2月24日

コロナ禍で深刻化?大人の発達障害

「コミュニケーションが苦手」「忘れ物が多い」「読み書きが困難」など、生まれつきの脳の特性によって日常生活にさまざまな生きづらさを抱える発達障害。大人になってからその特性に気づくケースが増えています。コロナ禍のいま、発達障害の特性がある人たちやその家族の悩みも深まっています。
発達障害の特性があるパートナーとのつきあい方に悩む人たち声を聞きました。どうすればうまくつきあえるのか、「気持ちを言語化」するなどの工夫を紹介しました。さらに、コロナ禍で働く場が失われて困っている発達障害がある人たちの声を聞き、働く場を維持するための企業や自治体の取り組みも紹介しました。

パートナーが発達障害かもしれない・・・と悩む人たち

発達障害への関心が近年高まったり、自粛生活でパートナーと一緒に過ごす時間が増えたりするに伴い、パートナーにはもしかしたら発達障害があるのかもしれない・・・と悩む人が増えているといいます。ある70代の女性は、結婚してから家庭のなかでの夫の「気持ちを察するのが苦手」「強いこだわりがある」といった言動に違和感を感じてきました。周囲に相談しても「いい旦那さんじゃない」「あなたがしっかりしなきゃ」と言われるなど孤立感を深め、精神的ストレスから15年前に精神科を受診した際に「夫に発達障害があるかもしれない」と指摘を受けました。女性はそこではじめて、中年以降の大人にも発達障害があることを知ったといいます。番組では、身近な人が発達障害かも、と悩んでいる方向けの相談窓口もご紹介しました。

「障害かどうかの判別」より「困っていることを共有して関係を改善」

パートナーに発達障害の可能性があるとわかっても、そのパートナーがみずからの発達障害の可能性を認め、診断にいたるケースはそう多くないといいます。中高年以降で社会的にこれまで適応できてきた人の場合、「認めたくない」という思いが強いためです。実際、発達障害かどうかを明確に区別する境界性はないため、特性はあっても診断が出るほどではないという人も多いのです。大切なのは、障害かどうかをはっきりさせることよりも、いまのふたりの関係で「困っていること」を共有し、改善の方法を探ること。困りごとを夫婦の間で共有し、妻は「気持ちをできるだけ言語化」、夫はみずからの「特性を分析し文書化」することで関係を改善した夫婦の工夫を紹介しました。

認知症と間違われる中高年の発達障害

中高年以降に発達障害の特性に気づいた人のなかに、最初は「認知症」を疑ったという人がいます。実際、発達障害の「もの忘れが多い」といった特性は、認知症の症状とも重なるところがあり、認知症の専門医が判断に迷うこともあるといいます。違いは、認知症はあとから出てきた「症状」であり「進行性」であるのに対し、発達障害は生まれながらの「特性」で「進行しない」ものであるということ。しかし、中高年以降の発達障害では、昇進や定年、身近な人との離別といった環境の変化で、これまで見えていなかった「特性」が顕在化するケースがあり、認知症と見分けることを難しくしているというのです。適切な診断と治療が受けられるよう、認知症と発達障害の専門領域を横断した診療体制の確立が求められています。

「周囲の理解」で発達障害の特性を力に

コロナ禍で、発達障害のある人の仕事にも影響が出ています。番組には「仕事をクビになった」「去年、発達障害の診断を受けたが、仕事が全く見つからなかった」といった声も届きました。そんななか、発達障害の特性に応じた就労の場を用意しようという取り組みも始まっています。静岡県富士市では、就労の相談に訪れた人に独自の聞き取りを行い、その人が「できること」に注目。市内におよそ130ある企業につなげています。発達障害のある男性が働く企業では、「急な指示に対応するのが苦手」な一方、「記憶力がいい」という男性の特性を全社員で共有。男性が力を発揮できるような職場環境をつくっています。新型コロナの影響で、発達障害に限らず多くの人が厳しい状況に置かれているのが現状ですが、ひとりひとりが生き生きと暮らせる社会の実現のためには、周囲の理解が不可欠です。番組では、発達障害に関することが原因で就労トラブルにあった場合や、就職先を探している場合の相談窓口もご紹介しました。

専門家ゲスト:内山登紀夫さん(精神科医)、真行結子さん(パートナーの発達障害に悩む人の会 代表)

ゲスト:柳家花緑さん(落語家)

VTRゲスト:滝口のぞみさん(臨床心理士)、山縣文さん(慶應義塾大学医学部 専任講師)

リポーター:石井隆広アナウンサー