みんなどう思っているんですか」という声も。兵役、日本にはない制度で気になりますが。

出石 解説委員
韓国ってまだ戦争が終わってないってさっき紹介がありましたけども、いろんなとこでそれを感じるんです。例えば、月に1回ぐらい民防訓練、民間防衛訓練というのがあるんです。昼間突然サイレンが鳴って、外を出歩いてる人たちは、みんな地下鉄の中、地下に避難するんですね。ビルは全部電気を消してカーテンを閉める。
あと、予備役といって、兵役が終わったあとでも定期的に訓練に行かなくちゃいけないといって、私も、支局員なんかが、今度予備役で3日間休みますなんていうのがあるんです。

これは地下鉄の入り口ですけど、ここに書いてあるんですけどね。
避難所、シェルター。地下鉄の構内がシェルターになってる。何かあった時にはここに避難する。この中にはガスマスクなんかも備えられてる。
だから、旅行してちょっと行くだけだと分からないんだけど、ちょっと生活してみると、韓国っていうのは北朝鮮の脅威に常にさらされてる国なんだなっていうのを実感するんです。

首藤 アナウンサー
実際には家族とか、母親だったら兵役には行かせたくないと思うと思うんですけど。

李 さん
よく韓国のことばで、お母さんたちの2つの、さっきの「恨」があると。1つは、大学受験が非常に厳しいですよね。そこまで成功して入ったらみんな安心して喜ぶんですが、1年後に、みんな軍隊に行かないといけないんです。男の場合はですね。
私の場合もそうなんですが、若い人々って大学に入ったら新しい夢を作りたいのに、軍隊に2年2か月、そうすると、自分の人生の計画が立てられないんです。途中で中断されてしまうんですね。戻ったら、仕事とか就職準備をしなきゃいけないですし。
もう1つは、もちろん兵役に行くのはしかたない。ただ、戦争が起きたら38度線付近にいる若者が、いちばん最初に、犠牲者になるんです。だから、若い人々は危機が高まれば高まるほど、平和を願うんです。この戦争を避けられる、そういう指導者を願うわけなんです。
今回核戦争危機まであおられてる時代に、これを収めるかもしれないということで、若者たちのムン・ジェインさんの支持が高かったと思うんですね。
ただ、さっきおっしゃったように、ムン・ジェインさんはもちろん大変です。THAADの問題とか、あるいは中国、アメリカの関係。ただ、私たちが北朝鮮を見る時に、もちろん北朝鮮体制は問題あるんですが、地政学的に中国の影響で、あるいはロシアの影響で、あるいは韓国、日本、アメリカは選挙で変わってしまいますから、北朝鮮を安定的にコントロールするのがなかなか厳しいんですね。だから、核開発をここまでやってしまうんです。 これまで8年間、保守政権の間に圧力をかけて制裁までやってみたけど、実は核開発阻止ができなかったので、圧力だけではなくて対話を入れながら、アメリカと中国の協力を得ながら、北朝鮮ともう少しこの危機を収めるような状況を作りたいということなんですね。

木村 さん
どうやって対話するのかっていうのは実際問題難しいですし、例えば韓国ケソン公団というのを北朝鮮の領域内に、韓国の中小企業が進出してる工業団地みたいなところがあって、そこを再開するなんてことも考えたりするわけですけども、実際には国連の制裁をやってる中、韓国だってそれをするわけにはいきませんよね。
ですから、戦争は避けたい、絶対嫌だという気持ちはある。だけど、それをどうやって避けられるのか。北朝鮮を実際動かせるのかっていうと、答えはなかなかないですよね。

宮崎 さん
韓国の方って、例えば半島を統一するっていう、そういう希望っていうのはないんですか。

木村 さん
いま、難しいんですね。1945年に第二次世界大戦が終わって、植民地支配が終わったあと、その直後から南北に分断されているわけですよね。もう70年以上ですよね。
そうすると、年配の方は、例えば自分のお父さんが住んでたとか、きょうだいが住んでたので別れたっていうような意識がまだ残ってはいるわけですけど、いまの若い人たちになってくると、全然違う社会なわけですよね、率直に言ってしまうと。
もっと言えば、北朝鮮との統一のためにはお金も払わないといけないかもしれないし、ひょっとしたら戦争も起こるかもしれないし、ただでさえ生活に困ってるわけでしょう。その中でいったいどの程度やるのか。だから、若い人のほうが実は否定的だったりするんですね。

出石 解説委員
東西ドイツが統一した時に、東と西の経済格差が3倍といわれてたんですね。いまの北朝鮮と韓国の格差っていうのは、統計によりますけども、20倍とか40倍とかあるんですね。
ドイツですらあんなに大変だったのに、南北の朝鮮が統一するのは、本当大変なことです。

木村 さん
それはそうなんですね。例えば、イメージするのは簡単だと思うんですよ。北朝鮮、2500万人ぐらいの人がいる。その人たちは低賃金でも当然働くわけですよね。統一する。その人たちが一斉にソウルに殺到してくるわけです。それは、就職を探してる人たちにとっては悪夢以外のなにものでもないですよね。

首藤 アナウンサー
ちょっとここで、これまでの議論を振り返ってみたいと思います。徳永さん。


グラフィックレコーディング

徳永 アナウンサー
グラフィックレコーダーです。皆さんの議論で出てきたこと、気持ちなどをすぐ書いていくシステムでございます。

担当は山田さんです。よろしくお願いします。
これ見てると、韓国側の実態と日本人が思う質問というのを分けて書いてますが、韓国では社会の正義が崩れ、やっぱりこの字ですね、

「恨」というのが、ここにも強調されています。
それから、チャンカワイさんも質問してくださいましたが、ツイッターやゲストのおふたりから出た主な声っていうのは

兵役って実際どうなのっていうのが気になる人もいました。それから、「実際の格差はどれほど大変なの」という声も。いま木村さんの解説もありました。でも、やっぱり話しづらいよねっていう、こういう感情が多く強調されているんです。
いま、ツイッターでも

視聴者の声

「韓国社会は格差が広がる日本の将来の姿なのかもしれませんね」

「男女の賃金格差も激しく、産後の社会復帰もしにくいのは日本以上なのかな」

徳永 アナウンサー
って見てる人も。
で、やっぱり多いのが、日本人、どうやってつきあっていったらいいのかを考え始めてる人が多くて、いろんなのが来てます。これ、海外でも放送されてるのかな?

視聴者の声

「韓国に住む日韓家族です。実際住んでると優しい人ばかりですよ。私たち家族のように、日韓が身近になってほしい」

「これからの若者は過去に縛られず同じアジア人として協力していくべき」

徳永 アナウンサー
っていう人もいます。
一方で、こんな人もいて、

視聴者の声

「以前の職場で、日本で働く韓国人と、韓国国内の韓国人の日本に対する温度差、ありすぎると思った」

首藤 アナウンサー
あの「恨」っていうのって、韓国独特なんですか? 私たちにはちょっとない感覚かもしれないんですけど、そういう違いが少し見えてきたところで、じゃあ私たち日本は、韓国とどうつきあうのか考えていきたいなと思うんですけれども。

出石 解説委員
日本から見てると、韓国人って日本のこと嫌いなんじゃないかとか、恨みを持ってるんじゃないかって思いがちなんですけど、決してそうじゃないんです。韓国の人たちは非常にフレンドリーだし、日本のこと、ものすごい興味を持ってるんです。日本のことも好きだし。
実際日本に来る韓国人って、いま509万ぐらいかな? すごい増えてるんですよね。その人たちは決して日本が嫌いなわけじゃなくて、むしろ日本のことを、文化とかいろんなものを知りたがってる。
ただ、政治というのは、それとはまた別なんです。そこがいちばん難しいところなんです。

木村 さん
難しいのは、もちろんほかの国に比べれば、韓国の人たちは日本に対して関心は持ってるんですけど、だけど、日本のテレビとか新聞見てると、韓国人って年がら年中、日本のこと考えてるみたいに見えますよね。
でも、先ほどの「恨」の話でも、「恨」の矛先が日本だけかというと、そこまではいかない。パク・クネさんに対してのデモに関しては何十万という人が集まるけど、日本大使館の前で行われる慰安婦問題等のデモに関しては、よく集まって数千人です。ソウル大都市圏にも2000万近い人が住んでるのに、それぐらいしか集まらない。というのは、われわれが考えているほどには、韓国人は日本のことを考えては、もっと言えば、重要だと思っていない。
大統領選挙の中で討論会があったんですけども、6回あったのかな? 都合12時間ぐらいやったんですね。その中で「日本」という単語は2回しか出てこなかった。
しかも、その中で出てきたのは、わりといい話なんですね。日本はうまくやっている、みたいな話が出てきて、実は慰安婦問題なんかもほとんど議論されなかった。そういった現実も知っていただきたいですね。

首藤 アナウンサー
ただ、ちょっと心配事が。神奈川県50代の女性。「日韓合意が白紙になりそうな雲行きに懸念を抱きます」と。そういう気持ちを持った人もいるんですけれど。

出石 解説委員
慰安婦の話ですね。結局、いまの韓国の社会であるのは、「パク・クネさんがやったことは全部間違いだった」という世論なんです。日韓の慰安婦合意も、あのパク・クネさんがやった。あれは間違いなんだと。だから、それは見直さなくちゃいけないんだっていう世論が圧倒的なわけですよ。その世論に押されて大統領になったムン・ジェインさんですから、これを守っていきましょうとは、なかなか言えないんですよね。

李 さん

この表で戦後日韓関係をちょっと振り返ると、実は2003年から2014年、約10年間、年間300万、トータルで3000万近くの人が交流している時代があったわけです。
こういう時代を実は作ってきたもう1人の張本人が、いまのがノ・ムヒョン大統領の秘書室長の時代のムン・ジェインさんなんです。私は物心ついて20年ずつ日本と韓国に住んでみて、日本の文化と韓国の文化は非常に共通してるところもあると思うんです。例えば、日本人はお互いに何十年つきあっても、ある程度人間の距離が必要ですよね。プライベートを守ってあげる社会ですから。
韓国はすぐ、会うと一緒に、ビビンバじゃないんだけど、全部混ぜちゃうんですね。
プライベートがあまりないんです。しかし、私から見ると、日本はちょっと距離がありすぎて、韓国は近すぎるんですね。しかし、1歩譲って、それをもうちょっと近づけば、お互いは非常にいい文化を実は持ってるわけです。日本と韓国の歴史は、そういうグレーゾーンが結構ありますし、日韓が協力して中国と共存できるさまざまな政策もできるわけなんです。
だから、世界でこれほど近くて、お互い隣国の人が、今後どういう知恵を絞って、もう1つ、次の日韓政策が立つのか。慰安婦問題をムン・ジェイン大統領は入り口にはしてなくて、98年、これを始めた日韓パートナーシップ宣言。キム・デジュン大統領と元小渕首相がやったパートナーシップ、これの第2段階をもう1回作ってみましょうというような提案を、これからやっていくだろうと、実は思ってます。

木村 さん
僕はちょっと違う考え方を持ってますね、率直に言って。というのは、それこそワールドカップのころや、小渕政権、金大中さん、キム・デジュンさんの政権の時には、何となく日韓よくなるっていうイメージがあったんですけど、現実は違うっていうのもありますからね。そこを考えていきたいですね。

首藤 アナウンサー
難しい問題はあります。
混ぜる国と分ける国、でも、ちょっと混ざり合いたいと思いました。

ありがとうございます。

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