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「イチローとヤンキースの特別な関係」

石田 大輔
2012年12月19日
著者の石田大輔さん〈似顔絵〉
12月13日。
ヤンキースはイチローと2年契約を結んだ。
契約額は1300万ドル(約10億4千万円)。
詳細は明らかにされていないが、単年平均650万ドル(約5億2千万円)は今季の年俸1700万ドル(約13億6千万円)の半分以下となった。
だが、複数年契約こそ、ヤンキースがイチローに示した最大の誠意であった。

ヤンキースとぜいたく税。
2003年から始まったぜいたく税の制度は選手年俸総額が一定額を越えた球団に対し、一定率のペナルティーを課す仕組みだ。
03年当初の規定額は1億1700万ドル。
この額を越えた球団は総額の17.5%のぜいたく税を機構に収めた。
以降、毎年のように規定額は増えていき、12年度は総額1億7800万ドル。
税額は違反回数に応じて増し、最大で40%となっていた。

この課金制度は今季で10年目が終えた訳だが、ヤンキースだけが10年連続で課徴金を納める結果となった。
今季、ヤンキースの年俸総額は約2億2500万ドル。
課徴金は1890万ドル(約15億1千万円)と発表された。
この制度は13年度も同様の規程額と税率をとるが、14年からは選手年俸総額が1億8900万ドルへと引き上げられる。
そして、税率も最大40%から50%へと増すことが決定している。
例えばこうだ。
14年度の年俸総額が1億8900万ドル未満に抑えれば課徴金はゼロ。
翌年に総額が定額を越えたとしても、税率は第一段階の17.5%。
3年連続で定額を越えれば50%の税率を課せられるが、1回でも定額を下回れば再びリセットされる。
そこでヤンキースはこの機を利用し、14年度の総年俸を1億8900万ドル未満に抑える大号令を出した。
今季との差額で言えば3600万ドルの節約。
このオフは新たな複数年契約を結ばないことは既定路線とされていた。

黒田博樹 1年1500万ドル
アンディー・ペティット 1年1200万ドル
マリアノ・リベラ 1年1000万ドル
ケビン・ユーキリス 1年1200万ドル
 
ご覧のように誰もが1年契約。
黒田は自身が単年契約を希望したものだが、14年度の年俸保証をした選手はいなかった。
ヤンキースがいかにイチローの力を必要としていたかがわかる結果だ。
イチローを巡っては、サンフラシスコ・ジャイアンツが2年総額1500万ドル、フィラデルフィア・フィリーズが2年総額1400万ドルの条件を提示したと言われる。
どちらもヤンキースの提示を上回っていたが「僕にとって理想の環境がここ(ヤンキース)にある」と語ったイチローが優先させるものはお金ではなかった。
まさに相思相愛が招いた結末。
イチローの存在価値を高めた契約と言っていいだろう。

来季からの2年間、イチローからは目が離せない状況になっている。
あと116本に迫った日米通算4000安打は来季中盤にも達成されるだろう。
また、野球殿堂入りの目安となるメジャー通算3000安打まではあと394本。
ヤンキース移籍後の活躍を見れば、14年度に達成する可能性もある。
笑顔でフィールドを駆け回るイチローの姿が今から楽しみでならない。

著者プロフィール

【著者】石田大輔
アメリカ在住10年以上のベースボールジャーナリスト。
野茂英雄投手のメジャー挑戦以降、すべての日本人メジャーリーガーの取材を行っている。
野球選手と同じ空気を吸うことを何より好む。
趣味は料理とゴルフ、そして車。